現代における桃太郎の考察 ~モダン太郎~ その5
おばあさんに声をかけて、もう3時間が経つ。まだ起きない。
妻が結婚20周年の日に浮気相手とともに家に帰ってきたときは驚いた。すでに両者の服は乱れていたからだ。
しかも二人は、わたしの驚愕する顔を平然と見ていた。妻に関しては、少し微笑んでいた。ふつう、「浮気相手と一発やって、夫のいた空気を感じながらもう一発やりますか!」ってときにその夫と家で鉢合わせた人間は目が点になり、全身の血が抜けたような顔色になるはずなのに、だ。
「私、この人と、恋愛ってやつしてるの」
「ん?」
「あのさぁ、夫婦って、ずうっといるから、恋愛してる感じしないじゃない?」
「ん?」
「だから、この人と恋愛させてもらってるの。もちろん、あなたとはこれからも夫婦としてやっていこうと思ってるわ」
「ん?」
「どうも、君代さんと恋愛しています、コジマタカヒロです」
「ん?」
「なんか、ずっと隠して恋愛しちゃうとさ、浮気みたいになっちゃうじゃない?あ、不倫か?っていうか、浮気と不倫って何が違うの?」
「ん?」
「まあとにかく、それではないってことは確かだから。だから、もしご近所さんとかに『あなたのとこの奥さん、浮気してるみたいですよ』って言われても、タカヒロさんのことだから安心してね」
「うん、もう全部言ったよね。質問してもいいよね」
「もちろんよ」
「まず、いつから付き合ってるんだい」
「今日でちょうど一年かな」
「そうかい。僕たちがあれをやらなくなったのは約五か月前。それって、その、君の言う恋愛と関係するのかい?」
「うーん、半分正解。私はあなたとのセックスも好きよ。あなたはとっても優しいし、あなたとのその時間は、とっても夫婦って感じがして気持ちいいわ。でも、タカヒロさんとのセックスもいいの」
「聞きたくないなあ」
「タカヒロさんとのは、愛のむきだしって感じがして、あぁ、これが恋愛だ、って気持ち良さがあるの」
「聞きたくなかったなあ」
「今は、今っていうか五か月前から、恋愛のセックスのブームが来てるってだけ。例えるなら、ドンパチやる映画も、しっとりしてる映画も好きなんだけど、最近はドンパチにまっしぐらって感じ」
「どうも、ドンパチでーす」
「やめろ、君はやめろ」
この会談を機に、我々、夫婦の寝室は別になった。
私は彼女を妻として見ていた。彼女はそれに満足がいかなかった。だから恋愛を始めた。
私はその日、枕を濡らした。妻として見ていなかったことを反省してではない。私の中にあった彼女への「恋愛」が実らなかったことに対する、悲しみの涙だった。
「あぁ、そうだ。今日からだった。」
私はリビングのソファに腰かけ、テレビを見ながらコーヒーを飲んでいる。手の震えが伝わり、マグカップの中の水面がかすかに揺れる。
妻が恋愛を初めて8年が経った日、つまり、妻の恋愛の報告を受けてから7年が経った日、彼女とカレーを食べていると、こう言われた。
「あのさ、私タカヒロさんと結婚したいんだよね」
「ん?」
「だからさ、離婚しよ」
「ん」
「でさ、私と恋愛してほしいんだけど」
「ん?」
彼女が今日家にやってくる。一応今日のために、高そうに見える食器を買っておいた。
「この前、川から大きな桃が流れてきてさ」
そうだった。彼女はいつも目があったら唐突に話し始めるんだった。
鬼ヶ島が世界に向けた攻撃を始めるまで、あと18年




