第百十四話 カーター兄様が公爵領を出発しました
みんなで勉強方法などを話し合っているうちに、カーター兄様が公爵領を出発したと連絡が入りました。
僕は、王宮に行ってお母さんたちと会議に参加します。
「まあ、治安維持は予定通りだ。公爵家の人員は総入れ替えになるが、公爵家自体がなくならないことも住民感情としては大きかったらしい。軍も基地を作って駐留をすることになるから、何かあっても直ぐに対応できる」
アルス兄様がカーター兄様の報告を読み上げていたけど、現地も問題なく統治できているそうです。
これで、僕たちもホッと一安心ですね。
一番嬉しそうにしていたのは、間違いなくカーター兄様の婚約者のティナさんです。
「軍の強化とともに、公共事業を進める。幸いにして、減税しても取り潰しとなった貴族家から押収した金品で公共事業を行うだけの予算を確保できた。町の人や冒険者にも、積極的に声を掛ける」
これからは、より良い国作りのための政策を行うそうです。
最初に冒険者や軍が街道の害獣駆除をして安全を確保して、それから街道の拡張工事などを行うそうです。
そうなると、怪我人が出るから僕たちのポーション作りも重要になってくるね。
「王都郊外に、大きめの軍の駐屯地を作る予定だ。軍の学校も作る予定だ。とにかく、スラム街の対応と並行して治安維持をしなければならない。ふう、やることが山積しているな」
アルス兄様は思わず苦笑していたけど、今までそれだけの公共事業をしてこなかったのもあります。
放蕩王に王妃と宰相の権力闘争も、結果的には大きかったのかもしれません。
「クロノには、当分はポーション生産に注力してもらう。治療研究所に行くのは、恐らく来年になってしまうな」
「大丈夫です! 信頼できる人が治療研究所を運営してくれているので、僕も安心しています」
治療研究所を運営しているおばちゃんはとても良い人だし、おばちゃんたちがいるから僕もこうやって色々なことに専念できるんだよね。
すると、アルス兄様が面白いことを教えてくれました。
「クロノたちがいた旧バンザス領で計画している冒険者ギルド学校だが、今回の初心者冒険者引き抜き事件を受けて前倒しにすることにした。腕の良い冒険者が増えることは、国にとっても有益だ」
おお、なんだか色々なことが決まって行くんだね。
冒険者学校は僕も興味あるし、きっと凄いことを教えるんだろうね。
こうして、色々なことが決まって行きました。
カーター兄様が王都に戻ってきたら本格的に動き出すのだけど、ワクワクすることが増えるんだね。
冒険者学校の件はもう話をしてもいいそうなので、さっそく屋敷に戻ってみんなに話をすることになりました。
「うーん、どんなことを教えるかによるけど、確かに冒険者学校には興味があるわね」
「クロノの仕事の兼ね合いもあるが、冒険者として成長できるのなら受けてみたいな」
アンナお姉ちゃんもゴレスお兄ちゃんも、冒険者学校に興味津々でした。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんも現役の冒険者だから興味があったけど、ドリーお姉ちゃんはポーション作りを優先するそうです。
「うーん、僕はまだ分からないなあ……」
「らいらもわからなーい」
ゴードンお兄ちゃんとライラちゃんは、まだ小さいのもあるので色々なことの実感が湧いていませんでした。
ともあれ、どんな冒険者学校ができるかとても楽しみですね。