第百十九話 ちょっと気になる報告
そんな大変なポーション生産も、何とか春前には風邪とかも落ち着いてきました。
各地の薬師ギルドと連携もしていたけど、どうやら昨年の冬みたいな大きな被害が出た訳ではなさそうです。
でも、ちょっと気になることがあるそうです。
それは、王宮での会議の席で報告されました。
「どうも旧体制に従っていた領地の一部で、この冬の死者数が例年と比較してかなり増えたみたいだ。そのため、王都に流れ着く人が増えている。もちろん領内に残る人も減るので、その領地は税収がかなり減るだろう」
僕たちの薬師ギルドと連携していない領地に間者を放って調べたところ、かなりの被害者が出ているそうです。
アルス兄様もかなり難しい表情をしていたけど、こればかりは仕方ない面もあります。
「幸いにして、冬季の間に農地の開墾が進んだ。今王都にいる人の食事は十分に賄えよう。各領地でも開墾は進んでいるが、それ以外の領地では生産能力がかなり落ちると見込まれている」
「そんな、その領主はどうにかならないんですか?」
「貴族主義の連中が殆どだから、民の被害など気にしないだろう。なので、統治不能と判断して、強制的に当主交代などの策にでる必要がある」
アルス兄様曰く、各地に調査官を派遣して色々と調べているそうです。
証拠集めは大変だけど、証拠さえ集まれば色々な策に出るそうです。
「ただ、この数年は大きく差が広がるだろう。こちらも手は打つが、どんどんと住人の流入が続くだろう。治安維持と周辺領地の開発も、並行して行おう」
ということで、特に僕たちが進める政策に大きな変更点はありません。
前倒し出来るところは、どんどんと前倒しすることになりました。
その中の一つが、王国直轄領になった旧バンザス男爵領です。
資源を荒らさない程度に周辺領地を開発していって、王都の衛星都市としての側面と学園都市としての機能を持たせることになりました。
そして、アルス兄様が僕にあることを提案してきました。
「結婚式前になると忙しくなるから、今のうちにバンザス領を見に行ってくると良い。クロノの目で見た改善点もあるだろう」
そういえば、治療研究所にも行かないと行けないもんね。
ということで、護衛もつけながら一年ぶりにバンザス領に行くことになりました。
みんなと一緒に行くみたいなので、屋敷に帰って色々と報告することになりました。
会議が終わって屋敷に戻ったら、さっそくみんなに話すことにしました。
「えーっと、一週間くらいの予定で現地に滞在します。僕たちの住んでいた孤児院はもうないので、旧バンザス男爵家の屋敷の客室に泊まることになります」
「まあ、前に聞いていたのとやることは変わらないな。なら、問題ないな」
「私たちは、クロちゃんの護衛をしつつ町の人から話を聞けばいいんだね」
僕がみんなに説明をすると、ゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんが直ぐに理解してくれました。
他の人たちも、久々にバンザス男爵領に行くのでとても楽しみにしていました。
「せっかくなのだから、ゆっくりしてきなさいね。あと、町の人によくお礼を言うのよ」
お母さんがちょっと心配モードに入っているけど、このくらいなら全然大丈夫ですよ。
ということで、一週間後に出発するのを目指して荷造りをすることにしました。




