第109の宴 忘れ去られていた獣人
空間魔法により王都にたどり着いた俺達。
ここで新たに店を出店してくれる者を探す。
「先ずはリサーチをしよう。
どんなものがあるか、どんなものが売れているかを検証しよう。」
「それはつまり、お買い物!?」
「わあい!久しぶりのお買い物だぁ!」
「洋服屋探すですぅ!」
「いいわね!
新しいの欲しいと思ってたのよね!」
「王都でお買い物にゃんてワクワクするにゃん!」
「タナくーん♡
ルーシーちゃんもお洋服欲しいなぁ♡♡」
「こら、お前たち!
別に洋服を買いに来たわけじゃないぞ!
今日は洋服なしだ!」
『えぇぇぇぇぇぇ!!』
女性軍のブーイングの嵐・・・
「・・・お前ら・・・ここに何しに来たかわかるよな・・・?」
ドス黒いオーラがハルトを包む!!
『はい!申し訳御座いません!!』
「全く・・・。
今、あの施設にないものは飯屋。
いろんな飯屋を一つにまとめてフードコートを作りたい。」
『フードコート?』
皆が首を傾げる。
「飯屋を一箇所に纏める場所の事だ。
食べ物の好みなんて皆それぞれだろう?
だから、飯屋を一箇所に纏めて好きなものを買って皆で食べられる様にするんだ。」
『成程!!』
「あとは薬屋とか道具屋・・・子供の為のおもちゃ屋なんかもいいな。
それに魔法道具や本屋も欲しいな。
勿論、食材も売る店もほしいな。」
「お店がいっぱいあって楽しそうだね!!」
「でも、服屋さんはあの店だけなのね。」
「でも、あの服に勝てる店なんてないんじゃないの?」
「そうにゃんねぇ・・・
どの服屋にもにゃい可愛さだにゃん!」
「ルーシーちゃんもあの服気に入ったわ♡」
「確かに服屋があれだけじゃつまらないな。
たまにはシルビアに絶望を味合わせてもいいかもなぁぁぁぁ・・・くっくっくっ!」
(またご主人様が悪い顔になってるわ・・・)
(絶対に何か企んでる顔だ!)
(これは面白くなりそうですぅ!)
(絶対に悪いこと考えてるに違いないわ。)
(タニャトスのあの顔は何か不思議にゃことが起きる時にゃ!)
(うふふ★
悪い顔のタナくんも素敵☆)
((まあ、新しい服屋が出来るならいっか!!))
服屋のためなら何も言わないハルトガールズであった。
ちょうど昼時だってこともあり、俺達は飯屋を探す。
この世界のご飯は意外と前の世界の物とあまり変わらない。
白飯だってあるし、調味料だってある。
前に読んだ異世界モノみたいに新しい料理を作り出し、革命を起こす!なんてことは出来なそうだ。
てゆーか、俺飯作れないしな。
だから食べ物で名産を作るというのはかなり難しい。
飯が作れない俺には作り方も知らないし、教えることも出来ない。
とりあえず、フードコートには丼もの、うどんやラーメン等の麺類、寿司屋なんかもいいな。
あ、この世界に寿司屋なんてなかった。
てゆーか、魚はあっても川魚っぽいものばかりだ。
あ、そうか。
この世界には船なんてないから海で魚をとる習慣がないのか!
俺にも新たな(?)料理を生み出せるかもしれないな!
あとはジャンクフード屋もありか?
あ、ハンバーガーなんかもこの世界になかったな。
まあ、ハンバーグはあるし、パンに挟むだけだもんな。
これも作れるな!
「ところでどうやって人を集めるのかしら?
王都でお店を出してるのだから、わざわざ新しい場所に行かなくてもいいんじゃないかしら?」
「確かにそうなんだよな・・・。」
俺が悩んでいると一人の獣人が声をかけてくる。
「タナトス様!!」
「ん?」
「お久しぶりコン!」
「お前は奴隷商の・・・」
「フォクサーです!!」
「フォクサーか。
何をしてるんだ?」
「嫌だな、タナトス様!
