表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代における桃太郎の考察 ~モダン太郎~ その5

作者: ナマズ
掲載日:2020/01/07

おばあさんに声をかけて、もう3時間が経つ。まだ起きない。




妻が結婚20周年の日に浮気相手とともに家に帰ってきたときは驚いた。すでに両者の服は乱れていたからだ。

しかも二人は、わたしの驚愕する顔を平然と見ていた。妻に関しては、少し微笑んでいた。ふつう、「浮気相手と一発やって、夫のいた空気を感じながらもう一発やりますか!」ってときにその夫と家で鉢合わせた人間は目が点になり、全身の血が抜けたような顔色になるはずなのに、だ。



「私、この人と、恋愛ってやつしてるの」

「ん?」

「あのさぁ、夫婦って、ずうっといるから、恋愛してる感じしないじゃない?」

「ん?」

「だから、この人と恋愛させてもらってるの。もちろん、あなたとはこれからも夫婦としてやっていこうと思ってるわ」

「ん?」

「どうも、君代さんと恋愛しています、コジマタカヒロです」

「ん?」

「なんか、ずっと隠して恋愛しちゃうとさ、浮気みたいになっちゃうじゃない?あ、不倫か?っていうか、浮気と不倫って何が違うの?」

「ん?」

「まあとにかく、それではないってことは確かだから。だから、もしご近所さんとかに『あなたのとこの奥さん、浮気してるみたいですよ』って言われても、タカヒロさんのことだから安心してね」

「うん、もう全部言ったよね。質問してもいいよね」

「もちろんよ」

「まず、いつから付き合ってるんだい」

「今日でちょうど一年かな」

「そうかい。僕たちがあれをやらなくなったのは約五か月前。それって、その、君の言う恋愛と関係するのかい?」

「うーん、半分正解。私はあなたとのセックスも好きよ。あなたはとっても優しいし、あなたとのその時間は、とっても夫婦って感じがして気持ちいいわ。でも、タカヒロさんとのセックスもいいの」

「聞きたくないなあ」

「タカヒロさんとのは、愛のむきだしって感じがして、あぁ、これが恋愛だ、って気持ち良さがあるの」

「聞きたくなかったなあ」

「今は、今っていうか五か月前から、恋愛のセックスのブームが来てるってだけ。例えるなら、ドンパチやる映画も、しっとりしてる映画も好きなんだけど、最近はドンパチにまっしぐらって感じ」

「どうも、ドンパチでーす」

「やめろ、君はやめろ」



この会談を機に、我々、夫婦の寝室は別になった。


私は彼女を妻として見ていた。彼女はそれに満足がいかなかった。だから恋愛を始めた。

私はその日、枕を濡らした。妻として見ていなかったことを反省してではない。私の中にあった彼女への「恋愛」が実らなかったことに対する、悲しみの涙だった。




「あぁ、そうだ。今日からだった。」


私はリビングのソファに腰かけ、テレビを見ながらコーヒーを飲んでいる。手の震えが伝わり、マグカップの中の水面がかすかに揺れる。


妻が恋愛を初めて8年が経った日、つまり、妻の恋愛の報告を受けてから7年が経った日、彼女とカレーを食べていると、こう言われた。


「あのさ、私タカヒロさんと結婚したいんだよね」

「ん?」

「だからさ、離婚しよ」

「ん」

「でさ、私と恋愛してほしいんだけど」

「ん?」



彼女が今日家にやってくる。一応今日のために、高そうに見える食器を買っておいた。


「この前、川から大きな桃が流れてきてさ」


そうだった。彼女はいつも目があったら唐突に話し始めるんだった。






鬼ヶ島が世界に向けた攻撃を始めるまで、あと18年

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