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異世界に飛ばされた殺戮者  作者: SHIO
第一章 異世界入門編
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呼び声

「リカバリー」

 エルマのおかげで再度俺の麻痺が取り除かれる。


「おい、ユミ! わざとやってないだろうな!?」

「申し訳ありません。ショウヤ様、私、弓矢を扱うなんて初めてで、こんなに当たらないなんて思いませんでした」

「それならいいんだが……」


 俺はとんでもない仲間を迎え入れたのかもしれん。

 こんなんでやっていけるのか。

 まぁ、何かあれば俺が……。


 さて、少し休憩するか。

 そういえばコイツを使ってみるかな。


「エルマ、魔導書紙の使い方ってわかる?」

「あら、ショウヤそれ買ってたのね、いいわ、教えてあげる」


 俺はエルマに魔導書紙を渡す。

 エルマはその紙を地面に置いた。


「それじゃショウヤ、この紙に手をかざして、魔力を込めてみて」

「魔力を込める……」


 俺は手をかざし、手や腕に力を込める。

 しかし、特に何も起こらない。


「あの、魔力ってどうやって込めるんですか?」

「んー、じゃあショウヤが怒る出来事を思い浮かべてみて!」


 怒る出来事?

 あまり思い出したくはないんだけど、やっぱりあれだよな……。


 手が震える。

 視界が歪む。

 あれを思い出すと、我を忘れそうになる。


 大気が揺れる。

 グリーンボア達が逃げ出す。

 数秒で魔導書紙が輝き始め、俺の身体を包む。


《魔法名『ファイヤーボール』を習得しました》


 おっ!

 本当に覚えたのか!?


「エルマ、これで大丈夫なのか?」

「たぶんもう使えるはずよ! 詠唱も思い浮かべると勝手に出てくるわ。試しに私がやってみるから見ておきなさい!」



 そう言うと、エルマは目の前の樹木を指差し、手のひらを向けた。


「我が血潮よ、熱く猛り、眼前の敵を焼き撃て、ファイヤーボール!」


 エルマの手のひらからは大きさ三十センチメートル程の火の玉が出現し、目の前の樹木を折り、焼き払った。


「うぉー、スゲー! 流石はエルマ!」

「ムムム、悔しいですが、向こうの方が一枚上手です……」

「そんなに言われる程のものじゃないわ、ショウヤも一発でできると思うわよ」


 そんなに簡単なのか?

 まぁ、初級魔法らしいからな。

 こんな所で時間をかける訳にはいかない。


 俺は目の前の樹木に焦点を当てる。

 魔力を引き出すために過去を思い出す。

 一回目よりも魔力を引き出すのに時間がかからなかった。

 おそらく慣れたのだろう。


「我が血潮よ、熱く猛り、眼前の敵を焼き……」

「ちょっと! ショウヤ! 聞いてるの、止めなさい!」


 なんだ、なんかエルマが言ってるぞ……。

 俺は目を開ける。

 目の前には、先程見た火球の百倍はあるだろうか、さらに大きくなっている。


「えっと、何これ!?」

「何これ? じゃないわよ、早く消しなさい! ここら一体吹き飛ばす気!?」


 そんなことを言われても、初めてでどうやって戻すか判らん!

 こうなれば、大きくなる前に、町とは逆方向に……。


「ファイヤーボール!」


 ドッカーン!!!


 映画や戦時中の映像で聞いた音よりも激しい爆音とともに、辺りを焼き尽くした。

 

《グリーンボアを三百四十八体討伐、アントウォーリアーを五百二十三体討伐、マジカルラビットを二百十一体討伐その他以下省略……総計千五百六十体討伐》


 あちゃー、マジかよ……。


《レベルが七十八に上がりました》

《スキル『聴覚強化』、『ディメンションゲート』、『瞬間反射』、『修羅』、『分身』、『麻痺耐性』、『魔力感知』を習得しました》


 スッゲー覚えたな……。

 それよりも、焼け野原になっちまった、どうしよう!

