プロローグ
小さい頃から叶えたい夢が私にはあった。それは、魔法少女になりたいというものだ。
空を自由に駆け回り、鮮やかな魔法で敵を倒す。時には辛く悲しい出来事もあるけれど
仲間との友情でどんな困難も乗り越える。
やまない雨はないし、明けない夜もない。最後は必ずハッピーエンド。
女の子なら誰しも1度は、テレビに映るそんな魔法少女の世界に魅入られたことだろう。
けど、私が魔法少女に憧れていたのは、それだけが理由じゃない。
私は昔、実際に魔法少女に助けられたのだ。
なのに、親も友達も「夢でも見たんじゃないか」と言って誰も信じてくれない。
確かに私自身記憶が曖昧なのは確かだ。現に助けられたと言っても、一体自分はどんな状況にいて、どう助けられたのか、あまり覚えていない。
迷子だった自分を親の所まで案内してくれたのか、失くし物を一緒に探してくれたのか
はたまた何かに襲われているところを救ってくれたのか。
その内のどれかだったような気もするし、どれでもなかったような気もする。
そもそも、どうして私はその人を魔法少女だと思ったのかすら覚えていない。
ただ、あの時、私を救ってくれた彼女の特徴的なピンク色のハートのカチューシャとメッシュだけは今でも忘れられない。
中学、高校は私立の学校を選び、私は中学に入学以降その魔法少女の話を周りの友達に話していないから、
今、私の魔法少女話を知っている身近な友達は、幼稚園の頃から小、中、高と全部同じ学校に通っている
幼なじみ1人だけだ。
もちろん、その幼なじみも私の話を信じてはいないけれど。
しかし、誰にも話さなかっただけで、私は高校に入学した後も魔法少女になるという夢を持ち続けていた。
と言っても、それはもはや少女がアイドルに憧れる程度の気持ちだった。
自分が本当に魔法少女になれるなんて思っていなかったし、特に魔法少女になるためのトレーニングをしていたわけでもない。
そうは言っても、中学に通っていた頃は自分が見ていた魔法少女物のアニメの主人公の真似をしたり、訳もなく町を出歩いて主人公に魔法少女の力を与えるマスコット的存在を探したりしたのは事実だ。
それでも、高校受験で忙しくなってきた頃から段々とそういった行為も減っていき、高校に入ってからは一切していないのも、また事実だ。
今でも続けている事と言えば毎週日曜日は午前8時半には必ずテレビの前に座ることぐらいだろうか。
だから、こんな日が来るなんて全く思いもよらなかった。
『まさか私が本当に魔法少女になるなんて』