第二十四話 王位宣誓
「よし、ここまでは問題ないな。では、行くぞ」
「「「はい」」」
「兄様、姉様、頑張って」
謁見の間には、既に貴族や関係者が集まっている。
今回の謁見は、必ず貴族本人もしくは代理人を立てることを厳命している。
この場に集まらない事は国家反逆とみなすと、そう通達している。
それだけ重要な事だと、貴族に認識してもらう必要があるのだ。
そして会場の警備はかなり厳重にしている。
一つはこれだけの人が集まるという事である。
もう一つは、言わずもがな憎き国賊を捕らえる為だ。
こうして舞台は全て整った。
私たちは袖口に駆けつけてくれたクロノに見送られて、謁見の間の王族のエリアに向かった。
ふふ、クロノは拳を握りしめてふんすという顔をしている。
私もカーターも、クロノの期待に応えないといけないな。
「殿下の入場です。一同静粛に」
司会の案内によって、貴族が静まった謁見の間に私達は進んでいく。
貴族側の一番前には宰相が、そして王族のエリアの奥では王妃が、それぞれ不敵な笑みを浮かべている。
きっと王妃は私、宰相はカーターが王位につく事を疑っていないのだろう。
確かに王位はどちらかがつく、これは間違いない。
だが、私達はお前達の好き勝手にはならない。
この場は、その為の閲覧なのだからだ。
「皆の者、面をあげよ」
今は私が第一王子で王位継承権を持っている。
なので、この場は私が仕切る事になる。
王妃や宰相も、下手に関与する事はできない。
「この度の父の訃報に際し、数多くの弔意を頂きこの場を借りて感謝を伝える。父は亡くなったが、王国は前に進まなければならない」
と、ここで一呼吸を置き周りを見渡す。
真剣に話を聞いているものは半数で、後はニヤニヤしているものが半分だ。
私もしくはカーターが王位に着いた後、王妃か宰相からおこぼれを貰おうと思っているのだろう。
王の事など考えていなく、自分の事ばかりしか考えていない。
全く、王国の貴族はここまで落ちてしまったのか。
「王国法に則り、ここに宣言する。我アルスが新国王に、カーターを王位継承権一位とする」
「「「アルス国王陛下、万歳!」」」
私は淡々と決定事項を皆に伝えた。
謁見の間にいる全ての参加者が、声を合わせて万歳をしている。
さて、問題はあの二人の動向だ。
王妃はというと、ニヤリとしたキミの悪い笑みを浮かべている。
宰相は……、宰相もニヤリとしている。
この笑みは何だ?
そうか、私がここに王位について宣言したから、私を殺せば王位が自動的にカーターになるのを見越している。
万歳の声の中、私は気配を探る。
何処だ、何処にいる?
ヒュッ。
「ぐっ」
「ギャー!」
突然、私に向けてナイフが投げられた。
咄嗟に腕を盾にしてナイフを防ぐ。
王妃が五月蝿い悲鳴を上げているが、悲鳴を上げたいのはこちらだ。
「兄上!」
「「お兄様!」」
「ち、近寄るな。この剣には毒が……、この場を纏めろ」
「分かりました。皆のものこの場から動くな。騎士よ、扉を閉めろ」
さ、さすがはカーターだ。
冷静に、場を纏めた。
ヤバい、周りのざわめきが遠くなっていく、ぞ……