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星がたまる〜

カーズ、ハルと一緒に選択授業の一つ、天文学を見学しに、移動することにした。


「スアリーさんだったわよね? さっきの子」


ハルは僕に問いかけた。


「前世で縁があるって言ってたけど、ユウキは思い当たることがある?」


「ないよ」


前世で、ってどういうことなんだろう。彼女も異世界転生してきたってことなんだろうか?

異世界転生ってわりとよくあることだったり?


「お父さんは何かわからない?」


「いやぁ? 前世からの生まれ変わりっていうのは。結ばれずに心中した恋人とかのことをいうんじゃないのか? ユウキには恋人がいたのか?」


「いないよ!」


いたらさ。

たぶんここまで人生悲観してないと思うよ。

自分のことながら。


「スアリーさんか……。かわいいところもあったわよね。母さんは暖かく見守ることにします。」


「……なんでもいいけど。自分のことを母さんって言わないでほしい」


そういえば、と言ってハルは何かを思い出したように、生徒手帳を取り出した。


「ねぇ。2人は知ってる? この生徒手帳すごくよくできてるの。便利なのよ。ほら、前の世界のタブレット端末よりも高度な技術だと思うの。これはもしかして魔法なのかしら」


ハルは自分の生徒手帳の右下に表示された、"新しいアンロックがあります"の文字をタップする。


「学校の生徒たちとの友好度が出るみたいなの。面白いわよねぇ」


「それならさっきユウキの生徒手帳で見たな」


カーズは僕に生徒手帳を出すように促した。


「なぁ、ちょっと気にならないか? スアリーちゃんとの友好度はどうなってるんだ?」


どんな仕組みか、どんな意味があるのかよくわからないけれど、たしかにカーズの言う通り、気になって僕は自分の生徒手帳を確かめた。


右下の文字をタップすると、画面が切り替わった。


「友好度:ユーリがアンロックされました。」


「友好度:アズリスがアンロックされました。」


「友好度:グウェンダリアがアンロックされました。」


「友好度:トーマスがアンロックされました。」


「友好度:ルーシーがアンロックされました。」


「友好度:ビビアがアンロックされました。」


そんな表示が数十回連続で表示された。

同じクラスの同級生の名前だ。

タップするのがとても面倒くさかった。

そんな僕をカーズとハルは変な目で見ていた。


「なんでそんなに生徒手帳叩いてるの? 壊れたの?」


「いや、たぶんさっきの自己紹介で名前が判明したから、友好度の項目がアンロックされてるんだと思う。2人もおんなじじゃないの?」


2人は自分の生徒手帳を見たあと、


「私はアンロックはお父さんとユウキだけよ」


「俺も母さんとユウキだけだな」


と言って僕の生徒手帳を不思議そうに覗き込んだ。



"ユウキ・カトー 友好度一覧"

ハル      ★★★★☆

カーズ     ★★★★☆

アズリス    ★☆☆☆☆

グウェンダリア ★☆☆☆☆

トーマス    ★☆☆☆☆

ルーシー    ★☆☆☆☆

レミー     ★☆☆☆☆

ビビア     ★☆☆☆☆


全てを見てはいないが、まだ下に項目は続いている。


「ん? 俺の友好度はそんな風になってないぞ。ほら、見てみろ」

カーズは自分の生徒手帳を見せた。


"カーズ・マイロ友好度一覧"

ハル   ★★☆☆☆

ユウキ  ★★★★☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆


下にスクロールしてもはてなマークと空の星マークばかりだった。


「私も同じよ」


"ハル・ウィトカ友好度一覧"

カーズ  ★★☆☆☆

ユウキ  ★★★★☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆

???  ☆☆☆☆☆


「なんでこんなに違うんだろう?」


不思議に思っている横でカーズは僕に顔を寄せて問いかけてきた。


「スアリーちゃんとの友好度はどうなんだ?」


何か余程気になるらしい。


"ユウキ・カトーの友好度一覧"

