第103の宴 魔界のアイドル
「これから王城で宴会をするぞ!
タナトスも参加するだろう?」
「そうだな。」
「じゃあ、妾の婿として妾の隣に座るといいぞ♡」
「はあ?
何ドサクサに紛れて結婚しようとしてんのよ!!」
「そうだよ!!
ご主人様は私の夫なんだよ!!」
「違うですぅ!
ミーナの旦那さんですぅ!!」
「あたしのだんにゃにゃ!
これは譲れにゃいにゃ!!」
「それに貴女は魔王になったんだから、もうお別れでしょう?」
「え・・・!」
「みんなの前で魔界を変えるって宣言したんだからもう付いてこれないわよ?」
「うう・・・嫌だ・・・。」
「は?」
「タナトスと離れたくない!!
ねえ、ここにずっといて!!
私と魔界を変えようよ!!
私には貴方が必要なのよ!!」
号泣しながら俺に訴えるソフィア。
「・・・ソフィア。
出来れば、俺だってお前と離れたくない。
それはお前だけじゃなく、皆のこともそう思ってる・・・。
だが、俺の使命は世界の悪を退治すること・・・。
神の使者として、このことは放棄出来ない。
そして、お前は魔王になった。
お前も魔界の為にここにいなければならない。
だから、ここでお別れだ・・・。」
「そんな・・・!」
「元々はそういう約束でしょう?
それとも、このままついてくる?
でも、貴女は約束してしまった。
魔界の人々を貴女は裏切れるの?」
「わかってるわよ!!
わかってるけど・・・
うわぁぁぁぁぁん!!」
泣きながら走って何処かへ行ってしまうソフィア。
「なあ、レルミーティ・・・」
『??』
「我は神の使者だ・・・。」
「?知ってるけど・・・?」
「神の使者が我儘言っても許されるのか・・・?」
「・・・ご主人様は今まで沢山の人々を救ったわ。
そんなご主人様が我儘を一つ言ったとして・・・
誰がそれを咎められるのかしら?」
「そんな人、絶対にいないよ!!」
「そんなやつがいたらぁミーナが丸焦げにしてやるですぅ!!」
「タニャトスは我儘言わにゃ過ぎにゃ!
れにゃなんて毎日言ってるにゃ!」
「失礼ね!
毎日なんて言ってないわよ!!
たまによ!!」
「お姉ちゃんは毎日言ってるよ?」
「ルナまで!!」
「タナトス様はぁワガママ言う精霊はぁ嫌いって言ってるですぅ!!」
「そんなこと一度も言ってないわよ!!
寧ろ、私の我儘がカワイイって思ってるわ♡」
『それはない。』
「きぃぃぃ!!皆して!!」
「・・・皆ありがとな。
じゃあ、一つだけ我儘を言う・・・。」
その日の宴会は夜遅くまで続いた。
ハティとアセナはここぞとばかりに食いまくっていたな。
ミミとレオンも応援に来たメリッサも含め、仲良く遊んでいた。
お人形遊びのレオンはいつ見ても傑作だったな。
俺達も色んな者から話しかけられた。
この大会で一番活躍したチームだからな。
おい、何俺の精霊達やティナをナンパしてるんだ?
拷問してやろうか?
ナンパしていた魔族も俺の名前が出ると、サッといなくなっていた。
まあ、そこで諦めないのなら拷問にかけて、生まれてきたことを後悔させてやるけどな。
そして、ソフィア。
ソフィアは魔王の席に座り、ずっと浮かない顔をしていた。
途中話しかけられたら、笑顔で話しているが、終わるとまた浮かない顔に戻る。
俺はその日、話かけることができなかった・・・。
その日の夜は帰らず、王城に泊まることになった。
そして、次の日・・・。
「じゃあな、ソフィア。
今まで飯作ってくれてありがとな。」
「タナトスにはここまで連れてきて貰い、魔王にまでしてもらったからな。
ご飯くらいどうってことない。」
「ちゃんと魔王やりなさいよ!!」
「勿論だ。
妾が必ず魔界を変えて見せる。
タナトスのような不思議なことは出来ぬが、色んなやり方を考えて、少しずつ変えていこうと思う。」
「ソフィアちゃん、元気でね!」
「ああ、そっちもな。
まあ、精霊だから病気にはならぬか。
余りタナトスを取り合うんじゃないぞ?」
「取り合うも何もぉ、タナトス様はぁミーナの旦那様だからねぇ!」
「何言ってんのよ!
私の旦那様でしょ!!」
「お姉ちゃん!
いつも言ってるでしょ!!
私の旦那様なの!!」
「あたしにゃ!!あたしの旦にゃさんにゃん!!」
ぎゃあぎゃあ喧嘩する4人!
「あはは!
相変わらずだな!
タナトスも誰にするかちゃんと決めないとな!」
「何を言っている?
結婚する相手はもう決まっている。」
『え!?誰!?』
4人が一斉に俺に聞いてくる。
「お前たち全員に決まっているだろう?」
『全員と!?』
「そうだ。
そんなことより・・・」
『そんなことより!?』
「具体的にどうするか決めたのか?」
「まだ、何とも・・・。
皆で話し合って決めようと思う。
先ずは魔界の者達の話を一人一人聞いて、答えを出していこうと思う。」
「気の遠くなりそうな話だな。」
「仕方ないであろう!!
タナトスみたいに何でも生み出せる訳ではないんだからな!!」
「魔界の皆に紙に意見を書いてもらって集計したほうが早くね?」
「あっ!!」
「本当にお前は容量が悪いな。」
「う、煩い!!
