魅惑的な誘い
ルビが振られるので
心の中で考える描写をする時に
私 (なんで…)
というカッコから
私 [なんで…]
というふうに変更します。お願いします。
私[…]
ぼーっと空を見上げる
私[死にたくないと思ったが…やることが無い…]
友人もいなければ大学に居場所もない。家族も私には無関心だし、誰も私を気に書けない。
葵[「生かしてあげる。」]
葵の言葉がひたすら頭の中で回っていた。
私[葵は初めて私のことを見てくれた…]
これまでの人生の中で良い目で見られたことがない
虐げられていじめられるかいないものとして扱われてきた
私[多分ルックスも普通だ…不潔にもしていない…]
実際に私はイケメンでもなく不細工でもない
本当に個性はなく普通と言うべき人間である
私[葵は私に色々なものを見せてくれると言った…]
私はジーパンのポケットから五円玉を取り出す
それはただの五円玉だ
何ら変哲もないただの五円玉
それなのに私は目が離せない
私[私は買われたんだ…たった五円で…]
五円玉を裏返してみるがやはり普通だった
私[でも私は葵の誘いに乗った…]
「ねぇ」
私[私は誰も信じなかったのに…なんで惹かれたんだろうか…]
「ねぇ!!」
私[あおいは私に何を見せ]
葵「ねぇってば!!」
葵は私の腹の上にまたがる
私「ぐふっ!!」
葵「呼んでるのになんで無視するの!!」
私「痛い…」
葵の顔を見るとほっぺを膨らまして不機嫌だった
葵「もう…」
私「ごめんってば…」
葵「ねぇ」
私「なに?」
葵の後ろに何かが見える
それは9本の尻尾だった
葵「私は妖狐と言われる妖怪よ。」
私「っ…」
葵「私は人を襲うことはしないわ…別に嫌いじゃないもの」
葵の頭に耳が生える
髪に隠れていた人間の耳ではなく、本当に獣耳というように葵の姿が変わる
私[動けない…]
葵は私にまたがりっているが、葵の華奢な体に私は完全に押さえつけられていた
葵「ふふ…無理よ…矮小な人間ごときが私に叶わないわ…」
私[口調が完全に変わってる…]
葵が完全に人間ではないことを悟る
葵「ねぇ?」
私「なに?」
葵「あなたは何をしたい?」
私「…」
口を噤む
葵「なら聞くわ…色んなものを見たい?」
私「まあ…」
葵「色んな体験をしたい?」
私「できるなら…」
葵「じゃあ…復讐とかしたい?」
目を見開く
葵はにやにやとして私を見る
葵「私の力を使えばあなたをいじめた人間とか家族に対して報復できるわよ…なんなら殺してあげるわよ?」
私「殺したくない…」
葵「なら殺すとは言わなくても呪いをかけたり床に伏せたり色々できるわ…憎くない?」
私「憎い…」
葵「そう…私を使えば簡単に出来るわよ…」
私[…]
葵「ねぇ…どうしたい?」
私「…」
力を抜いて腕をだらんとする
私「葵がそんな妖怪とは思わなかったよ…」
葵「…ほう」
私「殺してくれ」
葵「…へ?」
私「…正直恨んで無いわけじゃない。なんせ私の事をいじめて来たわけだから。何もしてないのに…」
葵「なら…」
私「けどそこまでする気は無いんだ…なんか私が嫌なんだ…」
葵「…」
私「許してないし怒ってないわけじゃない…けど本当になんとなくそういうことをしたくない…それをしちゃったらなんかが狂う気がするんだ…」
葵「じゃあなんで殺して欲しいの?」
私「私が不安定だからだよ…もしそう思ったらと思うならいっそ殺して欲しいよ…」
葵「なら死ぬ…?」
私「生かすって言ってくれたのに人は殺そうとするんだね…」
葵「…」
私「もし…殺すなら私だけにしてね…私は恨んでいるけどそういうことをする気は無いから…」
私は目を閉じる
葵「優しいのね…」
私「怖いだけだよ。」
葵「あなた何回死のうとするのよ…」
私「逃げてるだけだよ…」
葵「はぁ…優しいのよ…」
頭を撫でられる
私[…!?]
驚いて目を開けると葵は私の頭を撫でていた
葵「もしあなたが私に復讐を望んだら本当にそうしてたわ…」
私「ちょ…」
頭を撫でられたのはほぼ初めてだ
葵「よく頑張ったわね…」
葵は微笑んで私の頭を撫でる
私「頑張ってないよ…もう何もする気がないんだ…」
葵「まあ私がしたいのよ…」
私[…へんなの]
葵は私の頭を撫でて私はただひたすらそれを受け入れた
月夜が私たちを照らす