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第二十話 皆で自己紹介

「クロノ、今までごめんね」

「お母さん、お母さん!」

「クロノ、会いたかったわ」


 僕はお母さんに抱きついたまま、涙が止まらない。

 お母さんも涙ながらに、僕の頭を抱きながら優しくポンポンとしてくれる。


「うう、ううぅ……」

「良かったね、クロちゃん……」

「うおーん、うおーん」


 中年の夫婦も侍従も孤児院のメンバーも、お母さんが助かったのと僕がお母さんに再会できた事に喜んで感涙しています。

 ゴレスお兄ちゃんが一番大泣きだった様な気がした。


 そんな中、冷静に動いている人がいました。


「よし、殿下に完治を報告だな」

「直ぐに向かいます」


 ギルドマスターの言葉に、直ぐに豪華な鎧を着た人が駆け出していった。

 兄に報告に行くのかなっとふと思ったので、僕は一瞬お母さんの胸から顔を上げて騎士の人に言いました。


「ぐず、ずみません。僕も兄に、アルス兄様とカーター兄様に会いたいと伝えてください」

「クロノ、お前何で殿下の名前を?」

「僕、小さい頃からの記憶がずっと残っているんです。僕がお母さんに頭を撫でられている所や、僕の所にアルス兄様とカーターお兄様がきた事。そして、お母さんとそこにいる豪華な鎧を着た人が、僕を森に捨てた事も」

「そう、そうだったのね」

「だから、お母さんの顔を見た瞬間に、この人は僕のお母さんだって直ぐにわかりました。アルス兄様は僕と同じ金髪で、カーター兄様は銀髪でしたよね?」

「そうよ、クロノは兄の殿下の髪色も覚えているのね」

「畏まりました。クロノ殿下のお言葉、漏らさず殿下にお伝えします」


 豪華な鎧を着た騎士は、僕達に一礼すると直ぐに小走りで部屋を駆け出していった。

 その人と入れ替わりに、別の若い男性が入ってきた。


「すまん、今戻った。マーガレットの容体は?」


 突然部屋に入ってきた男性の登場により、僕達を含めて部屋にいた人はキョトンとしてしまった。

 

「えっと、もしかしてタイミングが悪かったかな?」


 部屋に入ってきた男性は僕達の様子を見ると、罰の悪い表情をしながら頭をかいていた。

 ということで、改めて皆でお話しということで、別の部屋に移動します。

 因みにお母さんは回復したてというのもあって、今日は一日ベッドで寝て安静にするそうです。

 お母さんはかなり体力を消耗していたのか、直ぐに寝てしまいました。

 でも、顔色も良いし寝息も安定しているので、もう大丈夫かなって思っています。

 大きなお部屋に案内されて、皆でソファーに座ります。

 僕はアンナお姉ちゃんとドリーお姉ちゃんの間に陣取ります。

 と、ここでギルドマスターから注意がありました。


「諸事情あって、まだ細かい事は話せない。勿論、クロノの事もだ。また、最低でも明後日まではお前らの身の安全の為に暫くは男爵邸に逗留する事になる」

「明日の宣誓が終わるまでは、何があるか分かりません。あなた達は娘の命の恩人です。丁重におもてなしいたします」


 おお、やっぱりこの国は政情不安定なんだ。

 こればっかりは僕達の身の安全を守る為に仕方ないね。

 という事で、僕達孤児院のメンバーから自己紹介をします。


「私はアンナと申します。今年で十二歳になります。孤児院の中では一番年長になります」

「俺はゴレスです。同じく十二歳になります」

「私はドリーです。今年十歳になります。クロちゃんと一緒にポーションを作っています」

「ララです、リリの姉で八歳になりました」

「リリです、ララの妹で八歳になりました」

「ゴードンです。今年六歳になります」

「ライラ! 三歳!」


 因みに普段通りに話していいと言われたのだが、アンナお姉ちゃんは流石というか丁寧な言葉で話をしていた。

 ライラちゃんが元気よくお返事すると、場の雰囲気が朗らかになったよ。


「今はライングランド男爵家の先代と名乗っておこう。娘は知っての通りクロノの母親だ」

「では、私もライングランド男爵家の当主としておきます。妹を助けて頂き、本当に感謝します」


 この人が僕のおじいちゃんとおじさんになるのか。

 とっても優しい人で、何だか安心するな。


「そういえば、お前らはどうやって寝ているんだ?」

「私達は男子と女子で部屋を分けて寝ています」

「ふむ、では客室を二つ用意しましょう」

「クロノには悪いが、母親は治ったばかりだから今日は他の人と一緒に寝てくれ。明日になれば、母親と一緒に寝れるはずだぞ」

「分かりました。それは承知しています」


 お母さんはまだ経過観察中だし、部屋にも侍従が待機している。

 ギルドマスターの話もよく分かるし、こればっかりは仕方ないよね。


「さて、俺は王都のギルド統括に会わないといけないからこれで失礼する。明日朝またくるぞ」

「ギルドマスター、色々と有難う御座います」

「良いってことよ。冒険者も言っているだろう? お前らはまだ子どもなんだから大人を頼れって」


 そう言って、ギルドマスターは席を立って出ていった。

 今日は本当にギルドマスターに色々と助けられたなあ。

 因みに豪華な鎧の人は近衛騎士っていうらしく、今日は何人かが男爵家に警備として残るそうだ。

 お母さんが治ったばかりなのに、何かあってはダメだよね。


「さあ、夕食の前にお風呂にしよう。先に女性陣から入ってくれ」

「「「はーい」」」


 僕達の孤児院にも小さいながらお風呂があったけど、流石は貴族のお屋敷だけあって大きなお風呂だった。

 着替えも用意してくれて、僕達が来ていた服は洗濯してくれるという。

 そして、お待ちかねの夕食の時間です。

 目の前に並んだ美味しそうな料理に、孤児院の皆の目が釘付けです。


「さあ、遠慮なく食べてくれ。マナーとかも気にしなくて良い」

「「「わーい!」」」


 男爵家の先代の言葉に、食いしん坊のゴレスお兄ちゃんとゴードンお兄ちゃんとライラちゃんが早速料理を食べ始めた。

 それに続いて、僕達も料理を食べ始める。


「おいしい!」

「そうかい、いっぱいお食べ」

「うん!」


 お口の周りをソースでベタベタにしながら、ライラちゃんがニコリとしている。

 そんな僕とライラちゃんの様子を、先代の奥様がニコニコと見つめている。


「ふふ、賑やかってのは良いわね」

「そうだね、何だか明るい感じだな」


 先代夫妻が話す事も何となく分かります。

 僕達はいつも賑やかってのもあるから、寂しい雰囲気ってのがないよね。


 ワイワイとしながらの食事も終わり就寝なのですが、夕方からの怒涛の展開と急いでポーションと強力な毒消しポーションを作った疲れなのか、僕達孤児院のメンバーはベッドに入ると直ぐに寝てしまいました。

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