 

「すごいです、ショウヤ様! こんなにすごい魔法を」

「すごいじゃないわよ! どうすんのよ、狩り場消滅しちゃったじゃない!」

「いやー、その、これは魔王の攻撃だったということにしよう」

「すぐバレるわよ!」


 しかし、あんなデカイ魔法になるとは。

 どうやら俺は本当に魔力量が多いらしい。

 それは有り難いんだが、調節できないと厄介だな……。



・・・やっと見つけた、王の資質を持つものよ。

・・・妾を助けてくれ。



 くっ! 頭が痛い。

 何か声が頭の中に流れ込んでくる。

 王の資質? 助けろ?

 何を言ってるんだ。



「ショウヤ! 大丈夫?」

「ああ、エルマ、ちょっと疲れただけだよ」


 それにしても今のはなんだったんだ。


「あっ!? 見てくださいショウヤ様! あそこに扉みたいなのがありますよ」

「えっ!?」


 そんなわけないだろ。

 こんな焼け果てた大地の真ん中に扉なんて……。


「本当だわショウヤ、これ扉よ、もしかしたらダンジョンかも」

「てっ、マジで有るんか~い!」


 何これ、地中に埋まってたのか。

 隠しダンジョンなんじゃねぇ。

 草原吹っ飛ばしたら出てくるなんて、誰も見つけられねぇよ。

 製作者出てこいってんだ。



「ショウヤ様! 入ってみましょうよ」

「ちょっと待った! ユミ!」


 たく、レベル上げのつもりが、とんだダンジョン攻略になりそうだな……。

「スキル『空間把握』!」


 俺の声とともにエコーを飛ばし、ダンジョン内の立体的な地図が頭の中に浮かび上がる。

 これはほぼ一本道みたいだな……。

 いくつか部屋みたいなのがあるが、そんなに広くない。


「よし、入ってみよう」


 俺達三人は扉の中に入った。

 中には所々に光る鉱石があり、数メートル先の視界は確保できた。



「宝箱とか探せよ、ユミ!」

「はい、ショウヤ様、隅々まで抜かりなく」

「何やってんのよあんたたち……」


 何って、ダンジョンって言ったら探索だろ。

 宝箱があって、奥にはボスがいて、さらに報酬が。


「はぁ、悪いけど使えそうなのはこの鉱石ぐらいね」

「えっ! 剣とか鎧とか用意されてるんじゃないの!?」

「誰がそんなもの用意すんのよ……」


 まぁ、確かに言われてみれば、現実に置き換えると不思議な話だな。

 ダンジョン攻略ってあんま意味ないんじゃね?

 もうすぐ終点だってのに。


 終点手前に一つ、六畳くらいのスペースがあった。

 俺達はそのスペースに入ろうとした。

 すると目に見えない壁に阻まれた。


「なんだこれ、通れないぞ」

「魔法かしら、でもこんな結界見たことない」


 俺達は目を凝らして、奥の部屋の状況を見ようとする。

 そこには、横になり、半裸でくつろいでいる中肉中背のおっさんが横になっていた。


「誰だ、あのおっさんは!?」

「なんだ、久しぶりの人間だな、お前らもあのクソ女にやられたのか!?」


 ん?

 何のことだ?

 おっさんの問い掛けは訳がわからない。


「俺はもうここから出る気はねぇんだ、あっち行ってろクソども!」


 この結界はこいつが張ってるのか。

 しかし初対面でいきなりあっち行けって。

 尖ってるなこの人。


「ショウヤ様、こんな人ほっといて先に行きましょ!」

「そうよ、行くわよショウヤ!」


 あらら、女性陣は我慢できませんか。

 しょうがない。


「じゃあ俺達先に行きますね!」

「・・・」


 まぁ、いいか。

 しかし、あのおっさん、何かに怯えているように思えたな……。



 そこから間もなく終点に俺達は着いた。

 開けた空間に柱があり、そこには何かが張り付けにされている。


「俺が見てくるから、二人はここに居てくれ」

「わかりました」

「わかったわ」


 俺は柱を見に行く。

 そこには中学生、いや小学生?

 そのくらいに幼い幼女が張り付けにされている。

 生きているのか?



・・・来てくれて礼を言う。

・・・妾をここから救ってくれ。



 なんだ、また頭に直接聞こえて。

 激しい耳鳴りとともに、俺は膝をつく。


 その時、暗い空間におよそ五メートル程の像があることに気づいた。

 像の目が赤く光る。


「シンニュウシャハッケン、コレヨリハイジョシマス」

「あらー、これがボスって言うわけね……」





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