第十四話 凄いものを作っちゃった
翌朝、僕達は納品分のポーションと一緒に作成した強力な毒消しポーションを持ってギルドに向かいます。
心なしか、僕とドリーお姉ちゃんはウキウキしています。
皆強力な毒消しポーションを見たら、どんな反応をするのかな。
「お、皆お揃いだな」
「クロちゃん、ポーションの納品なの?」
「はい、納品にきました」
僕は小さい頃からギルドにきているので、色々な冒険者と顔なじみだ。
今日声をかけてくれたのは、鬼族とオーガ族のお姉さん。
とっても大きくてとっても強いけど、とっても優しいんだ。
他の冒険者とも挨拶をしながら、受付のお姉さんに話しかけます。
「お姉さん、ポーションを納品にきました」
「はい、いつもご苦労様ね」
「あと、この四本も確認して貰えますか?」
「これは毒消しポーションよりも色が濃いわね。良いわ、ついでに調べるね」
「お願いします」
受付のお姉さんに、ポーションと毒消しポーションの他に昨日作成した強力な毒消しポーションを渡して確認してもらいます。
強力な毒消しポーションは最後に確認する様なので、その間に他の冒険者と話をしていこうかなと思ったら、受付からギルドマスターが僕に話しかけてきました。
一体何だろう?
「お、良い所にきた。ドリーとクロノよ、ポーションと毒消しポーションをもう少し作れないか? お前らの作ったポーションは品質が良くてな、この前王都に行った際に軍務卿と話をしたら是非欲しいと言ったんだよ」
「うーん、一気に十倍とかは無理ですけど、二倍くらいなら可能です」
「いやいや、そこまでは求めていない。お試しもあるから、今作っている分の半分もあれば良いぞ」
「ドリーお姉ちゃん、大丈夫?」
「全然大丈夫だよ。この前いっぱい空き瓶も貰ったし」
「という事です。では、先ずは今日の半分をいつまでに作りますか?」
「三日後にギルドに持ってくればいいぞ。あと、今日王都のギルドに行くからまた空き瓶を持ってくるな」
「おお、有難うございます。凄い助かります」
ギルドマスターから新たな販路の紹介があったぞ。
ギルドマスターは色々と顔が広いからなあ。
軍務卿っていう凄い名前が出てきたけど、偉い人だから問題ないって思いたい。
「えー! ギルドマスター、こっちに来てください!」
「うん、どうした? 何か混ざり物でもあったのか?」
あ、例の強力な毒消しポーションを確認した受付のお姉さんが悲鳴を上げている。
何か問題でもあったのかな?
ドリーお姉ちゃんも少し不安そうな顔をしているぞ。
「これ、この四本の確認結果を見て下さい」
「うん、うん? ううん? おい、クロノとドリー。これは何だ?」
「えっと、普通のよりも強力な毒消しポーション、です」
「だろうな。いつも納品する毒消しポーションの四倍の効能で、しかもポーションの効能まであるぞ」
ギルドマスターが発した言葉に、ギルド内が騒めいた。
先日僕達にこんな毒消しポーションが欲しいと言っていた冒険者が、真っ先に受付にやってきた。
「クロノ、この前話を聞いたばっかりで、もうそんな高性能の毒消しポーションを作ったのか?」
「前から研究は進めていましたから。でも、殆どをドリーお姉ちゃんが考えてくれたんだ」
「ははは、それでもすげーよ。二人は立派な薬師様だな」
ギルドの中にいた冒険者は、次々に僕とドリーお姉ちゃんの頭を撫でていた。
何だか僕とドリーお姉ちゃんの周りが大騒ぎになってきたぞ。
そんな中、ギルドマスターだけが冷静に僕達に聞いてきた。
「クロノ、ドリー。俺もあのポーション作りの本は知っているが、ここまで強力なポーションの作り方は載っていなかったぞ」
「あ、はい。なので、本の中の方法を別の方法に変えたりして工夫していました」
「はあ、そういう事か。あの本は実は未完成でな、こうやったらこういう物が出来るんじゃないかって書いてあるページも存在してるんだ」
「えっ? それでは」
「ああ、お前たちのオリジナルの作成手順だな。ポーションも毒消しポーションもそうだ。ただ、この強力な毒消しポーションは作り方も含めて確認が必要だ。この四本はギルド本部に持って行って再度確認してくるぞ」
「すみません、色々お手数をおかけします」
「なに、お前らのやった事は悪い事ではない。研究はこれからもどんどんと進めていって構わないぞ」
「はい」
ギルドマスターとドリーお姉ちゃんが話をしていたけど、知らないうちに僕とドリーお姉ちゃんって凄い事をやっていたんだ。
ドリーお姉ちゃんが簡単に作り方を紙に書いてギルドマスターに渡して、とりあえず僕達の作業は完了です。
「よし、強力な毒消しポーションの確認結果は明日になると思うが、悪い結果にはならないと思うぞ」
「よろしくお願いします。ギルドマスター」
「おう」
こうして僕とドリーお姉ちゃんが作った強力な毒消しポーションはギルド内を騒然とさせてしまったけど、何とか落ち着きを取り戻した。
しかし、ここで僕はある事に気が付いてしまった。
「ドリーお姉ちゃん、麻痺治しも作ったら先にギルドマスターに言わないと駄目だね」
「そうね、また混乱をさせたくないわね」
近々完成予定の新しいポーションについて、僕とドリーお姉ちゃんの意見は一致したのだった。
「二人とも凄いなあ」
「そうね、お姉ちゃんビックリしちゃった」
「「わあ」」
ほっとしたところで、僕とドリーお姉ちゃんはゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんに頭をポンポンされていた。
気が付くと、他の孤児院のメンバーも僕とドリーお姉ちゃんを褒めている。
「二人がいつも研究熱心なのは知っていたけど、こんなに凄い物を作るとはね」
「「私達も負けてられないね」」
「よし、今日は兄ちゃんが頑張って良い獲物を取ってくるぞ。それで皆でお祝いだ」
「やったー!」
冒険者組も僕とドリーお姉ちゃんの研究成果にやる気が出てきたようだ。
ゴレスお兄ちゃんの提案にいの一番で喜んでいるのはライラちゃんだけど、こういった気遣いって嬉しいな。
僕はドリーお姉ちゃんとゴードンお兄ちゃんとライラちゃんと共に、やる気満々の冒険者組を見送ったよ。