第十二話 空き瓶がいっぱい!
「こんにちは。空き瓶を回収にきました」
「あら、クロちゃんじゃない。ちょっと待っていてね」
僕の父親である国王が亡くなって二日目。
国王が亡くなっても僕達の生活は変わらないので、今日も僕はポーション作りに精を出します。
実はギルドでは、僕達の為に使い終わったポーションの空き瓶をとっておいてくれています。
冒険者からしたらただのゴミなんだけど、僕達にとっては大切な空き瓶です。
綺麗に空き瓶を洗って乾かしたら、また僕達が作ったポーションを詰めていきます。
でも、空き瓶が一杯あると重いので、空き瓶の回収がある時はゴードンお兄ちゃんにも手伝って貰います。
ゴードンお兄ちゃんは、僕と一歳しか変わらないのにとっても力持ち。
重い荷物も軽々と持ち上げます。
因みにライラちゃんは、孤児院でドリーお姉ちゃんと一緒にお留守番です。
ギルドの窓口のお姉さんに空き瓶を準備してもらっている間、僕には別のお仕事があります。
それは、冒険者にポーションや毒消しポーションを使って貰った感想を聞く事です。
「お、クロノか。また、ポーションの感想か?」
「はい、今回はどうでしたか?」
「クロノが作るポーションはどんどんと良くなっていくね。苦みも少なくなったし、何よりも性能が良い」
「そうだな。性能に関しては間違いなく抜群だな。王都で売られている同じ値段のポーションと比較しても、クロノ達のポーションが凄すぎて比較にならないぞ」
「特に毒消しポーションの性能は格段に違うわよ。王都の毒消しポーションは、全く使い物にならないの」
「うーん、そうなんですね。僕達は出来るだけ良いものを作ろうと思っているので」
あらら、僕達のポーションを使った感想を聞いていたのに、いつの間にか王都のポーションの批評になっていっちゃった。
前に冒険者から王都製のポーションを見せて貰ったけど、品質が悪いって鑑定で出ていたもんな。
僕達のポーションは必ず良いものを出す様にしているけど、それって普通だと思うんだよね。
王都の方が腕の良い薬師が多そうだけど、何で品質が悪いのかな?
「おっと、クロノのポーションの話だよな。うーん、性能も良くて値段も手ごろで本数も確実にある。今の所は文句はないな」
「私から言わせてもらうと、クロちゃんが作る毒消しポーションに強力な物があるといいね。クロちゃんの毒消しポーションは色々な毒にまんべんなく効くけど、更に凄いのもあると良いと思うよ」
「そういっちゃうと、麻痺治しも作ってくれって言っているもんだぞ」
「いえ、貴重な意見有難うございます。実は前に冒険者から頂いた本を元に、強力な毒消しポーションとか麻痺治しを研究しているんです」
「ほー、それは凄いなあ」
「必要な薬草があったら、私達にも相談してね」
僕達が採れる薬草の関係でハイポーションは作れないけど、強力な毒消しポーションは作れる事は分かっているんだ。
しかし強力な毒消しポーションは作るのが中々難しくて、失敗の連続なんだよね。
あと、実は麻痺治しはもう少しでできそうなんだ。
でもまだ出来ていないから、冒険者には内緒にしておこう。
そんな事を冒険者の人と話をしていたら、ギルドの受付のお姉さんがポーションの空き瓶を持ってきてくれた。
あれ?
何だかいつもよりも多くない?
いつもはみかんとかが入っていた段ボールと同じ大きさの木箱一つだったのに、今回はなぜか木箱が四つもあるぞ。
「実はね、この間ギルドマスターが王都のギルドに出張した時にいらない空き瓶を貰ってきたのよ」
「わあ、そうなんですね。でも、ちょっと量が多いですね」
「僕でも、ちょっと大変かも……」
空き瓶がいっぱいあるのは嬉しいけど、これじゃあゴードンお兄ちゃんでも持てないよ。
ゴードンお兄ちゃんもしょぼんってしてしまったよ。
どうしようかなと思っていたら、ポーションの話を聞いていた冒険者が声をかけてくれた。
「お、なら俺たちが手伝ってやろう。いつもお世話になっているからな」
「え! お世話になっているのはこっちですよ。差し入れとか貰ってますし」
「小さい子が気にしちゃ駄目よ。ここは素直に大人に助けを求めるべきね」
「分かりました。有難うございます」
「ありがとう」
思わぬ援軍に、僕とゴードンお兄ちゃんは冒険者の人にぺこりとお礼をしたよ。
そうしたら、皆が僕とゴードンお兄ちゃんの頭を撫でてくれたの。
そして、ひょいと空き瓶が沢山入った木箱を持ち上げてくれたよ。
おお、皆さん力持ちだなあ。
「そうなんですね。わざわざありがとうございます」
「ありがとー!」
「お前らも気にするな。たまには大人を頼れよ」
孤児院に着くと、ドリーお姉ちゃんとライラちゃんが出迎えてくれて、僕が経緯を話すと冒険者にお礼をしてくれた。
冒険者は気にしなくて良いっていってくれたけど、とっても助かった。
そういって、冒険者はギルドに帰って行った。
今日は元々空の瓶を洗う予定だったので、ドリーお姉ちゃんとゴードンお兄ちゃんと一緒にシャカシャカ空き瓶を洗っていきます。
ライラちゃんは空き瓶を洗う事が出来ないので、皆のやっている事を見学します。
「ドリーお姉ちゃん。ギルドで話を聞いたら、強力な毒消しポーションと麻痺治しが欲しいんだって」
「あら、そうなのね。実は強力な毒消しポーションを作る手がかりを見つけたのよ」
「流石はドリーお姉ちゃん!」
「凄いね!」
「手持ちの薬草でできそうだし、明日試しに作ってみようね」
「はーい」
ドリーお姉ちゃんは本当に頭が良いなあ。
前世の知識がある僕よりも確実に頭が良いの。
強力な毒消しポーションができれば、もっと皆の役に立ちそうだな。