第十話 波乱の予感
ざわざわ。
ざわざわ。
「何だろう。何だか騒がしいね」
「何かあったのかな?」
翌日、出来上がったポーションと毒消しポーションを納品するために皆でギルドに行くと、冒険者も職員の人も話し合いをしていたんだ。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんも顔を見合わせて何だろうって思っている。
こういう時は、知っていそうな人に聞いてみよう!
という事で、ポーションと毒消しポーションを納品しつつギルドの職員のお姉さんに聞く事に。
「お姉さん、ポーションと毒消しポーションを納品に来ました」
「あら、有難うね。早速確認するわ」
ギルドのお姉さんにポーションと毒消しポーションを渡すと、直ぐに裏手に声をかけている。
ポーションの品質チェック用の魔導具があるので、その魔導具を使って作ったポーションの品質を確認するそうだ。
人族や獣人は魔法が使えないので、機械とかこういう魔導具を使うんだって。
因みに魔導具は高価なので、とても僕達には買えません。
魔導具が無くても、僕の鑑定魔法を使えば一発だもんね。
「お姉さん。皆、ザワザワしているけど何かあったの?」
「この国の王様が昨日亡くなったそうよ」
「えっ!」
「本当なのよ。それで、どうも宮殿ではどちらの王子を次の王様にするか揉めているらしいわよ。どちらの王子も優秀らしいから、私達にはあまり関係ないんだけどね」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、クロちゃんはいつも礼儀正しくて偉いわね」
僕はお姉さんから聞いた話にびっくりしてしまった。
王様が亡くなったという事は、僕の父親が亡くなった事になる。
赤ちゃんの時、お母さんや兄は何も言っていなかったけど、僕が保護された時にギルドマスターが色々言っていたっけ。
産まれた直後に聞いた話やこの街の人の話を聞く限り、碌でもない王様だったらしい。
そして、幼い僕の事を見つめていた二人の兄が王座を争う。
兄というよりかは、兄の周囲にいる人達が争っている様だ。
もしかしたら、僕にも何か影響があるのかなって思っちゃった。
「クロちゃん、どうしたの? 何か考え事?」
「この国の王様が死んじゃったんだって。この国どうなっちゃうのかなって思ったの」
「え、そんな事があったのね。真面目なクロちゃんだから考えちゃったのね」
ふう、危ない危ない。
アンナお姉ちゃんが僕の顔を覗き込んできたよ。
僕が考え事をしているって一発で見抜かれちゃった。
アンナお姉ちゃんとは、僕が赤ちゃんの時からずっといるからなあ。
孤児院の些細な変化も直ぐに見抜くんだよね。
「クロノ、王様が死んだってこの国は変わらないぜ。俺らも暫くは同じ生活だ」
ゴレスお兄ちゃんが僕の頭をポンポンと叩きながら話をしている。
確かに王様が死んでも国がなくなっちゃうって事はないけど、どちらかというと二人の兄のどちらかを王位につけるかで色々と事件が起こりそうな気もするな。
僕を捨てる様に言った人でろくでもない人だって兄も言っていたし、血が流れる様な事が無ければいいな。
「はい、全てのポーションの確認が終わりました」
「有難うございます」
「お金はいつも通りにお姉ちゃんに預けておくわね」
「はい」
おっと、ポーションの確認が終わった様だ。
今回も無事に全部納品できてほっと一安心です。
「アンナお姉ちゃん、ポーションの納品が終わったよ」
「無事に終わったのね。じゃあ、お姉ちゃんたちはそろそろ出発するね」
「いってらっしゃーい」
アンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんとララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんは、今日は森で獲物をとってくるようで、僕が見送ると手を振りながらギルドの受付に向かっていった。
「それじゃあ、私達は帰って薬草でも採ろうか」
「「「はーい」」」
僕とゴードンお兄ちゃんとライラちゃんは、ドリーお姉ちゃんの号令のもと孤児院に帰ります。
父が死んで何か動きがあるかもしれないけど、先ずは皆の為に薬草を採らないとね。