第126の宴 ゲームオーバー
王の間に入るルミリアンとオルフェノス。
玉座にはハルトが座っていて、その後ろにレルミーが立っている。
「遅かったな・・・。
残ってるのは二人か。
やはりエルフは大したことないな。」
「何じゃと!?
訂正しろ!!
妾の部下とダークエルフ達は皆妾のために立派に役目を果たしたのじゃ!!」
「そうだ・・・!
我が部下達のお陰で俺達はここにいるんだ。
俺は部下達を誇りに思うぞ!!」
「はん!
何を言うかと思えば・・・
貴様らが王がだらしないから部下たちを失ったのだろう?
貴様らがもっとしっかりしていれば、ここにはもっと沢山のエルフ達が来れた筈だ。
クソ上司をもつエルフ達が可愛そうだな。」
「そうね。
私達はご主人様が頼りがいがあるから全然苦労しないわ♡」
「エルフちゃん達もご主人様の元で働いたほうが幸せになるよね!」
「クズ上司はいないほうがマシですぅ!!」
「く、クズ上司じゃと!?」
「俺のことをクソだとぉぉぉ!?
てめぇぇぇ!!
巫山戯るなァァァァァァァァ!!」
《ハイスピード&ハイパワーブーストォォォ!!》
「くらぇぇぇぇぇ!!!」
オルフェノスはもの凄いスピードでハルトまで肉薄し、ハルトの頬を殴りつける!!
「ご主人様!!」
オルフェノスは渾身の一撃をハルトに食らわせたが・・・!
「それで終わりか・・・?」
「なに!?俺のハイパワーブーストを喰らわせたはずなのに!!」
「少し痛かったぞ・・・。
なかなかやるじゃないか・・・。」
オルフェノスの渾身の一撃も今のハルトには全く通用しなかった!!
「な、何故だ!?」
「そんなの簡単だ・・・。
貴様が弱いからだよ・・・。
弱い力を飛躍的に上げようと、元が弱いのだから仕方ないだろう・・・?」
「そんな・・・!」
「まあ、我に血を流させたのは褒めてやろう。」
少し口を切って口から血が出ているハルト。
「きゃぁぁ!!
ご主人様の口から血が・・・!!
このォォクソエルフがァァァァァ!!
よくも私のご主人様に血を流させたわねぇぇぇぇぇ!!!
ぶっ殺ォォォォォす!!」
レナがキレてオルフェノスに最大風魔法を喰らわせようとするが・・・!
「まて、レナ。
俺なら大丈夫だ。
その魔法を使ったら契約切るぞ?」
「うっ!!」
直様、魔法を解除するレナ。
「さてと・・・我に攻撃をしたということはそれなりの覚悟があってのことだろう・・・?」
「覚悟だと・・・!?」
次の瞬間、ハルトがオルフェノスの腹に一撃を喰らわせる!!
「ぐはぁぁ・・・!!」
「貴様が終焉を迎える覚悟に決まっているだろう・・・?」
バキッ!!
ハルトはオルフェノスの顔面を殴り、壁までふっ飛ばされる!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドガァァァン!!
「オルフェノス!!」
ルミリアンはオルフェノスの元に駆けつける!
「大丈夫か!?
今回復魔法を施すからな!」
《エクスヒール!!》
オルフェノスの体力が徐々に回復する・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・
な、なんて強さだ・・・
俺ではあいつに勝てない・・・」
ハルトの強さに意気消沈するオルフェノス。
「そんな・・・!」
「くっくっくっ・・・さっきの威勢はどうした・・・?」
「うう・・・!」
「我から城を取り戻すのであろう・・・?
我を倒さぬと城は戻って来ないぞ・・・?」
「うるさいのじゃ!!
妾の城はちゃんと取り戻して見せるのじゃ!!
頑張ってくれた部下たちの為に!!」
「部下達の為・・・?
笑わせるな!!
貴様は自分が楽な生活に戻りたいから言ってるのであろう・・・?」
「そ、それは・・・!」
「そこのダークエルフ・・・貴様もだ。
好きなやつを振り向かせようと、作戦を部下に丸投げし、自分は何もしない。
結局、部下のクソみたいな作戦のせいでエルフ達は城を追われ、貴様は見事恨まれる。
本当にマヌケなやつだな・・・。」
「ど、どういうことじゃ!?」
「貴様はこいつの馬鹿な部下のせいで一年も城から追い出されたんだよ・・・。」
「はぁぁ!?
オルフェノス!!説明せい!!」
「・・・俺は・・・昔からお前のことが好きだった・・・。」
「わ、妾のことを!?」
「・・・お前に何度、好きだと伝えようとしたか・・・。
しかし、俺には勇気がなかった・・・。
お前に振られるのが怖かったんだ・・・。
だから、ジークとケリーに相談をした・・・。
そして、ジークに作戦を考えて貰ったんだ・・・。
お前は昔、俺に強い男が好きだと言っていた。
だから、ジークは城を乗っ取る強さを見せつければ、お前は俺に振り向いてくれると言った。
俺は何も考えずにその作戦に乗ったんだ。
乗っ取った後は俺の強さに惚れて城にやってくると思っていた・・・。
一年間、ずっとお前を待っていた・・・。
恨まれているとは知らずに・・・。
この一年間、本当に申し訳ないことをした・・・!
