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第二十二話 兄弟の再会

「ふわあ、ふう。うーん、早くに目が覚めちゃった」


 怒涛の展開があった翌日。

 僕は何故か朝早く目が覚めてしまった。

 横でいびきをかきながら爆睡しているゴレスお兄ちゃんとゴードンお兄ちゃんの事が羨ましいと思いつつ、背伸びをしながらベッドから降ります。

 

「何だか夢の様な一日だったなあ」


 夢の様だけど夢じゃない一日だった。

 僕とドリーお姉ちゃんが作った強力な毒消しポーションで、苦しんでいたお母さんを救う事もできたのだ。

 お母さんが僕の事を抱きしめてくれたんだ。

 そして、お母さんの実家に泊まる事もできている。


 コンコン。


 そんな事を思っていたら、控えめに扉をノックする音が聞こえてきた。

 何だろうな? 

 と思いつつ扉を開けると、お母さんのお兄様がそこにいたのだ。


「すまない、起こしてしまったか?」


 朝早かったのでちょっと小さな声で僕に話しかけてきた。


「いえ、大丈夫です。さっきから起きてました」

「それなら良かった。実は、私とクロノ君を呼んでほしいと宮殿から使いが来たのだ」

「え、それってもしかして」

「ああ、殿下からだ」


 遂に兄様からお呼びがあった。

 きっと今日行われる宣誓の事も絡んでいるはずだ。


「分かりました。直ぐに準備します」

「頼むな。着替えは宮殿で用意しているというから、今着ている物でいいぞ」

「はい」


 僕はお手洗いを済ませると、女性陣の部屋をノックした。

 勿論、宮殿に行く事を伝えるためだ。

 直ぐにアンナお姉ちゃんとドリーお姉ちゃんが顔を見せてくれた。


「クロちゃん、朝早くからどうしたの?」

「何かあったの?」

「僕、男爵様と一緒に宮殿に行く事になったんだ」

「そう、そうなのね。気をつけて行きなさいね」


 アンナお姉ちゃんは、深くは聞かなかった。

 でも、重要な事だって直ぐに理解してくれた。

 するとドリーお姉ちゃんが部屋に戻って、強力な毒消しポーションを一本持ってきてくれた。


「念の為に強力な毒消しポーションを一本持っていってね。こちらはあと二本あるし、万が一の時には直ぐに作るから」

「有難う、ドリーお姉ちゃん」

「クロちゃんのお母さんの事は、私達に任せてね」


 アンナお姉ちゃんとドリーお姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられてから、僕は男爵様と共に屋敷の玄関に止めてあった馬車に乗り込んだ。


