スキル
「スキル、スキルのせいですよ」
と、僕は立ち上がって言った。
先輩たちは僕に視線を集めた。
「友好度の更新があったときに、生徒手帳の右下に更新があります、っていう情報がでてくるじゃないですか。あの時に同じタイミングで〝スキル"のレベルアップについて何か出てました。それが影響してるのかも」
僕の生徒手帳に表示されている友好度の異常値、その原因がスキルにある。というのは確信があったわけじゃあなかった。
でも可能性は高いと思う。
「スキルか」
ラギ先輩はうーん、とうなった。
「友好度に関連するスキルなんて聞いた事ないが」
「でもないわけじゃないかもしれない。ユウキくん、生徒手帳のスキルのページを見てもいい?」
アークス先輩が僕の生徒手帳を手にそう言った。
今更、確認しな方もいい事だと思うけれど、どうぞ、と言うつもりで頷いておいた。
アークス先輩は僕のスキルページを開いて他の先輩も見えるように、生徒手帳をテーブルの上に置いた。
"ユウキ・カトー スキル一覧"
クバトラスの親子愛 レベル3
クバトラスの魅力 レベル1
見た覚えのあるスキル名が表示された。
「なんだか変わった名前のスキル名だね。こんなスキルは見た事ないな」
「例えば普通のスキルってどんなものなんですか?」
「そうだな、僕はレベル1の速読スキルとか、筆写レベル1とか」
なんか習い事みたいなスキルだ。
「だめですよ、アークス先輩のスキルは地味すぎるから。」
ラギ先輩が言った。
「スキルには2種類ある。学習スキルと特殊スキル。アークス先輩は特殊スキルに全く無頓着だから、説明にならない。」
「言うねえ」
アークス先輩が悲しそうに呟いた。
「速読スキルや筆写スキルは学習スキルの部類に入る。後天的に取得できるスキルで、努力次第でいくらでも覚えることができる。一方、特殊スキルは勉強したり修行したりで覚えることができないスキルだ。未公開の変わった条件で取得できる。だから、突然何かがきっかけでスキルを手に入れたりする事もある。」
それとだな、とラギ先輩は一息ついて、ニヤリと笑った。
「重要なことを言っておくと、スキルチケットを手に入れたら、購買部でスキルガチャが引ける。そこには特殊スキルも出る」
「スキルガチャ……。」
なんだか魅惑的な響き。
スキルガチャで特殊スキルを手に入れれば、いいことがあるに違いない、そんな風に思わせられる言葉だ。
「たぶんこの'クバトラスの親子愛'や'クバトラスの魅力'は特殊スキルだな。」
どんな効果があるんだ?、とラギ先輩が僕の生徒手帳を探った。