第102の宴 魔王ソフィア
「これより魂の浄化を始める・・・。」
「ご主人様!
サクッとやってお祝いしよー!」
「我はやらないぞ・・・?」
『へ!?』
「最後はソフィア・・・
新魔王である貴様の番だ・・・。」
「わ、妾が!?」
「当たり前だろう?
お前はこれから魔王としてこの国を治めるのだ。
何でもかんでも我におんぶにだっこでいいのか?
この先、我はお前の側にはいられない・・・。
すべて、魔王であるお前がカタをつけなければならない。
お前が魔王になって初めての仕事だ。
魔族の為・・・自分の為にお前がトドメをさせ!!」
「魔王として・・・初めての仕事・・・。
でも、妾にはヘルライザーを倒すほどの実力が・・・」
「何を言っている?
あの死の森でお前は強くなった。
この悪のヘルライザーは薬を使う前のヘルライザーだ。
あのヘルライザーであれば、お前でも充分に倒せるはずだ。」
《クリエイトアイテム!!》
ソフィアの前に光り輝く大鎌が現れる。
「これでトドメをさせ。
お前専用の大鎌だ。」
「妾・・・大鎌など使ったことは・・・!」
「大丈夫だ。
お前は知らないだろうが、ソフィアには鎌術のスキルがある。
お前の本当の得意武器はこのデスサイズだ・・・。
さあ、魔王として、悪のヘルライザーを討て!!」
「・・・分かったわ・・・!」
ソフィアが大鎌を構えると悪のヘルライザーが襲いかかってくる!!
ガキィィィィン!!
ヘルライザーが振り上げた剣をソフィアが大鎌で受け止める!!
「!!!
初めて持つ武器なのに・・・!
使いこなせる!!」
「当たり前だろう?
お前の鎌術はレベルMAX。
生まれ持っての才能がお前にはある。」
「うう・・・もっと早く気付いていれば・・・」
そして、ソフィアとヘルライザーの戦いは続く。
「嘘だろ・・・あの落ちこぼれのソフィアがヘルライザーと戦えている!?」
「何だ・・・あの魔力は・・・!?」
「本当にソフィアなのか・・・?」
「ソフィア様ァァァ!!
頑張れぇぇぇ!!」
「ソフィア様は我らの希望じゃ!!
ソフィア様こそ魔王に相応しいお方じゃ!!
皆、共にソフィア様に声援を!!」
ソフィアのじいやが観客たちを煽る!
観客たちもそれに応えるように声援を送る!
『ソ・フィ・ア!ソ・フィ・ア!』
「皆・・・!
妾は皆のために貴様を討つ!!」
《スピリット・ドミネーション!!》
悪のヘルライザーが動きを止める!
どうやら魂にもこの洗脳は効くみたいだ!
「妾はこの国全ての者が笑って過ごせる国を作る!!
父が死んでからの魔界はもう終わりにする!!
妾が魔王!!ソフィアだァァァァ!!!」
ソフィアは美しく弧を描くような構わない捌きで悪のヘルライザーを切り裂いた!!
〈ギャァァァァァァァァァ!!!〉
断末魔の叫びと共に悪のヘルライザーが消えてゆく・・・!
「はぁ、はぁ、はぁ・・・やった・・・」
〈ソフィア選手、ヘルライザーを打ち破り、見事勝利です!!
よって、新たな魔王は・・・
ソフィアだァァァァァァァ!!!〉
『ウオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
会場中に湧き上がる歓声・・・!
皆が喜び合っている!!
一部を除いて・・・。
「ソフィア・・・魔王として皆に挨拶するといい。
お前の気持ちを皆にぶつけろ!!」
「・・・うん!」
ソフィアは武舞台に立ち、リングアナウンサーからマイクのような拡張器をもらう。
「皆の者・・・!
妾が新たなる魔王だ!!
妾はここに宣言する!!
この魔界を笑顔に溢れる魔界にする!!
前魔王の意志を継ぎ、妾の父のような・・・
いや、それ以上の魔界を作ってみせる!!
その為には皆の協力が必要だ。
共にこの魔界を素晴らしいものにしようではないか!!」
『ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
観客たちが皆一つとなる!
が、しかし・・・
「巫山戯るな!!
俺はてめえを魔王とは認めねえぞ!!」
「そうだ!
何が笑顔あふれる魔界だ!!