あれから奴隷商を畳んでタナトス様が新たに開くと言われた店の為に動いてたに決まってるコン!」
「俺が開く店のため・・・?」
「そうですコン!
言ってたじゃないですか!
店を開くから私に任せると!」
「あ!!」
忘れてた!!
そういえば言った気がする!!
「あ!って・・・まさか忘れてたわけじゃ・・・」
「我は神の使者だぞ・・・?
忘れるわけなかろう!!」
「そうですよね!!」
(絶対に忘れてたわね。)
(あの〈あ!〉は絶対に忘れてたね!)
(ミーナもこんな狐すっかり忘れてたですぅ!)
(神の使者って言えば大丈夫だとか思ってるのかしら・・・。)
(あたしも完全に忘れてたにゃん・・・。)
(忘れてるタナくんも素敵♡❳
「因みにどんな準備を?」
「はい!
タナトス様の為に店を開きたいという者達を集めておきました。
タナトス様ならきっといろんな店を出してくれると思って!!」
「なんだと!?
何人集まったんだ?」
「へい!
ざっと三十人は集めました!!
飲食店を開きたい者、道具屋を開きたい者、武器屋を開きたい者他、色々いますよ!!」
「でかした!フォクサー!!
早速呼んできてくれ!!」
「はっ!
仰せのままに!!
ここでお待ち下さいコン!」
フォクサーは颯爽と走り出す。
「良かったね!ご主人様!」
「ああ。
手間が省けたな。」
「あとはその人達が使えるかどうかね。」
「まあ、フォクサーはがめついが接客はちゃんとしてたしな。
変な奴は連れてこないだろう。」
そして、十分後・・・。
「お待たせしましたコン!
私が選び抜いた三十人です!」
『宜しくお願いします!!』
どの獣人もお店を持てるという期待に満ちた目をしていた。
「王都では店が溢れていてこの者達は店を開くことができないコン!
腕は確かですが、場所がないことには・・・。」
「なるほどな。
場所はすでに用意してある。
あとはお前達がどんな店を開きたいかだな。
先ずはその場所に向かおう。
ついでにそこに住んでもらうことになる。
荷物をまとめて、王都の外に集まってくれ!」
『はい!!』
「あの・・・タナトス様・・・」
一人の獣人が話しかけてくる。
「ん?なんだ?」
「家族も連れて行ってもよろしいですか?」
「もちろんだ。
ちゃんと店の上を家にしてやる。
他の者も連れていきたい者がいれば連れてこい。」
『ありがとうございます!!』
商人志望の者達は家に戻り、支度を始める。
「フォクサー、お前は俺が創った施設の管理人を任せる。」
「か、管理人!?
私がですか!?」
「そうだ。
お前は戻って奴隷商人。
人を扱うのはなれているだろ?」
「あ、ありがたき幸せコン!!」
「施設の経営や従業員の給料などの管理を任せる。
・・・悪いことはするなよ・・・?」
「そ、そんな滅相もありません!!
もう、あのようなことは決してしません!!」
(そんなことしたらタナトス様に殺されるコン!!)
「まあ、次あんなことになったらご主人様から拷問よね!」
「そうだねー!
あれはやばいよねー!」
「死んだほうがマシですぅ!!」
「ヒィィィィィィィィ!!
私は心を入れ替えたので!!」
「人はそう簡単に変わらないわよね。」
「仲間を捕まえた悪いやつにゃん!
また悪いことするにゃん!」
「キャハハ☆
先に拷問して言うこと聞かせたほうが良いかも★」
「ヒィィィィィィィィ!!
それはご勘弁を!!」
そして、昼飯を挟み、一時間後。
王都の前に商人希望が集まる。
「集まったな。
どんな店を開きたいかあっちで聞くからな。
ミーナ、頼む。」
「はいですぅ!」
ミーナは空間魔法を展開する!
その中に入っていくと目の前に凄い施設が・・・。
『すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
一同全員驚愕!
「た、タナトス様!!
貴方は凄いお方だと思いってましたが、まさかここまでとは!!」
「ここに大型のショッピングモールを創る。
場所はいっぱい開いてるぞ。
先ずはお前たちがどんな店を開くか聞いていこう。
それにあったこともない店を創る。」
「こんな沢山の店・・・結構時間かかりますよね!?
