表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/125

第十五話 不思議な兄弟の縁

 俺はバンザス男爵領のギルドマスターだ。

 今、俺は王都のギルド本部にいる。

 関係者以外入れない部屋の中で、俺の目の前にいるのはギルドの統括マスターと軍務卿だけだ。

 勿論、議題は朝クロノが持ってきた強力な毒消しポーションの事だ。

 

「ふむ、効能は確認結果と同じだね。作成者もクロノとドリーと出ている」

「統括、あの二人にこんな高等なポーションの作り方を教えましたか?」

「いや、基本的な事だけだ。ここまで作ったのは、あの二人の努力の結果だろう」


 一年前、クロノとドリーにポーションの作り方を教えたのは何を隠そう目の前にいる統括だ。

 殿下の命を受けて、統括がクロノの様子を確認しにきたのだ。

 その時に、クロノとドリーに錬金術師の才能がある事を見抜いたのだ。

 統括の鑑定能力によってだ。

 嬉しそうに笑う統括を見るに、ここまでの成果を出せるとは思っていなかった様だ。


「しかし、丁度四本あるのは都合が良い。殿下に一本ずつ持ってもらおう」

「弟が丹精込めて作ったとなれば、肌身離さず大事に持っていそうですね」


 軍務卿の言う事に、俺も賛成だ。

 というのも、殿下の身の安全を脅かす事件が起きていて、殿下の付き人に毒が盛られる事件が立て続けに起きたからだ。

 たまたまというか、クロノの作った毒消しポーションを俺が持っていたので事なきを得たが、もし王都の毒消しポーションなら命は助からなかっただろう。

 実は王都の薬師ギルドも幹部が不正を行っていて、ポーションの質が落ちてしまっているのだ。

 その為に、最近は俺も王都のポーションは全く使わなくなった。

 そして、殿下についてはどんな毒が使われるか全く分からない。

 王妃と宰相は、その位人の命を軽視している。

 殿下には念の為に現状の毒消しポーションを殿下にも渡しているが、この強力な毒消しポーションも渡しておいた方が良いだろう。

 警備を強化しても、全ての陰謀を防げる訳ではない。

 言わば保険の様な物だ。


「しかし、兄弟の縁とは不思議ですな。互いに知らない所で助け合っている」

「本当ですね。殿下にクロノを会わせてやりたいですが、どうも中々上手くいきませんな」

「それももうすぐだ。一週間後に貴族を集めて、どちらが即位するか宣言する手筈になっている」


 俺達は、何とかしてあの兄弟を引き合わせたいと思っている。

 あと一週間、しかし一週間もあるのだ。

 あの腹黒王妃と能無し宰相の周辺が、殿下が宣誓すると発表してから騒がしいのだ。

 うーん、帰ったらクロノにポーションと毒消しポーションの増産を少し急がせた方がよさそうだ。

 念には念を入れておいた方がよさそうだな。


 と、ここで至急を知らせる出来事が起きてしまった。

 かなり焦った様子の兵が、部屋の中に入ってきた。


「軍務卿閣下、一大事でございます。アレク殿下に強力な毒が盛られました」

「なに! 殿下の容体は?」

「手元にクロノ様お手製の毒消しポーションがありましたので、何とか小康状態を保っております」

「そうか、普通の毒消しポーションでは無理か。早速、強力な毒消しポーションの出番となってしまったか」

「まるで、クロノはこういう事になるのを見通していたとしか思えないな」

「これが兄弟の縁、という事でしょうね」


 早速クロノが作成した強力な毒消しポーションの出番となってしまった。

 これは思った以上に事態は深刻だな。

 そして、更に追加情報が入ってしまった。


「軍務卿閣下、カーター殿下とスカーレット殿下とリリアン殿下にも強力な毒が使われました」

「くそ、あの二人は手段を選ばなくなってきたか」

「これは急がないといけませんな。私も向かおう」

「俺も行く。こういう時は分担して動こう」


 俺達三人は、急いで動き出した。

 幸いにもこちらの手元には、四本の強力な毒消しポーションがある。

 俺は、益々兄弟の縁という物を感じてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