勧誘中
「わたし、ライラ・フィニエスタといいます。そのメーシにも書いてあるはずです」
うんうん、と僕たち三匹はうなずいた。
「ベルファング商会の顧問魔法使い 兼 私立フランク・ベルファング学園の教師もやってます。」
「学校の先生?」
「そうです。魔法を教える先生です。」
魔法の先生。
なんだか僕はどきっとした。
下心とかじゃなく、純粋にいいなと思った。
「魔法の先生!?」
僕の父親が叫ぶ。
父さんは僕以上にドキッとしたようで。
目を輝かせてペンギンのくせに羽ばたかんばかりだった。
「やっぱり異世界はいい! なぁユウキ!? 魔法が勉強できる世界だぞ」
「でも僕らペンギンでしょ」
「そうだけど、魔法があればなんでもできるだろ、ほら、変身とか」
「まあまあ、落ち着いてください、お父さん」
ライラは父さんに言った。
「あ、お父さんですよね? 親子三匹って聞いてきたんですけど——こちらお父さん、お母さん、おこさん、でよかったですよね。」
僕ら三匹はうんうんとうなずいた。
ライラは得意げな顔で僕ら三匹を順に見る。
「私が今日この信じられないくらいさっむーい冬山にわざわざ来たのはですね。クバトラス神であられるあなたたちお三方に、我が学園へご入学願おうと思ったからです。」
……。
僕らは言葉に困った。
「クエクェ」
前世の時から沈黙が嫌いな父さんは、わざわざ「クエクエ」とつぶやいてライラを困惑させる。
「クバトラス神って何?」
僕はライラに尋ねた。
「あなたたちが聖なる赤き鳥〝クバトラス神”」
「僕らは神様なの?」
「麓の民からは神様として崇め奉られてるわね。毎年大量の供物をこの寒い冬山の洞窟まで届けているみたい」
「神様として何かしてるの?」
「うーん? 私に聞かれてもわからないかな……。でも、たぶん、何もしてないと思う。麓の神官がクバトラス神の言葉を代わりに伝えてる、っていう体で信者を操ってるんじゃないかしら」
「じゃあ、お飾りなんだ」
「そうともいうかな」
ライラは苦笑した。
「学園というのは……?」
母さんが尋ねた。
「はい、私立フランク・ベルファング学園は実業家であるフランク氏が6年前に開校させた学園です。入学する生徒はすべてスカウトされた特別な生徒たちだけ、入学した生徒には充実した素晴らしい学園生活をお約束します。」
母さんは心配そうにまたライラに尋ねる。
「いったい何を学べるんですか?」
「学業全般はもちろん、実践的な魔法や戦闘技術も学べます。超一流の教師陣が最先端の研究を教えています。課外活動も充実してます。我が学園は学園都市の中にありますし、友達もたくさん作れますよ。」
なんだかとても勧誘チックだ。
大丈夫だろうか。
僕はライラが楽しげなことを言うたびに少しずつ不安になった。
だが、父さんは違うようで、ライラの一言一言にクエクエと歓声を上げていた。