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食堂

剣術の授業がなんとか終わり、昼休みになった。

昼食は学園内の食堂で食べることができるけれど、寮でも自炊することができるらしい。

僕はカーズに誘われて、食堂へ行った。

ハルは剣術の授業後、着替え中に声をかけられて、女子のグループで食べるようだった。


「ほんと、女子はつるむのが好きだよな」


父さんは拗ねていた。

母さんと別行動するのが寂しいみたいだ。


「ねえ、カーズはさっきの授業どうだったの?」


「……んん?」


カーズは聞こえにくそうに、わざとらしく僕に近づいた。


「剣術の授業、楽しかった? モンスターは倒せそう?」


「楽勝に決まってんだろ」


と、打身ができた腕をふりあげる。

本当に楽勝かはわからないけれど、カーズも授業をまじめに受けたみたいだった。

怪我をしてしまうぐらいには、体を動かしていたんだと思う。

と勝手に想像する僕も僕で、剣術の授業はくたくたになった。

レミーは僕に本当に剣術経験がないことを納得すると、僕をまともな練習相手に成長させることに、闘志を燃やすようになってしまった。

自分が授業でレベルアップできないことにむしゃくしゃしたようだ。


レミーの剣術の強さはクラスでも飛び抜けているらしい。

剣術教師のマルク先生は、僕とレミーをほぼ別行動させて、残りの生徒の指導に集中することにしたようだった。

だから、僕は訓練場の端でレミーからマンツーマンで指導を受けることになった。


「僕だけあんな授業って変じゃない?」


食堂の列に並んで、カーズに尋ねた。


「同感だ。列を前にしてもらったほうがよかったんじゃないのか? ユウキは剣道だって、やったことないだろ」


「そうだよ」


「実は俺は経験がある。中学は剣道部だった。」


カーズは得意げに笑った。


「そうなんだ、知らなかった」


「2ヶ月でやめたけどな」


「はやい」


そういえば、と僕は思い出す。マルク先生が言っていた剣術習熟度のステータス値、これを確認してみよう。生徒手帳の自分のステータス画面を探せば出てくるはずだ。

僕は生徒手帳を胸ポケットから出して、確認した。


'ユウキ・カトー ステータス一覧'


知性

*論理的思考    76

*抽象的概念の理解 48

*読解力      71

*創造力      86

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

感情

*開放性      50

*忍耐       60

*激しさ      25

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

戦闘力

*耐性       65

*攻撃力      52

*機転       75

*瞬発力      55

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

魔法力

*耐性       98

*攻撃力      51


僕はあまりに多いステータス項目を流し見した。

下にスクロールしていく。

僕はキャクターメイクでステータス値を全部中央値、たしか50にしたんだけれど、謎の男に数値をいじられて以来、数値は確認していない。

ステータス値という存在自体、僕には不本意なものだった。

気になるところもあるけれど、今は習熟度を確認しよう。

何回も画面に指を滑らせて、スクロールさせていく。すると、「習熟度」のボタンが出てきた。


僕はそれをタップした。


ユウキ・カトー 習熟度

「一年次」

*数学   40

*言語学  40

*剣術    0

*???

*???

………


「やっぱり、たしかに剣術習熟度が0だ。この数値は間違ってない。」


僕の生徒手帳をカーズも覗き込む。


「へえ、そんな項目があるのか。俺も見てみよう」


カーズ・マイロ 習熟度

「一年次」

*数学   35

*言語学  30

*剣術   26

*???

*???

………


カーズは得意げに微笑んだ。

僕より自分の方が剣術習熟度が高いことが、嬉しいらしい。


「……カーズ、戦闘力の耐性と攻撃力を教えて」


「……」


僕が尋ねると、カーズは自分の生徒手帳をさっと引っ込めた。


「なんで隠すの?」


「なんか、嫌だから……。だいたい、ユウキはクラスで2番目に強いってわかってるんだからいいだろ。」


「いや、でも」


僕は自分のステータスを見て考えた。


戦闘力

*耐性       65

*攻撃力      52


これが高い値とは思えない。

もしかしたら相対的にカーズの値がとても低ければ(10とか20とか)、僕とレミーが飛び抜けて戦闘力が高いと言われるのもわかる。

だから、参考にカーズのステータス値を知りたかった。

カーズは僕から逃げるように、食堂のカウンターに並んだ。


「まぁ、いいか」


僕は今のところ、カーズから探るのを諦めることにした。


食堂のメニューはひとつだった。

みんな同じ定食を食べるらしく、カウンターでトレーや皿をもらってベルトコンベヤー式に料理が、食堂のおばちゃんからそれぞれ盛られる。


今日の昼食は、パンと具沢山のスープと何かの肉のソテー、あと小さいリンゴのような果物が数個ついてきた。


「うまそー」


もともと父さんはそんなに食べる方ではなかったと思うけれど、やっぱりある種若返った分、食欲が湧くんだろうか。

僕のトレーにも次々料理が注がれていく、最後に深い皿にリンゴのような果物が4つコロンと転がり込んだ。

ふふ、と笑い声が聞こえて顔を上げると、三角頭巾にマスクをした人が僕を見ていた。

マスクをしていてよくわからなかったけれど、睫毛がキラキラして可愛い目をした若そうな女性だった。


笑われたみたいだけど、なんなんだろう。


どことなく恥ずかしくなって、僕は曖昧な会釈を返して、カウンターから離れた。

食堂の空いている席に、カーズと座った。


「おい、多くないか?」


言われて、カーズの指差す皿を見ると、そこには果物が4つ。カーズの同じ皿を見ると、3つしか入ってなかった。


「多いね…。」


「ん? なんでだよ。なんで、ユウキだけ多いんだ。」


「いや、僕もわからないけど」


カーズは妬ましそうに僕を睨んだが、僕はそれについては経験がなさ過ぎて何も言えなかった。

戸惑っているのは僕の方だ。

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