死にたかった
私「ねむ…」
車の中でぼーっと星を見る
山奥だから見える数はとても多く、どこか神々しささえ感じる
車を走らせてなんとなくのまま山奥に来た
荷物は最低限しか持ってきていないが金はある
だが、この金ももう使うことは無いだろう
私(もう疲れたからこの辺境の地で休もう…なんなら…)
私は大学で失敗した
なんとなく興味で入った大学で上手くいくだろうの精神できたが、上手くいかなかった
彼女はいないし勉強もついていけない。別に頭は悪くない。ただ、面白くなかったのだ
そして鬱になった
どこで間違えたかなんて分からない
元から人に恵まれずにいじめられて虐げられた人生だった
別に見かけは悪くない。もっと酷い人間は沢山いる
ただ、目をつけられてそこから腐っていった
もう何もする気は無い。
どこかに出かけようと最低限の荷物を車に詰め込んでアパートを出てきた
どうせ心配してくれる人は誰もいない
知り合いはほぼ居ないんだから私がいなくなっても気づかれない
大学もどうせ連絡入れないだろう
教授にも全然話さなかったから
意欲のない生徒にあの人らは何もしてこない
家族も放任主義だからお金はあるけどそれだけだ
親みたいなことは何もされなかった
私
CDをつけて静かに目を閉じる
後悔はない
私には願望もなかったから
だらだらと生きてきたけどこんな神々しい景色の中で散るのならば悔いはない
私(もしも散らなかったら…何をしようか…)
もしできたらこうしたいを想像する
温泉に行きたい、彼女と遊びたい、友人との見に行きたい
温かさを知りたい
私(すごいな…出来ないのは明確なのに欲望はどんどん溢れてくる…)
過去に本で見た幸せやこれやりたいと望むものが頭の中に溢れる
私「もし…もしできたなら…」
出来ないとわかっているから涙があふれる
私「色んなことをしてみたかった…」
決して実現しない理想で頭が埋まる
しかしそんなつぶやきはこの山奥では意味をなさない
CDの音楽と鳥の鳴き声だけが響く
私「…」
…静かに眠りにつく
…
…
コンコン
私「…」
コンコン
音がする
私(うるさい…もう寝たいのに…)
コンコンコン
私(いや、音が近い?)
ゴンゴン!!
私「…っ」
私は目を開ける
前に見える景色は星空だが辺りが月明かりで照らされていることから時間はそんなに経っていない
ガチャガチャ
扉を開けようとする音が聞こえる
私(何かいる…?)
扉の方をむくと女性がいた。
私「幻覚…?」
「幻覚じゃない!!開けてよ!!」
はっきりと女性の声がする
私は微睡んでいた意識がハッキリとする
私「何?」
「いいから開けて!!壊すよ!?」
ガチャガチャと女性がドアノブを引っ張る
私「わかったから!!開けるから!!」
鍵を開ける
鍵が空いたことでドアが開くが勢いよく引っ張っていたせいで女性が後ろに引っ張られる
「いったーい…急に開けないでよ!!」
私(理不尽な…)
女性は車に入ってきて助手席に座る
私 (…かわいいな)
女性はスタイルはよく、金髪のロングヘアーで服装はオシャレで明るく、ギャルというような見た目をしていた。胸は出るとこは出ており、身長も小柄ではなく、165くらいに見える
私「んで?なんで今乗ってるの?」
CDを止めて女性に話す
女性「止めないで。」
私「ん?」
女性「止めないで…いい曲じゃない。」
私「…はぁ」
私はCDを再びつける
女性「…」
女性はじっと私の顔を見る
私「…」
私は女性の顔を見返すが整った顔でとても綺麗で吸い込まれそうな瞳で思わず目をそらす
女性「ふふ…私の勝ちね」
私「勝ち負けとかあるんだ…」
前を向いて星空を眺める
女性「死のうのしてたでしょ?」
私「っ…いや?」
心臓がドクンと跳ねる
女性「本当?」
私「ああ…ここは景色が綺麗だから少し観光にね…」
女性「こんな大荷物で観光なんて随分長期的ね」
私「そりゃあ色んなところをめぐりたいからね」
女性「食事がほぼないのにこんな山奥でどうするの?」
私「…」
女性「それにさっき言ってたじゃない…」
私 (やめろ)
女性「色んなことをしてみたかったって」
私 (やめろ…!!)
心臓の鼓動が早くなる
女性「なんで過去形なのかしらね?」
私「やめろ!!」
女性を睨みつける
私「なんなんだよ急にこんなところにいて知ったような!!どうせ私の人生腐ってるよ!!人に悪いことをしてないのに人から虐げられて!!」
涙があふれる
私「なぁ!?どうすればよかったんだよ!!誰も私を見てくれなかった!!友人はいないし親も私を見てくれなくて!!金は振り込むからあとは好き勝手しろって!!」
言葉が出てくる
私「もう変える気力もないよ…だからせめて…誰もいないところで散ろうと思ったのによ…」
私は項垂れる
私「死なせてくれよ…もういいだろ…家族や友人も誰も私を見ないんだし私はいなかったようなものだしいいだろ…」
涙が止まらない
私「もう殺してくれよ…なんかの縁だ…どうせこんな場所誰も来な」
女性「嫌よ」
顔を上げる
女性はまっすぐ私を見ていた
女性「あなたが何を見てきて経験したかは私には分からないけど…私はあなたを殺さないわ。」
私「…」
女性「ねぇ?あなた私に買われてみない?」
私「はぁ?」
女性「だって今のあなた死に持ってかれてるもの。」
私(何言ってんだこいつ…買われろって…)
女性「変なこと言ってないわよ。急に言われて疑う気持ちはわかるけどね。」
私「な…」
心が読まれた
女性「ふふ…私の名前は葵…よろしくね」
私「葵…」
葵「まあとりあえず今は私に買われなさい。」
葵は五円玉を私の前に差し出す
私(…本当に買われていいのか?)
葵の手の上の五円玉をじっと見つめる
私(葵はそもそも私の死やこの場所も知ってた…それに私に対して初対面でこんなの言うなんで絶対やばい…)
葵はただじっと私を見る
葵「私はあなたに色々なものを見せてあげられる」
私「っ…!!」
葵「生かしてあげる…あなたを死なせはしないわ」
私「…」
私(でもどうせなら…もう死んだようなものだ…)
私は五円玉を手に取る
葵「交渉成立ね…」
私「1回死んだようなものだ…それに色々なものを見せてくれるんだろ?」
葵「ええ…色んなものを見せてあげるわ。約束する。」
葵はにこやかに、自信満々に言う
私
葵「これからよろしくね?」
葵は手を差し出す
私「よろしくな…面白そうだし少し付き合ってやるよ」
私は葵と握手をする