許してくれ!!」
オルフェノスはルミリアンに土下座をする。
「・・・巫山戯るな!!
そんなくだらない事で妾とエルフの皆は・・・!
この一年間、どんだけ苦しかったかお主はわかるか!!」
「うう・・・」
「・・・ルミリアン・・・貴様は何を言っているんだ・・・?」
「なんじゃと!?」
「貴様は何を苦しんだんだ?
城を追われ、隠れ家に住んでいても貴様は我儘放題・・・。
挙句の果てに女王なんてやりたくないと放棄しようとしてたではないか・・・。
一年間苦労した?
狭い部屋に住むのが苦労なのか?
好きなものが食べれないのが苦労なのか?」
「それは・・・」
「城に戻りたいなら何故取り返そうとしない?
部下たちはお前の言葉をずっと待っていたのではないか?
確かにダークエルフとエルフとでは力の差がある。
しかし、皆で協力すれば少しは抵抗できたのではないか?
結局、貴様もオルフェノスと同じ、人任せだ。
そんな貴様にオルフェノスを責める権利はない・・・。」
「だって妾には・・・力もなく・・・」
「力がなければ許されるのか?
何故、力をつけようとしない?
ただ甘えているだけだろう?」
「うう・・・。」
「やはり、我が貴様らを奴隷とし、エルフの王になった方がいいな・・・。
我のほうが貴様らよりいい王になれるぞ・・・。」
その時、王の間の扉が開かれる!!
扉を開けたのはジークだった。
「ジーク!!」
「・・・」
「どうしたのじゃ・・・?
サブリナ!ルーン!!」
「・・・」
「様子がおかしい・・・?」
「くっくっくっ・・・
お前たちの部下は我が妻が洗脳した!!」
『せ、洗脳・・・!?』
「私のユニークスキルよ!!
私達が貴女達の部下をボコボコにした後洗脳させてもらったわ!!
これでこの者達はタナトスの手下よ!!」
「そんな・・・!」
絶望でその場に崩れ落ちるルミリアン。
「安心しろ・・・
貴様も直ぐに洗脳してやる。
俺の忠実な下僕にしてやろう・・・。
貴様には性処理でも頼むとするかな・・・」
「ルミリアンに貴様の正処理だとォォォ!?
巫山戯るな!!」
再び、ハルトに襲いかかろうとするオルフェノス!!
しかし・・・
《不動の魔眼・・・!》
「ぐっ!!動けねえ・・・!」
「調子に乗るなよ・・・?
貴様如きなんて直ぐにでも殺せるのだぞ・・・?」
「うう・・・サブリナ!ルーン!!
頼むから戻って来るのじゃ!!
今まで我儘ばかり言って済まなかった!!
これからは妾が女王としてちゃんとするのじゃ!!
エルフの名に恥じない立派な女王となることを誓う!!
だから・・・!
妾の元に戻ってきてくるのじゃ!!
この通りじゃ!!」
ルミリアンは洗脳された二人に土下座する・・・!
「・・・言いましたね?」
「へ?」
「私も確かに聞きましたぞ・・・。」
「えっ!?」
「もう我儘は許しませんからね!!」
「これからは女王としてしっかりとして貰いますからね!!」
「どういうことじゃ!?
お主達、洗脳されてたんじゃ・・・!?」
「俺たちも聞きましたよ!!」
ルミリアンが振り向くとそこには脱落したルミリアンの部下達がいる!
「女王様がやっとやる気になってくれた!!」
「これでエルフ国は安泰だ!!」
「女王様バンザーイ!!」
「お主たち!?
何故ここに!?」
「全ては神の使者様の作戦だったのです!!」
「作戦じゃと・・・!?
どういうことじゃ!タナトス!!」
「くっくっくっ・・・
これは全て、貴様にやる気を出させるための作戦だ・・・。
貴様は我が今まで見てきた王の中で1番クソだったからな・・・。
自分が楽するために誰でもいいから子を産んで、生まれた子に丸投げしようとした罰を与えると同時に、エルフの女王としての自覚をさせる為に、敢えてこの城を占拠した。
我を倒すとなると貴様は諦めそうだったからな。
だから、ゲームと称して貴様をここに誘き寄せた。
まあ、ゲームとしては中々楽しませて貰ったぞ。」
「うう!そんな・・・!」
「ルミリアン!!
お前・・・誰でもいいから子供をって・・・!」
「妾には男の知り合いなんていないからな・・・。
その時はそう思っただけじゃ!」
「俺がいるじゃねえか!!」
「はぁぁ!?