「クロノ君達は、本当に強い絆で結ばれているね」

「はい。孤児院の皆とは血は繋がっていませんが、本当の家族だと思っています」


 朝早く街の中を馬車が走って行きます。

 そんな馬車の中で、不意に男爵様が僕に声をかけてきました。

 きっと、さっきの僕とアンナお姉ちゃんとドリーお姉ちゃんのやりとりを見ていたのだろう。


「君達の仲の良さに、きっと殿下も嫉妬してしまうのではないかな?」

「うーん、何となくですが大丈夫な気がします」

「はは、そこは血の繋がりがあるか」


 男爵様は楽しそうに笑っている。

 僕もつられて少し笑っていた。

 すると、馬車は大きな宮殿の玄関に到着した。


「さあ、行くよ」

「はい」


 僕と男爵様が馬車から降りると、近衛騎士が周りをガードしてくれる。

 そのまま僕は宮殿に入った。


 宮殿はとても広くて様々な装飾品が飾られていたけど、ゆっくりと見渡す余裕もない。

 僕達は周りの人にみつからない様に、急いでとある部屋に入っていった。


「あっ」


 部屋の中には背の高い金髪と銀髪の男性と、お姫様って感じの銀髪の女性が二人いた。

 僕は直感で分かった。


「アルス兄様、カーター兄様」

「「クロノ!」」


 僕は兄様の所に駆け出していた。

 そして、兄様は僕の事をガッチリと抱きしめてくれた。


「兄様、兄様。会いたかったよ」

「すまん、すまんなクロノ」

「長い間、辛い目に遭わせてしまって」


 何だか僕は昨日から泣きっぱなしだ。

 でも、嬉し涙だから良いよね。

 兄様も涙声だったよ。


「ちょっとお兄様。独占はダメですわ」

「私達もクロノを抱きしめたいです」


 と、ここで一緒にいた二人のお姫様がプンスカと文句を言ってきた。

 その様子を見た兄様が苦笑しながら僕に二人のことを紹介してくれた。


「すまんな、クロノ、この二人はクロノの姉になる」

「血縁的には私の妹だな」

「え、カーター兄様の妹ですか?」


 ちょっとびっくりしながら二人のお姫様に視線を向けると、ニコリと笑いながら自己紹介をしてくれた。

 赤ちゃんの頃に姉がいると聞いたけど、この人たちがそうなんだ。


「私はスカーレットですわ。よろしくねクロノ」

「私はリリアンです。クロノとは五歳違いで、スカーレットとは双子なの。よろしくね」

「あ、はい。よろしくお願いします。スカーレット姉様、リリアン姉様」

 

 姉様が自己紹介をしてくれたので僕もペコリとお辞儀したら、姉様の手がワキワキして僕の事を抱きしめたのだ。


「わっ、どうしたのですか、姉様?」

「「クロノ可愛い!」」

「ちょっ、くるし……」


 どうも僕がペコリとした事が、姉様のツボにハマった様だ。

 ぎゅーって抱きしめられてしまったのだが、ちょっと力が強くて苦しいぞ。


「ほら、そこまでにしておけ」

「クロノが苦しがっているぞ」

「「あて」」


 あ、アルス兄様とカーター兄様が姉様に軽くゲンコツを落としていった。

 ちょっと呆れている感じだぞ。

 流石に姉様は直ぐに抱擁をといてくれたが、そのまま僕の両腕をぎゅっと組んでいるよ。

 姉様の顔は、満面の笑みでニコニコだ。


「はあ、ちょっと疲れた。ほら、話を進めるぞ」


 そのままアルス兄様とカーター兄様は、僕達に話をしてきた。

 

「本当はもっとゆっくりと話をしたいが、流石にそういう訳にはいかないから手短に話すぞ」

「この後三時間後に貴族を謁見の間に集める。そこで即位の宣誓を行う。アレクには袖口で控えて貰って、タイミングを見計らって中に入って貰うぞ」

「はい、分かりました」


 とうとう色々な事が起こるんだ。

 兄様の表情はスッキリしていて、やる気に満ちている。


「勿論、スカーレットとリリアンにも参加して貰う。言っておくが、暴れるなよ」

「まあお兄様ったら心外ですわ」

「私達は良い子ですよ」

「昨日男爵家に乗り込むと言っていたのは誰でしたっけ?」

「「それはそれ、これはこれです!」」


 うん、この会話で何となく分かってしまった。

 姉様は活動的な性格なんだ。

 呆れながらもカーター兄様が姉様に釘を刺していた。


「男爵も色々と苦労をかけたな」

「いえ、私にとっても甥になりますので当然の事です」

「私達も先生に会いに行きたいが、少ししてからになってしまう」

「それは致し方ないかと。しかし、妹は確実に容体が良くなっております。近い内にまた宮殿に伺う事が出来ましょう」


 そっか、男爵家も今回の事でだいぶ苦労したんだよね。

 改めて僕もお礼をしないとならないな。


「では、私達はこれで失礼する。クロノは、この後控えている侍従に着替えさせてもらってくれ。時間になったら侍従が謁見の間の袖口まで案内する」

「はい、分かりました」


 そうして、兄様と姉様に男爵様は部屋を出ていった。

 部屋には侍従と近衛騎士が控えている。

 すると、侍従が服を持ってきた。


「ではクロノ殿下、謁見用の服に着替えて頂きます」

「あ、はい。有難う御座います」

「では、脱がせますね」

「はい?」


 侍従が持ってきた服に着替えようとしたら、複数の侍従が僕の服に手をかけてきた。

 え、どういう事?


「クロノ殿下、私達はクロノ殿下のお世話をするものですのでこのままお任せ下さい」

「いや、あの、自分で着替えられますから」

「いいえ、殿下はまだ幼いですので、ここは私達にお任せを!」

「あー!」


 うう、僕は何故か鼻息荒い侍従の手によってすっぽんぽんになってしまい、下着から着替えさせられていきます。

 その間、近衛騎士は僕の事を見守っているだけでした。

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