街の雑魚どもと仲良くするつもりはねえ!!」
「弱い者を支配して何が悪い!!」
一斉にヤジを飛ばすヘルライザー軍。
今にも襲いかかりそうだが、ハルトが怖くて近寄れない!
「・・・タナトスよ・・・
ズルをしてもいいか?」
「それが国の為になるのであればいいんじゃないか?」
「ありがとう・・・。」
ソフィアはヘルライザー軍の前に歩き出す。
「何だ!やるのか!?」
《スピリット・ドミネーション!!》
ヘルライザー軍の目が虚ろになり、反抗しなくなる!
「貴様らが目覚めたとき、ヘルライザーに仕えていたことを忘れる・・・。
そして、妾に対する反抗心もなくなる。
妾を魔王として仕える。
弱い者を助け、この国を良くしようと皆で協力をするようになる。
暴力や喧嘩をしようという心も無くす・・・。」
ヘルライザー軍に洗脳を始めるソフィア。
私利私欲の為の洗脳なら止めたが、国の為になる洗脳なら俺は止めない。
確かにズルかもしれないが、これもソフィアの能力だ。
こんな魔王がいてもいいんじゃないか?
きっとソフィアならいい魔王になれる・・・。
そして、ソフィアが魔王になったということは・・・
もう、ソフィアとはここでお別れだ・・・。
・・・俺は本当にソフィアと別れられるのかな・・・。
そして、ソフィアの洗脳が終わる。
「終わった・・・。
これでもう、この者たちも皆を襲うことはないだろう。」
ヘルライザー軍が目覚めると、先程とは全くの別人となっていた!
「ソフィア様!!
我らともに良き魔界を作りましょう!!」
「ソフィア様、バンザーイ!!」
洗脳すげえな・・・。
そして、ヘルライザーが目覚める・・・。
「ライくん!!目が冷めたのね☆」
「姉ちゃん・・・俺は・・・?」
「今・・・姉ちゃんって・・・!
良かった★
昔のライくんに戻った!!」
泣きながらヘルライザーに抱きつくルーシー。
「おい、恥ずかしいだろ!
止めろよ、姉ちゃん!!
ここはどこだ!?
なぜ、皆見てるんだ!?」
どうやら、悪くなった頃の記憶がないらしい。
悪魂之浄化で記憶のあるものとないものが分かれる。
何故かは解明されてないが、ヘルライザーは記憶がない方側らしい。
ルーシーが今までのことをヘルライザーに話す。
すると、段々とヘルライザーの顔が青ざめてゆく。
「そ、そんな・・・!
俺がサミュエル様を・・・!?
嘘だ・・・!」
今までのことを知り、絶望の顔で膝をつくヘルライザー。
「申し訳ございません!!
ソフィア様!!
記憶がなかったとはいえ、俺はなんて愚かなことを!!
なんて詫びればいいか・・・!」
「じゃあ、死ね・・・」
『え・・・!』
土下座をしていたヘルライザーの背中をモーリスがナイフで突き刺す!!
「ぐふぅぅっ!」
「ライくん!!」
「ティナ!ミミ!!
回復だ!!
急げ!!」
『分かった(にゃん)!!』
二人は急いで観客席から離れる!
アセナとレオンもその後を追いかける!
「モーリス!!何をするのだ!!」
「うるせえ!!
改心したって罪は消えねえんだよ!
こいつはここで俺が殺す!!」
トドメを刺そうとモーリスが剣をヘルライザーに突き刺そうとするが・・・!
ブシュッッ!!
ソフィアがヘルライザーを庇い、ソフィアの腹部に剣が突き刺さる!!
「え・・・!?」
「ソフィアァァァァァァァ!!」
ハルトはすぐさまソフィアの元に駆けつける!
「ソフィアしっかりしろ!!」
ハルトは剣を抜き、止血する!
「ティナ!ミミ!!
早く回復を!!」
「わかったにゃん!!
ミミはヘルライザーを!!
ソファにゃんはあたしが!!」
「うん!!」
「な、なんでだよ・・・!
そいつはお前の父親を殺したんだぞ・・・!