そんなこと、既に考えていたぞ!!」
「今、(あっ)て言ったじゃねえか。
嘘つくんじゃねえ!」
「うう・・・」
「じゃあ、俺達は行くぞ?」
「ああ、皆元気でな!
また遊びに来るといい!」
「暇になったらな。
お前と違って俺は忙しいからな。」
その時だった・・・。
「おーい★
タナくーん☆
まってぇー★」
バイオレットルーシーがふわふわと飛んでくる。
「良かった☆
間に合った★
私も連れてってー☆」
『はぁぁぁぁぁ!?』
「何言ってんのよ!!
なんで貴女までついてくるのよ!!」
「だってぇ★
ルーシーちゃんはタナくんの彼女だもん☆」
「そんなこと、認めてないよ!!」
「ルーシーちゃんがそう決めたの☆」
「勝手なこと言わないでほしいですぅ!!」
「ヘルライザーの側にいにゃくてもいいにゃんか?」
「うん☆
だってライくんは罪を償うためにソフィアのお手伝いするって言うんだもん★」
「妾の手伝いだと!?」
「そうだよ☆
だから、ルーシーちゃんはタナくんに付いていこうと思って★
そっちのほうが楽しそうだし☆」
「お前は罪を償う気はないのか・・・?
お前もヘルライザーと一緒に・・・。」
「何言ってるの?このライオンちゃん★」
「だって、ヘルライザーさんとソフィアお姉ちゃんのパパを倒したって・・・!」
「ちびうさちゃんも変なこと言ってぇ〜☆
ルーシーちゃんは前の魔王なんてあったこともないよ??」
『えぇぇぇぇぇぇ!?』
「でも、妾はそなたとヘルライザーで父を倒したときいたぞ!?」
「うーん・・・ある意味そうなのかな??
ルーシーちゃんはライくんに頼まれてスキルを使っただけだよ??」
「スキル?」
「うん★
私のユニークスキル〈物体浮遊〉だよ☆
ルーシーちゃんは触ったものを浮遊させることが出来るの★
だから、ライくんを浮遊させてあげただけだよ☆
スキルを使ったから皆が二人で倒したって言ってるのかな??」
「つまり、ルーシーは元魔王を殺そうとはしてなかったのか?」
「そんなの当たり前だよー★
前の魔王なんて興味ないもん☆」
「興味ないって・・・じゃあ、何故魔王になろうとしたんだ・・・?」
「だって魔王になったら皆に注目されるじゃん★
ルーシーちゃんが魔王になったら、皆を私のファンにするの☆
魔界のアイドル魔王☆ルーシーちゃん!!
ってかわいいでしょ★」
「じゃあ、ルーシーちゃんは魔界を支配しようとかは・・・」
「うーん、ある意味支配しちゃうかな??
みんなのハートをね☆」
こいつ・・・全く悪意がねぇ・・・。
試合中、なんか恐れられてたのに・・・。
殺すとか言ってなかったか?
「タナくんと結婚する為なら一人や二人犠牲が出てもいいでしょ??」
嫌、良くない。
「と、言うことで☆
ルーシーちゃんも行くよ★
ソフィアは来ないの??」
「当たり前であろう?
妾は魔王になったのだからな!
ここで魔界の為に働くぞ?」
「あんなにタナくんにゾッコンだったのに??」
「は?何を言っている?
タナトスには妻が沢山いるであろう?
それに妾はタナトスのことは好きだが、愛してはいないぞ?」
「え!?ソフィアお姉ちゃん、お兄ちゃんのこと旦那様って・・・!」
「ミミも何言ってるんだ?
妾は今、結婚よりもやることがある!
まあ、何れは結婚を考えるときも来るだろう。
その時はタナトスのような素敵な人を見つけて見せるぞ!」
「お姉ちゃん・・・?」
「さあ、そろそろ行くぞ。
ソフィア、元気でな。」
「ああ、魔界からそなた達の活躍を祈っておる!」
「ルーシー、おまえも来い。」
「え!?いいの★」
「どうせ行くとこないんだろ?
その代わり、この世界を救うための手伝いはしてもらうからな?」
「勿論☆
タナくん、大好き♡♡」
ルーシーは俺の顔をおっぱいで挟む!
いいぞ!これから毎日やるんだぞ!
「ちょっと!
ご主人様から離れなさいよ!!」
「やだよー★
タナくんはルーシーちゃんが一番好きなんだもん♡」
『1番は私!!!』
「ほら、喧嘩してないで行くぞ!!
ミーナ、頼むぞ!」
「はいですぅ!」
ミーナは空間魔法を展開する!
「皆、元気でな!!」
「ソフィアも頑張れよ!!」
そして、俺達は獣人界に帰っていく・・・。
そして、空間の向こう側にて・・・。
「お兄ちゃん・・・ホントにいいの!?
ソフィアお姉ちゃんとお別れだよ!?」
「余りにもあっさりしすぎてないか?
それに何か様子もおかしかったぞ?」
「タナくんのこと、完全に忘れてたよねぇ??」
「これでいいんだよ。なあ?」
『そうだね~!』
『????』
そして、俺達は獣人界の商業施設に戻る。
「タナトス、遅い!!
何してたのよ!!
ずっと待ってたのよ!!
・・・私の旦那様♡♡」
『えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』
「ソフィアお姉ちゃん!?」
「さ、先程別れを告げなかったか!?」
「え!?何がどうなってるの!?!?」
「遅くなってゴメンな、ソフィア。
いや、ソフィーナ!!」
本日もお読み頂きありがとうございます!
新たにバイオレットルーシーが仲間になりました。
本当はこの回で過去に触れようと思いましたが、思いの外、長くなってしまいましたので、また次回に・・・。
そして、ソフィアが獣人界に!?
次回、真相が明らかに・・・!