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異世界に飛ばされた殺戮者  作者: SHIO
第二章 暴龍撃退編
18/20

龍の操者

 さて、俺達は今帝都で馬を借りて、フーレス村へ向かっている。


「いいもんだろ馬も! この馬の鐙には魔法で馬を簡単に操るようにしてあるからな! 乗馬に親しみがない日本人でも簡単に乗りこなすってわけだ!」

「え~? タクヤさんーーー、何か言いましたか!?」

「だからーーー、この鐙には! いや、やっぱいいわ……」


 あと少しで到着する予定なのだが、至るところに魔物の死骸が横たわっている。

 なんかもう、ラスボス手前のダンジョンみたいなんすけど!?


「皆さん! 魔物っすよ! 構えてくださいっす!」

「よっしゃ来た! さぁ出番だショウヤ!」

「また俺っすか!」

「お前が一番魔力もってんだから、俺達は温存だよ!」

「ぐぬぅ、俺を連れてきた理由が分かりましたよ!」

「ファイヤーボール!」


 少し小さめのファイヤーボールは魔物を焼き払う。

 

「いや~、しかし何体目ですかね、魔物も」

「そうだな、確かに馬で走っててこのペースは異常だな」

「まるで、まものが何かから逃げてきてるみたいだわ」



 そうこうしている内に、村らしき影が見えてくる。


「あそこ! フーレス村っすよ!」

「あれが……」

 いたって普通の村にみえるが……


 フーレス村へ到着する。

 そこには暴龍に襲われたと思えないほど、村人達が普通に暮らしていた

 

「すみません、私達は帝都から派遣されてきた冒険者です。ドラゴンに襲われたと聞いて駆けつけたのですが?」

「あぁ~、やっと来たかい! 助けてくれよ! 俺達は今脅されてるんだよ!」

「落ち着いてください、いったい何があったんですか?」


 普通に見えた村人が、緊張の糸が切れたかのように怯え始めた。


「おら達の村に急にドラゴンが現れて、村の外れを焼きはらったんだけど、そのドラゴンは畑や家屋は破壊せずに、中にある農作物や肉などの食糧だけをかっぱらっていきやがったんだ。最後に人語を介して、『十日後にまた来る』といって逃げていったんだ。だからおら達は、仕方なく食糧を準備してたんけだ」


 暴龍と聞いて既に村は壊滅かと思ったが、随分ズル賢いドラゴンが居たことだな。

 また十日後か……、ん?


「ちょっと待ておじさん、十日後に来るって、あと何日だ?」

「んだ、明日だよ」


 やっぱりね……。


「よし、これから俺達はドラゴンどもの巣を探して、奇襲をかける。明日迎え撃つにしても、相手の情報が欲しい」

「よっしゃ、ここはオイラの出番ですね!」

「おぅマサト、いつもの宜しくな」


 これはまさか、強力な探敵スキルなのか。

 Aクラスの冒険者のお手並み拝見だな。


 マサトは槍を地面に立てた。


「ドラゴンは、ど~っちだ!?」


 槍が地面に倒れる。

 槍の矛先は、俺らが来た道と真逆を指す。


「よし! みんな、こっちっすよ!」

「でかしたぞ、マサト!」

「運任せかよ!!!!!!」


 この人達はまさか、ふざけてるのか!?


「まぁまぁ、これもスキルの内だぜ」

「そぉっすよ、だいたい八割で当たるっすよ!」

「二割外れてんじゃねぇか!!!!!」


 と、突っ込んでみたが、当てがないのでとりあえず向かう。

 一時間程経った頃に、森に開けた場所が。

 そこには、石で造られた遺跡の様な建築物があった。


「ビンゴっすね!」

「本当に当ててるよ……」


 遺跡の前には、ドラゴンが六体並んで寝ている。


「どうするんですかタクヤさん、あれを倒せばいいんですか?」

「いや待て、まだ様子をみるんだ、むやみに喧嘩売るなよ」


 しばらくすると、向こうからドラゴンが二体飛んでくる。

 頭の上には、人影が三人見えた。


「タクヤさん、人ですよ」

「あぁ、分かってる。まさかとは思ってたが、どうやらアイツらがドラゴンを操ってるらしいな」


 三人は遺跡に入っていく。

 

「よし、俺達も入るぞ」

「相手の陣地ですよ、大丈夫ですかね……」

「まぁまぁ、何事も経験だぞショウヤ」


 ドラゴン達は特に何もしてこない様だ。

 その間に遺跡の入り口まで行く。


「よーし! ショウヤが先頭で、俺が後ろを守る」

「タクヤさんが先頭じゃないんですか!?」

「ばーか、こういうのは後ろが肝心なんだぞ! ショウヤ、お前もまだまだだな~」

「ムムッ、分かりましたよ! おれが先頭でいけばいいんでしょ!」


 それから、俺を先頭にパーティは進む。

 道中は、槍が降り、岩が転がり、底が抜けたりしたが、俺の『空間把握』のスキルの前では丸見えだな。


「さっすがショウヤだな、そのスキルも警戒も一人前の冒険者だ」

「ショウヤ様は凄いんですよ! 強いし、カッコいいし、助けてくれるし」


 しかし拍子抜けもいいとこだな。

 ドラゴンなんて従えているから、もっと大人数で居るかと思ってたけど、『魔力感知』で魔力を探ってみるが、おそらく三人しかこの先には感じ取れない。


「タクヤさん、この先……」

「あぁ……わかってる、三人だな」

「どうしますか? 捕らえますか?」

「よし、俺は奥の奴を押さえるから、ショウヤと皆で残りの二人を頼む」


 手前の二人。 

 見るからにゴロツキって感じだが、奥の奴は転移者か?

