第百五話 お熱い二人
騒ぎも段々と落ち着いていき、僕はついでに回復ポーションもあるだけ出しました。
カーター兄様についていた兵に渡し、特に症状が重い人に飲んで貰います。
とてとて。
そして、魔法で犯人を撃退したライラちゃんが意気揚々と僕の所に戻ってきました。
ステラさんは、まだ兵と一緒に話をしていました。
ぎゅー。
「くろのにーに、らいらがんばった!」
「ライラちゃん、悪い人を捕まえて偉かったけど、勝手に走り出さないでね」
「はーい」
ライラちゃんは僕に抱きつきながら、褒めてって表情をしていました。
僕はライラちゃんの頭を撫でながらも、注意もしました。
今回はステラさんと一緒だったけど、ライラちゃんは危ないと思うと突っ走る傾向にあるもんなあ。
そして、こっちはとってもラブラブな雰囲気でした。
「あの、カーター様。私の作った毒消しポーションは、カーター様の役に立ちましたか?」
「ああ、とても役に立った。ベストのタイミングで持ってくるなんて、流石はティナだ」
「カーター様……」
カーター兄様とティナさんが、お互いに手を握りあって熱い視線を交わしているよ。
もちろん、周りの兵も僕も二人の事を気遣って敢えて話しかけていない。
というか、二人のラブラブオーラが周りの人を寄せ付けないって感じだ。
「ねーねー、くろのにーに。おにーちゃんとおねーちゃんにちかづけないよ」
「そうだね、僕も二人に近づけないよ。今は二人だけにしてあげようね」
「はーい」
あのライラちゃんでさえ、僕の傍にいて二人の邪魔をしていません。
まあ、もうそろそろ二人は離れ離れになっちゃうから、こればかりはしょうがないです。
という事で、僕はライラちゃんと一緒にステラさんの所に向かいました。
というのも、ステラさんの表情が少し固いのが気になるんだよね。
「ステラさん、何かありましたか?」
「うん、三人が持っていた小瓶を調べたら、とんでもない事が分かったの。この三人は小瓶の中に入っていた毒の使い方を間違えていて、もし正しい使い方をしたら複数の死人が出たわ」
ええっ!
小瓶の中に入っていたのは、そんな物凄い毒だったんだ。
使い方を間違えたから、お腹が痛い人が複数出ただけで済んだんだ。
回収された小瓶の中は殆ど空っぽなので、これ以上の被害者が出るのは防げそうだ。
公爵家側の罪が、また一つ増えた事になった。
そんな難しい顔をしていたら、ちょっと気まずそうにステラさんが僕に話しかけてきた。
「えーっと、あの二人のラブラブはいつまで続くのだろうか。流石に私でも恥ずかしくなってきたよ」
ステラさんが顔を向けた先には、未だに手を取り合って見つめ合っているカーター兄様とティナさんの姿があった。
うん、兵もどうしようか迷っているけど、僕には二人をどうにかする勇気はない。
というか、無理です。