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自室

ラギ先輩が僕の生徒手帳のスキル名をタップした。

たぶんスキルの説明が出てくるはずだ。


僕の生徒手帳の周りにみんなが集まる。


'クバトラスの親子愛 レベル3'

能力値が親子間での友好度×10%還元されます。


「どう言う意味だ?」


「よく分からないけど、あまり有用なスキルっぽくはないね。友好度とも関係が無さそうだし。」


親子間というのはハルとカーズの事だと思う。先輩たちには、僕と2人が親子だと知られていないからあまり意味がわからないんだろう。僕と2人との友好度は星4つだから……。能力値に40%プラスされるってことかな?

それってどれぐらいなんだろう?

よくわからない。


「もう一つのスキルは?」


言われてラギ先輩はもう一つのスキル名をタップした。


'クバトラスの魅力 レベル1'

強い信仰心を集めるクバトラス。その魅力は人間を惹きつけてやまない。クエクェ。


「なんだこの説明はっ」


ラギ先輩は苛立ち叫んだ。


「クエクェ、って馬鹿にしてるだろ。スキルの説明をしろよ。」


「確かに、不親切だね……。ユウキくん、君はこのスキルについて何か知ってないの?」


アークス先輩に聞かれて、少し考える。

クバトラスの名前はたしか僕の本体の赤いペンギンの呼び名だったはずだ。どこかの山で神様として祀られているんだと思う。そういう意味での信仰心、ならなんとなくわかる。

でも、いいんだろうか?

僕の体が別にあることを言ってしまっても。


「……よくわかりません。」


「そうか」


アークス先輩は僕の煮えきらない返事にも特に追求はしなかった。


「でも、このスキルが友好度に関連してる可能性は高いね。人を惹きつけるスキルなんじゃないか?」


「だからユウキの友好度はすぐ上がるってことか? もしそれが本当で、この友好度がバグじゃないんだとしたら……。結構なチートスキルじゃないか?」


ラギ先輩がみんなに問いかける。

だが、誰も想像がつかなかったのか、沈黙してしまった。


「あ、そうかぁ、だから僕とユウキくんの友好度が高いんだねぇ」


サラムがニコニコ笑顔で沈黙を破る。

みんな、なんとなくほっこり顔で、そうだねぇ、と各々思ってその話題は終わってしまった。


いろいろ話をしたりしているうちに、歓迎会は終わった。

寮監のカーク先生が寮に帰ってくると、すぐに夕食になって、入浴時間や掃除や明日の準備をしたら、もう就寝時間になった。

第六男子寮には2人1室で寝室兼勉強部屋になる学生用の自室が5部屋ある。2階に上級生が4部屋、1階に僕とサラムの自室。カーク先生の部屋は2階だ。


僕とサラムは一階の戸締りをして、自室に入った。


「ユウキくん、今日はお疲れ様。」


「うん、お疲れ様」


ベッドの上に座る。

部屋は勉強用の机とベッドとタンスと棚がそれぞれ2つずつ入っただけのシンプルな部屋だった。

どれも木製のしっかりした家具だ。

僕の前世の家は合板のペラペラの木製家具かプラスチック製だったので、こんな家具を使えるだけでも、高揚した。

木で作られたベッド枠にスプリングのマットが乗って、さらに敷布団、ふかふかの掛け布団がある。

昨日からすでにこの寮で生活しているんだけれど、このふかふかに興奮してしばらく寝られなかったし、もし寝たら夢からさめて前世の、現実世界に戻ってしまうんじゃないかと思って、夜中に何度か目が覚めてよく寝られなかった。


「明日からまたよろしくね」


明日の準備をしながらサラムが言う。


「それ、昨日も言ってたよ」


あ、そうかぁ、と笑いながらサラムはベッドに寝転んだ。


「それにしても、ユウキくんすごいね。入学してすぐなのに、もうスキルを二つも持ってるなんて。僕はゼロだよ」


「僕もよくわからないけれど、サラムもすぐにスキルを持てるよ。僕なんかが持ってるぐらいなんだから」


「僕なんか、なんていうことないよ。ユウキくんは賢そうだし、カッコいいもん」


サラムはベッドでゴロゴロする。


「僕はチビだし、みんなに比べて子どもだし。ちょっと不安かも……。頑張るけどね」


にへ、と笑ってこっちを見た。


「サラムはまだ10歳だったよね。どうしてこの学園に入学したの? 遠くから来てるって聞いたけど、その住んでいたところに学校はなかったの?」


「学校はあったんだけど、この学園の先生がスカウトにきてね、すごく説得されたから、父様母様も納得して、僕を学園に入れることにしてくれたんだ。」


実はね、とサラムはベッドの上に座り直した。

女の子ずわりだ。


「僕、イムランダーの出身なんだ」


イムランダーってなんだろう。この世界では有名なのかな。


「ふーん、そうなんだ」


「もしかして、知らない?」


「うん」


サラムはきょとんとして、しばらく頬を掻いた後、


「そうなんだぁ」


とホッとした様子だった。


「知ってないと変かな?」


「変じゃないよぉ! でも、それなら、僕が教えてあげる」


サラムはいそいそとベッドを降りると、自分の鞄から1枚の巻紙を取り出した。


「ほら、僕この学園に来るまで旅してきたから、地図を持ってるんだ」


サラムはその地図を僕のベッドに広げた。

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