第百四話 大騒ぎの軍の施設
とはいっても全員で宮殿にいけないので、僕とステラさんとティナさんの他にはスカーレット姉様とリリアン姉様にライラちゃんで向かいます。
他の人は、念の為に毒消しポーションをいっぱい作ります。
というのも、ちょっとした事があったのです。
「うーん、なんかね、もっとどくけし、ひつようかも?」
「「「えっ?」」」
という、ライラちゃんの一言です。
ライラちゃんは悪魔的勘があるので、こういう時は恐ろしい程予感が当たります。
しかも宮殿の方角を向いてボソッと言ったので、皆びっくりしました。
ですので、残った皆で毒消しポーションを作ります。
まだまだ毒消し草はあるので、全然問題ありません。
僕達は、馬車に乗って宮殿に向かいます。
すると、カーター兄様は宮殿近くにある軍の施設にいるそうなので、改めて皆で現地に向かいます。
「薬を早く持ってこい!」
「くそ、毒消しが足りないぞ」
「こっちにも病人がいるぞ!」
軍の施設についてびっくりです。
沢山の兵が走り回っています。
軍の施設がまるで戦場の様です。
会話を聞く限り、病気の様な事を喋っているなあ。
「えっ? 何が起きているの?」
「何? 何が起きているの?」
スカーレット姉様とリリアン姉様も、戦場のような軍の施設を見てびっくりしています。
ステラさんとティナさんも、この状況を見て絶句していました。
と、ここで僕達の姿に気が付いた人が。
「クロノ、それにティナも。薬師ギルドにいるんじゃなかったのか?」
僕達の姿を見つけたのはカーター兄様でした。
何で僕達がここにいるのって感じです。
とりあえず、ティナさんがカーター兄様に僕達が来た理由を話します。。
「えっと、皆で毒消しポーションと強力な毒消しポーションを作ったので持ってき……」
がし。
「本当か? 毒消しポーションを持ってきたのか?」
「え、ええ。結構な数がありますわ」
「助かった、全部出してくれ」
「は、はい」
ティナさんがある程度話した所で、カーター兄様はティナさんの肩をがしっとつかみました。
何が何だか分からないティナさんだったけど、カーター兄様に言われるがままマジックバッグから全ての毒消しポーションを出しました。
「おお、本当に助かったぞ。おい、先ずはここにある分だけ持っていけ」
「「「はっ」」」
カーター兄様は毒消しポーションを確認すると、直ぐに兵に毒消しポーションを持って行くように指示を出した。
そして、カーター兄様は僕にも話しかけます。
「クロノ、毒消しポーションを持っていないか?」
「えっと、十本ならあります」
「あるだけでいい、全て出してくれ」
「分かりました。あと、丁度薬師ギルドで毒消しポーションをいっぱい作っています」
「そうか。何人か薬師ギルドに向かう様に」
「「「はっ」」」
僕はマジックバッグから毒消しポーションを全部出します。
そしてカーター兄様は、兵に指示して薬師ギルドに向かわせました。
ここでホッと一息を入れたカーター兄様が、軍の施設の状況を教えてくれました。
「いきなり騒がせてすまなかった。実は兵の昼食に毒を盛られたんだ」
「「「えっ!」」」
カーター兄様の言葉に、僕達はびっくりです。
でも、軍の施設の大騒ぎは納得です。
そして、毒消しポーションを必要としているのも理解できます。
「カーター兄様、犯人は分かったのですか?」
「大体絞り込めている。昼食に関わる人物は限られているからな。だが、まだ捕まっていないのだよ」
昼食が原因なら、食堂に立ち入った人が怪しいもんね。
そんな事を思っていたら、ステラさんとライラちゃんの姿がない事に気が付いた。
ボン、ボン、ボン!
「「「ぐはっ」」」
「わるもの、やっつけた!」
「あ、何かの小瓶を持っていますわ」
何と、ライラちゃんが地面に転がっている三人の兵を踏み付けて右手を高々と上げていた。
そして、ステラさんはライラちゃんが踏みつけている兵の身体検査を行っていた。
兵の服が焦げているから、きっとライラちゃん得意の火魔法の直撃を受けたんだな。
「カーター兄様、もしかしてなんですけど」
「ああ、間違いない。捜索対象者だ」
「ですよね……」
ライラちゃんが攻撃した時点で、何となく分かったけどね。
カーター兄様の側にいた兵が、慌ててライラちゃんとステラさんの側に走って行きました。