妖狐の契約
しばらくして葵は私の頭を撫でるのをやめる
私「あ…」
葵「あら…もっとして欲しかった?」
私「いや…別に…」
葵「ふふ…」
葵は私の上から離れる
葵「まあこれからよろしくね?兄さん」
私「兄さんか…まあよろしく…葵」
起き上がって背中に着いた土を払う
葵は月明かりに照らされていてとても美しかった
私[本当に葵は人外なんだ…ただ、なんで私に…]
葵と車に戻る
葵「まあ、今日はここで一晩を明かしましょう…」
私[尻尾なくなってる…]
私「あぁ…わかった…」
毛布を取り出して葵に渡す
葵「色々あるのね」
私「まあね…」
椅子の背もたれを倒して自分に毛布をかける
葵「おやすみ…」
私「おやすみ」
目を瞑って眠りにつく
葵「ねぇ…寝た?」
私「…寝た」
葵「寝てないじゃない…」
私「…」
目を閉じたまま聞く
私「葵はなんで私の元に来た?」
葵「え?」
私「人間なんて腐るほどいる…私の元に来たって意味は無いし死に引かれたからって葵は私を助ける義理はない…」
葵「…」
私「なんで…?」
怖くなる
葵「んー…」
聞きたいけど聞きたくない
葵「波長があったから?」
私「波長?」
葵「うん…なんか波長というか雰囲気というかそういった感じ?直感的にこの人はいい人と思ったから…」
私「…」
葵「まあ気まぐれもあるわね…なんかこう…信用なのかな?まあ嫌な雰囲気はないから…」
私「そう…」
悪い気はしなかった
葵「ねぇお兄さん?」
私「んー?」
葵「今死にたい?」
私「…」
わかんなかった
葵「もし本当にダメになったらその時は…」
頭を撫でられる
私[あ…]
葵「私が助けるから…」
私「うん…」
落ち着く
眠気が襲ってくる
葵「おやすみ…お兄さん」
私「おやすみなさ…」
眠りに落ちる…
「きて…」
「起きてー!!」
私[うるさい…寝たい…]
葵「起きてー!!」
私「うるっさい!!」
葵「わっ!!」
目を覚ます
外は日差しが強く、昼過ぎだった
私[あぁ…夢じゃなかったのか…]
葵「お腹空いた!!」
私「後ろになんかない…?」
葵「あるけど足りないよ…」
私「…帰るか」
首を回すとゴキゴキと良い音が鳴る
葵「帰る?」
私「借りてたアパートに…」
水を飲んで寝ぼけていた意識をはっきりさせる
葵「私も行っていい?」
私「…いやいや」
苦笑いをうかべる
私[葵みたいな可愛い子を我が家にあげるとか…ドキドキするんだけど…]
葵「…//」
葵は頬を染める
私「あー…」
心を読めるのを忘れていた
私「あんま心読まないで…恥ずかしいから」
葵「あー…わかったわ…まあ意識しとくわ…」
私は車のエンジンをかける
私「それじゃとりあえず下山しよっか…」
葵「ん…行こー!!」
私[朝から元気でしょ…]
車を走らせる
来た時に見た景色とは違って何だか晴れ渡ったような雰囲気があった
私「30分で下山はできるからとりあえずコンビニなんか買おっか…」
葵「さんせー。お腹空いたー…」
私「んで…?こっから葵はどうするの?」
山道は険しく、揺れが強い
葵「お兄さん家に住もっかなーって思ってるよ?」
私「ゴホッ!!」
思わず蒸せてしまう
葵「ちょっ…どうしたの!?」
一旦車を止めて葵の方を見る
私「住むの!?」
葵「うん!!」
葵は満面の笑みで答える
私[いや…えぇ…?]
本気で困惑してしまう
水を1口飲む
葵「お兄さんに迷惑はかけないわよ…お金とかは心配しないで?なんなら養うし!!」
私「養うって…そんなお金がどこに…」
葵「私の口座よ?」
私「っ…いや、だとしても狭いし…」
葵「別にいいわよ…」
私[…]
逃げ道がどんどん防がれる
葵「それに…兄さんは私に買われたじゃん…」
私「…はぁ」
私は車を再び走らせる
葵「お兄さん…」
私「いいよ…」
葵「え?」
私「買われたんだから拒否権はないでしょ…」
私[まあ葵には嫌な気がないからだけど…]
葵「そうね…私が買ったから拒否権はないわよ…」
横目で葵をちらっと見る
上機嫌に目を細めて笑っていた
私[…はぁ]
車を走らせて下山する




