勧誘完
「学校生活はいいんだが、この体じゃあ勉強できると思えないんだが、なんとかなるのか?」
父さんはそんなことを言うが、実際父さんは鉛筆を持って机に座っていられるんだろうか。
「それは心配いりません。我が学園独自の素晴らしい魔法でどんな種族もほぼ平等に学校生活を送れます」
ライラは得意げに胸を叩いた。
「あの、学費は?」
母さんが心配そうに聞く。
「我が学園の学費、生活費などなど、かかる費用の心配もご無用です。ベルファング商会が負担します。いっさいあなた方にはお金がかからないんです」
話がうますぎる。
「卒業した後で返すってこと?」
問いかけた僕をライラは見つめた。
「返す必要はないの。お金はいらないのよ」
うまい話には裏がある、と思う。
だって父さんはいつもうまい話に乗って騙されて借金を負った。
「なんていい話だ」
父さんは早くも嬉し涙を浮かべている。
「もしかして、この子は入学するけれど、私たち両親は捕まって見せ物や干物にされてしまうとかでしょうか」
母さんは父さんとは違う涙を浮かべていた。
「違いますよお母さん。私が入学をお願いしているのはお三方。お子さんだけじゃなく、お父さんお母さんお二人にも入学していただくんです」
うーん。
いや、わかっていたけれど。
どうにも納得いかない。
「あの」
僕はずっと自暴自棄だった。
前世の時もそうだし、赤いペンギンになってもそれはあまり変わってなかった。
何かに疑問を持つことも、どうでもよかった。
でも、なんだかこのことだけはとても気になって、聞かずにはいられなかった。
「どうして僕らなんですか? 僕らがクバトラス神だからですか?」
ライラはいつもの得意げな笑みを浮かべて、首を横に振ったあと、
「それは今は秘密です」
と言った。
僕は絶対に説明不十分だと思ったけれど。
両親はライラの申し出を快諾した。
本当に突然のことだけれど。
来年の春から僕らは私立フランク・ベルファング学園に入学することになったのだった。