第二十三話 謁見前最後の打ち合わせへ
「ぷう、もう少しクロノと一緒にいたかったなあ」
「折角会えた弟君なのに」
「ははは、それは私も同じだ」
私アルスの横で、カーターと妹達が文句を言い合っている。
その様子を、私は苦笑しながら聞いている。
こうやって戯れる余裕があるのはいい事だ。
精神的に余裕がないとこれからの事は乗り切れないだろう。
これも私達兄弟とクロノと出会えた事が非常に大きい。
「兄上、血の繋がりというのは本当に感じる事ができるんですね」
「ああ、私もそれは思った。クロノの顔を見た瞬間に、何かが体を走った感じがした」
赤ん坊の頃しか見た事が無いが、先程クロノの事を見た瞬間の事は忘れない。
カーターと共に自然とクロノに向かって走り出したのだから。
今まで不憫な思いをさせて悪かったという気持ちもあったが、私は会えて良かったという気持ちの方が大きかった。
「さて、気持ちを切り替えよう。これからの事は手筈通りだ」
「「「はい」」」
手の内を明かさないでここまでずっとやってきた。
慎重に慎重にと、五年の間ずっと事を進めてきた。
それが今日この後結実する。
しかしながら、最後まで油断はしてはいけない。
そして、確実に王妃と宰相を追い詰めなければならないのだ。
そうでなければ、長い間離れ離れになっていたのに、それでも私の命を助けてくれたクロノに顔むけができない。
その思いは兄弟皆一緒だ。
私は改めて気を引き締めた。
「カーター、最後の打ち合わせだ。気を引き締めよう」
「はい、兄上」
最後の最後まで油断のないよう、仕上げを行うとしよう。