…………

スアリー  ★★☆☆☆

…………


「星二つだ。」


「それって仲がいいってことなのかしら?」


ハルは首を傾げた。


「俺と母さんが星二つだから、仲がいいってことになるんじゃないか」


2人は夫婦だったんだ。

それと同じくらい、っていうのはなんだか違う気がする。

だいたい僕は今日会ったばかりのスアリーと仲がいいなんて思ってない。


「まってよ、僕とカーズ、僕とハルは星4つだよ。この差ってなんなの?」


「いや、カーズは機械音痴だからわからん」


だから一人称ちゃんと使ってよ。

それに機械とかも関係ない気がする、なにかの'ルール'みたいなものがあるのかもしれない。

ハルもカーズと同じくわからない、と首を傾げた。


「君たち、よほど星に興味があるみたいだなっ」


大きな声とともに、急に背後に背の高い男が現れた。

その大きな声にびっくりして僕らは飛び上がりそうになる。

背の高いその男は、僕らを脅かすつもりで声をかけたらしく、骨に皮が張り付いただけの痩せた顔に意地悪く笑みを浮かべていた。


「なんだよ! てめー急に脅かすんじゃねえよぉ」


カーズが裏返った声で男に言い返した。


「私は天文学の教師だ。君らは新入生だな」


男は低い声で、僕らを脅すように見下ろす。

カーズは先生と知ってすぐに虚勢を引っ込めた。


「はい、すいません。」


僕らは話しながら歩くうちに、とっくに天文学の教室に来ていたらしい。

たぶんハルが調べて話しながら、自然と誘導してくれていたんだろう。

でもそこは、教室というか、学校の屋上だった。

階段を登って、屋上の扉を開けた先にあって、ちょっとしたアーチ型の屋根と、休憩用のちょっとしたテーブルと長椅子のセットが2つ置かれている。


「寒い」


生徒手帳に夢中になっていた僕はやっとそのことに気づいた。

外はまだ雨が降っている。

屋根に落ちる雨粒の音が騒音に近い音を出していた。


「そうだ。よくそのことに気づいたな。天文学は雨が降っている中勉強してもたいして面白くはない」


天文学の先生と名乗った男は、テーブルに腰掛けるとコートの前を合わせて白いため息をついた。


「今年は在校生の授業選択も今のところゼロだ。新入生の君らが本当に天文学に興味があってここにきたなら説明するが、どうする?」


この先生はこの雨が降る中、新入生を1人で待ってたんだなと思った。

説明を聞くかどうか悩む。

この学校の授業科目は必修の授業のほかに選択科目の時間が3つ設定されていて。いくつもある授業の中から3種選ばなければならない。


カーズが特に興味を持っていた魔法の授業は必修だったし、選択授業で特に興味を抱いたものがなかったから、僕らはハルの希望で天文学の授業の見学にきた。


「お願いします」


ハルは楽しそうにそう言った。

それなら、と僕とカーズもうなずく。

天文学の先生はテーブルに腰掛けたまま僕らを見た。


「授業は選択授業2の時間に行う。月一回は夜間の観測をするから他の授業より手間がかかるぞ。いいな?」


ハルはうんうんとうなずいた。


「私の名前はタカ・モーリィ。天文学を教えているが、ほかに理科学も教えている。私が教える天文学で重視しているのは観測だ。観測のために必要な天文学の知識を教えて、夜または昼に実践する。説明は以上だ。」


時間の無駄だから、他の授業の見学に行きなさい。と、モーリィ先生は言った。


「ありがとうございました」


僕らは先生にお礼を言って屋上を出た。


僕はなんとなく扉を閉じる前に外を見た。テーブルに座る先生の向こうに灰色のどんよりした空が広がっている。


異世界の空ってどんななんだろう。


僕はまだ見ないその晴れ空に少しワクワクしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] パパとママがトボケてていいですねw
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