費用も・・・!」
「店なんて一瞬で創れる。
しかもタダだ。」
「た、タダで一瞬に!?」
「この中で武器屋や防具屋を開きたいものはいるか?」
二人の獣人が手を挙げる。
「じゃあ、武器屋と防具屋で分けてもらうぞ。
あそこがいいな。」
工房の近くの空き地に向かい、スキルを発動する。
《クリエイトアイテム!!》
目の前に一瞬でお店が立ち並ぶ!!
『ギャァァァァァァァ!!
ホントに一瞬だァァァァァァァ!!』
「な?言っただろ?
どっちがどっちをやるかは話し合ってくれ。
武器と防具は後ろの工房で作っている。
お前達はそれを売って欲しい。」
「す、凄いワン!!
遂に俺にもお店が!!」
「早速どっちをやるか話し合うウォン!」
犬の獣人と狼の獣人は喜んでお店の中に入っていった。
「流石はタナトス様!!
正に神の御業!!
これなら経費も時間も削減出来ますコン!」
「そうだな!
あとは色々と出したいお店を提案してある。
どれをやりたいか選んでくれ!」
『わかりました!』
「選んでいる間に俺は店を創る。
喧嘩するなよ?」
『わかりました!!』
俺は次々と店を創っていく。
フードコートは大きめに創ってみた。
温泉の横がフードコート。
温泉に入ってそのまま飯に行ってもらおうという魂胆で温泉の中からもフードコートに行けるよう繋げてみたのだ!
一つ一つのお店もアメリカンサイズになっている。
スーパーのような食材売り場。
シルビアの店も大きく、その横にもお店を創る。
おもちゃ屋、本屋、魔道具屋もデパートのようだ。
ここに後ケーセンが欲しいが流石に無理だな。
せめて、子供が遊べる大型の公園でも創ろう。
《クリエイトアイテム!!》
ででーんと子供ならきっと誰もがワクワクするような公園を創ってみた!!
超ロングローラーすべり台を3台!
アスレチック嬢のような遊具多数!
勿論砂場やブランコなどの定番も用意!
なかなかの出来だな!!
絶対に子供が喜びそうだ!
何故ならば、すでにうちの女性軍が思いっきり楽しんでるもの・・・。
いや、何楽しんでるの!?
これ、子供の遊び場だからね!?
「きゃー!!
なにこれすご~い!!
オラオラ!!
もっとスピードだせぇ!!
私が1番に降りるのよ!!」
いやいや、すべり台はスピードを競うものではありません!!
「あ~あ~あ~〜〜!!
楽しい〜!!
もう一回やろー!」
何故ターザンの掛け声を知っている!?
「わぁぁ!!
ぐるぐる回って楽しいですぅ!!」
いや、ブランコは一回転するもんじゃねえからな!!
「見てみて!
タナトスの像!!」
「あたしもお城を作ったにゃん!!」
いや、札幌雪まつりじゃねえんだから、サンドアートはやめなさい!!
「ルーシーちゃんは汚れたくないからしなーい★」
いやいや、折角創ったんだから楽しめよ!!
「ガウガウ!!」「キャンキャン!!」
こら!そこのフェンリル達!
すべり台を逆走するんじゃありません!!
行儀が悪い!!
「キャン!?」
ああ!アセナが足滑らして下まで滑っていく・・・!!
だから危ないって言ったでしょう!!
ハティ、自分は上まで行けたからってドヤ顔しない!!
全く・・・なんて楽しそうなんだ・・・!
商人たちが場所を決めるまで遊び尽くしたハルトの仲間たちであった・・・。
本日もお読み頂きありがとうございます!!
王都にはお店が溢れていて、これから店を出すのは場所がなく諦めている者が大勢いました。
そこで、フォクサーはハルトの言葉を信じ、その中でも商売の才能に恵まれていそうな獣人をピックアップしています。
因みに公園の広さは東京ドーム一個分に匹敵する大きさです。
主にローラーすべり台が場所を取っています・・・。