お主は城を奪った敵じゃろうが!!
そんな奴の子を産もうと思うか!!」
「うう・・・!確かに・・・。
そのことは謝る・・・。
俺が馬鹿だった・・・。
だが、これだけは言わせてくれ!!
俺はお前を昔からの愛している!!
お前の我儘も全て受け入れる!!
だから・・・俺と結婚してくれ!!」
「け、け、け、け、結婚!?!?」
「遂にあのヘタレ王が告白したわ!!」
「何だ、ちゃんと言えるじゃないですか!!」
「王が遂に言ったぞ!!」
盛り上がるダークエルフ達!
「頼む・・・!
俺にはお前しかいないんだ・・・!」
「・・・馬鹿者!!
そ、そんな簡単にけ、結婚なんて出来るわけないのじゃ!!
そ、それにまだ妾はお前のことをゆ、許してないぞ!!」
言葉とは裏腹に顔を赤くしているルミリアン。
「やはり・・・そうだよな・・・。」
落ち込むオルフェノス。
「ルミリアン様!!
どうかオルフェノス様を許してやってください!!
この馬鹿な作戦を考えたのは俺なんです!!
だから、悪いのは俺です!!
オルフェノス様は悪くないんですよ!!」
ジークがルミリアンに訴える!
「双子の片割れ・・・!」
「いや、悪いのは俺だ。
お前に作戦を丸投げした俺が1番悪いんだ・・・。
ルミリアン、悪かった・・・。
許せないのは当たり前だよな・・・。
だから、もうこれでお前を忘れる・・・。」
「えっ!?」
ルミリアンがショックを受ける・・・。
「オルフェノス様!?
本当にいいの!?」
「ああ。
全ては俺の心が弱かったせいだからな・・・」
落ち込んだオルフェノスにルミリアンが胸ぐらを掴み、涙目で話す。
「・・・お主・・・一度振られた位で諦めるほどの想いじゃったのか・・・?」
「え・・・!?」
「本当に妾のことが愛しているなら、一年かけて無くした信用を何年かけても取り戻してみろ!!
お主のことを心から信用出来ることが出来たら・・・!!
その時は結婚を考えてやらんでもないぞ・・・。」
顔を赤くして、どんどん声が小さくなるルミリアン。
「ルミリアン・・・!
そうだよな・・・。
諦めることなんて出来ねぇよ・・・
俺は世界で1番お前を愛している!!
だから、必ずお前の信用を取り戻す!!
勿論、今度は己自身の力でだ!
それまで待っててくれるか・・・?」
「・・・ふん!
期待しないで待ってるからな・・・。」
『ウワァァァァァァァァァァァ!!!』
エルフとダークエルフの歓声が城に鳴り響く!
もうそこにはエルフとダークエルフの壁などなかった。
皆が肩を組みあい、祝福する!
正式ではないが、この瞬間・・・
エルフとダークエルフの和睦が結ばれた・・・。
が・・・。
「感動しているところ悪いが、まだゲームは終わってないぞ・・・?」
『えっ!?』
エルフたちが唖然とする・・・。
「やっぱりきたぁぁぁ!!
ムードクラッシャー!!」
「ご主人様ならやると思ったよー!!」
「そろそろ来ると思ってたですぅ!!」
「絶対やると思ったにゃん!!」
「もう期待している私がいたわね!」
「あはは★
タナくんおもしろ~い☆」
くっ!こいつら!!
「まだゲームは終わってないだろう?
ここのクリア条件は玉座に座ること。
お前たちはまだ座っていない。
勝手に終わらすな・・・。」
「そうじゃったな・・・
妾が必ず座ってみせるのじゃ!」
「出来るものならやってみろ・・・。」
その時だった・・・。
ガシッ!!
「女王様!!
今のうちですぞ!!」
「私達が抑えますので!!」
「座れ!!ルミリアン!!」
「皆!!神の使者を抑え込め!!」
「全員で止めるわよ!!」
『ウオオオオオオオオオオオ!!!』
エルフ達がハルト達を囲む!!
「み、皆!!」
ルミリアンは走り出す!!
そして、ルミリアンが玉座に座り込む!!
「皆・・・感謝するのじゃ!!
タナトスよ・・・!
このゲーム、我々の勝ちじゃ!!」
『ウオオオオオオオオオオオ!!!!』
その瞬間、ルミリアンは見事に城を奪い返すのであった・・・!
続く・・・。
本日もお読み頂きありがとうございます!
この後、2年かけてオルフェノスはルミリアンを振り向かすことが出来ました。
王同士の結婚により、エルフ国は統一されエルフとダークエルフは仲良く暮らすことになりました。
因みに、この二人より先にサブリナがジークと、ルーンがケリーと結婚したのも、ルミリアンがオルフェノスと結婚するきっかけにもなりました。(ルミリアンが二人に先を越され焦った為。)