 顔は見えないな……。


「行くぞ!」

 

 その瞬間、タクヤさんは超スピードで敵との間合いを詰めていく!


「なんだ!? 侵入者か? いったいどっから!?」

「今頃気づいても遅せーんだよ!」


 俺、エルマ、ユミで一人。

 マサトさんとサヤカさんで一人を迎え撃つ。


「さぁ大人しく白状するんだな! どうやってドラゴン達を操ってた!?」


 タクヤさんの剣が相手に振り下ろされた時、相手の顔が見えた。

 剣がピタッと止まる。

 剣が震える。

 いや、手が、足が、顔が震えている。


「タクヤさん?」


 タクヤさんは全く動かない。

 いや、動けない。

 凄い汗だ。


「これはこれは……先生じゃないですか! いや、お久しぶりです。あなたも此方へ来ていたとは……つまり死んだということですか?」

「ケ…イ……タ、ケイタなのか?」

「なんですかその幽霊でも見るような顔は? 僕の顔を忘れたんじゃないでしょうね? 私はあなたの顔を一時も忘れた事がないのに……」


 タクヤさんはそのまま膝から崩れ落ち、剣を放る。


「タクヤー! いったいどうしちゃったのよ!」

「そうっすよ! いつものようにサクッと終わらして下さいよ!」

「ショウヤ! なんかあっちヤバそうよ」

「ショウヤ様、コイツ、割と強いですよ」


 エルマとユミは何とか二人で戦えてる。

 タクヤさんに気を取られて、先輩二人の連携が乱れてるな。

 最善の策は……


「ユミ、エルマ、悪い! ちょっと二人で頑張ってくれ」

「うん、その方がいいかも!」

「ユミも頑張ります!」


 さぁて、急ぐか!

 足に魔力を溜める。

 大丈夫、この一週間魔力に慣れたんだ。

 土壇場で間違えるなよ……


「ふん、何も言えないか……そりゃ言えないよな! 見殺しにした奴なんかに言葉はでないよな~くそ教師! アイツらの代わりにお前も殺してやるよ!」

 タクヤに今度は剣が振り下ろされる!


 それと同時に、爆発音が部屋に響きわたる。

 音の発信源では、地面が抉れ、その衝撃が後ろの壁を破壊する。


 剣が振り下ろされたのは、それよりも小さい短剣の元だった。


「なんだ貴様! 一瞬でどうやってここへ?」

「魔力コントロールさ」


 剣を振り払い、タクヤさんを連れ、一度中央まで戻る。


「タクヤさん! どうしたんですか! 起きてくださいよタクヤさん!」

「どうやら厄介なくそ野郎がもう一人いたみたいだな」

「お前、タクヤさんに何をしたんだ?」

「別になにも、そう……僕たちはお互いにな~んにもしちゃいないんだよ」

「タクヤさん! 正気に戻ってください!」

「全く面倒だな……そういえば、これがあったな。これを試そう」


 そういうと奴はポケットから怪しげな道具を取り出し、上へ投げる。


「魔盗の鳥籠!」


 道具から光が俺達を包み、あっという間に鳥籠の様に閉じ込められた。


「なんだこれは?」

「ソイツは閉じ込めた者の魔力で作られている。そこに居続けたら、明日には魔力欠乏で死ぬだろうね。最も厄介なところは、中の者の全員の魔力で作られてるから、その魔力総量以下の魔力攻撃では壊せない所だね」


 なんだそりゃ……

 魔力を吸い取られて明日には死ぬ。

 俺達全員の魔力を一度にぶつけても壊れることはない。

 既に八方塞がりじゃないか……。


「そこで怯えながら明日を迎えるがいい。悪いが僕達は行かせて貰おう」


 三人は部屋を出ていく。

 俺達は、何とか鳥籠に抵抗してみたが、奴が言うようにびくともしなかった。

 

「チクショー、これじゃ埒があかないな」

「一つだけ方法があるとしたら、やっぱりタクヤね」

「サヤカさん、タクヤさんなら何とかできるんですか?」

「当たり前っすよ! タクヤさんにできない事はほんの少ししか無いんすから」

「お……い、マサト……それ…フォローになって……ねぇぞ」

「タクヤ! やっと正気に戻ったのね!」

「悪いなお前ら、少し生前の発作が出ただけだ」


「しかし、アイツは誰なんですかタクヤさん? 知り合いみたいでしたけど?」

「あぁ、それを含めて皆に聞いて欲しい事がある。マサトとサヤカにも言ったことが無かったよな……」

「……」


「これはこっちに来る前の、一人の平凡な男の話だ」







 


 







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