なんでお前が庇うんだよ!!」
膝から崩れ落ちるモーリス・・・。
「わかってる・・・
だけど・・・私は・・・魔王だ・・・。
いくら・・・父の仇と言えど・・・ヘルライザーにも・・・家族がいる・・・。
ここで・・・殺したら・・・また・・・悲しみが生まれる・・・そして・・・また復讐が・・・繰り返される・・・
だから・・・魔王の・・・私が・・・それを・・・止めないと・・・」
「ソフィア・・・もう喋るな。
ティナ、ソフィアは大丈夫そうか?」
「大丈夫にゃん!
傷口が塞がってきたにゃん!
あとちょっとで回復するにゃん!」
「そうか・・・。
良かった・・・!
ソフィア、少し寝てろよ?
さて、モーリスよ・・・
ソフィアの言っていることはわかるよな・・・?
復讐は復讐しか生まない・・・。
貴様、言ったよな・・・?
この国を良くすると・・・。
今ここでヘルライザーを殺したら、今度はルーシーがお前を狙う。
お前が殺されたら、今度はお前の周りの者がルーシーを狙う・・・。
そうやって復讐を繰り返し、最後にはこの魔界は悲しみと憎悪で溢れていく・・・。
そんな国の何処が良い国なんだ?
そんなことも分からない貴様は魔王候補失格だ・・・。
貴様はまた、メリッサのような未来に絶望しか持たない子供を増やしたいのか・・・?」
ハルトの言葉に、はっとするモーリス。
「うう・・・ソフィアの言う通りだ・・・。
俺はとんでもない過ちを犯すところだった・・・
すまねえ・・・ソフィア・・・!!」
泣きながらその場で蹲るモーリス。
「わかってくれればいい・・・。」
モーリスの言葉に答えるソフィア。
「ソフィア、大丈夫か?」
「ああ、ティナのお陰でもう大丈夫だ。
ティナありがとう・・・!」
「治って良かったにゃん!」
「こっちももう大丈夫だよ!!」
「ちびうさちゃん!ありがとう★
ライくん治ったよ!」
ヘルライザーの方も無事だったみたいだ。
「・・・ソフィア様・・・モーリス。
本当に申し訳なかった・・・。
俺の心がもっと強ければ、心を闇に支配されることはなかった・・・。
謝ったって許されないことはわかっている・・・。
何をしても償えないことも・・・。」
ヘルライザーは自分の犯した罪を悔やんでいた・・・。
「ヘルライザー・・・
貴様が犯した罪は重い。
だが、亡くなった父にも責任はある・・・。」
「え・・・?どういうことだ?ソフィア!」
モーリスがソフィアに問いかける・・・。
「ヘルライザーが闇に呑まれたのは父の責任でもあるのだ・・・。
父が死ぬ前に聞いた・・・。
父が築いた魔界は表面上はとても良い国であった。
しかし、その影でヘルライザーやバイオレットルーシーのように親を殺され復讐心を燃やす者がいることを教えてもらった・・・。
父の築いた魔界は皆笑って暮らしているわけではなかったのだ・・・。
父はそのような者達を救えなかった。
その結果、父は殺されたのだ・・・。」
「そんな・・・そんなこと、俺は聞いてないぞ・・・!」
「父にもプライドがあったのだと思う・・・。
だからこそ、そのような者を救えず、殺されてしまった。
そんな馬鹿なプライドを捨てて、もっと国民に向き合えばこのような事態にはならなかった・・・。」
「ソフィア様・・・知っていたのですか・・・?」
「ああ。
だからこそ、妾はそのような者にも笑顔になってもらいたい。
魔界の者全てが笑って暮らせる国を作りたい!
父が成し遂げられなかったものを妾がやるのだ!!
だから、皆の者!!
困っている者や苦しんでいる者がいれば教えてほしい!!
妾が必ずや解決して見せる!!
もう2度と、悲しみに溢れた魔界にはしない!!
どうか、妾に力を貸してくれ!!
頼む・・・!!」
ソフィアは礼をする。
魔王としての責任を果たすために・・・。
すると、ポツポツと拍手が湧き上がり、次第にそれは大きなものとなる!
「皆・・・!
ありがとう・・・!!
必ずや、皆の力で魔界を良き者にしよう!!」
『ウワァァァァァァァァァァァ!!!!』
歓声はしばらく止むことはなかった・・・。
その瞬間、遂にソフィアは魔王として認められるのであった・・・!
本日もお読み頂きありがとうございます!
遂にソフィアは魔王になりました。
次回は遂にハルト達と別れがやってきます。
また、ヘルライザー達の過去にも触れていきたいと思います。