94 妹たちだけで巨大魔獣狩りに
モンマ屋敷の庭ではリィカとレンが自分の装備品を手入れし、カナコは特殊装甲車『バリアブル・マシーン』を整備している。その様子をマリージュとミーユ、世界樹ちゃんがテラスでオヤツを食べながら眺めている。
んー?なんで武器整備なんかしてるんだ?
え?巨大魔獣を狩りに来た?
何言ってんだこいつら⁉︎
なんでもこの間の超巨大魔獣が手応えあり過ぎて忘れられないんだそうだ。しかも最後ほとんど親父と俺で倒してしまったから消化不良なんだと。
…おまいらなぁ…
親父は5年もあの超巨大魔獣と戦ってたんだぞ。あんな規模の魔獣そういるかよ。
え?ジュリアさんに相談したら通常出現するサイズの巨大魔獣なら討伐していいって言われた?ただし十分に瘴気を搾り取ってからだけどって?
他国の少女に討伐を頼るなんてどうかしてるだろこの国の役人は‼︎
え?勇者の子供達だからって特別に許可が出た?兄ちゃんのおかげだって?
「お前がやり過ぎたせいだろ。お前を見て俺の子供で冒険者だから妹達も同じくらい能力があると思われたんだ」
なんてこった…俺のせいでした。
しかし最近は巨大魔獣も出現していないようなのでそう好きには出来ないだろ…
と思った途端に街中にサイレンが流れて来た。何だっけ?前に聞いたぞ
「巨大魔獣襲来のサイレンだ」
親父が反射的に飛び上がる。もう身に染み付いてるのか。リィカ達から歓声が上がる。
「ヒャッホー来たー‼︎」
出撃準備を始めるリィカ・レン・カナコ。それを見てる年少組が
「「あたし達も行くー‼︎」」
「のじゃー‼︎」
ダメ‼︎マリージュとミーユはダメ‼︎世界樹ちゃんもダメだぞ‼︎
「あ、兄ちゃんもダメだからね‼︎」
は⁉︎何を言ってるんだおまいらは⁉︎
「兄ちゃん一人で倒しちゃうじゃん。あたし達のスキルにならんでしょ」
「いや、保護者はいるだろーが‼︎見てるだけならいいだろ⁉︎」
「保護者ならオレがいるだろうが‼︎オレがついて行くからいいんだよ‼︎」
横からクソ親父がドヤ顔で突っ込んで来た。めっちゃ嬉しそうだ。娘たちとのピクニック気分だろあんた⁉︎
「ぐぬぬ…」
リアルで口にする日が来るとは思わなかったぜ。
そうこうしているうちに中央都から魔人国防衛隊の竜車が屋敷に到着する。うちの屋敷で親父たちと合流して『アフロディア』で現場まで移動するつもりらしい。あー好奇心に負けたのか魔防隊の連中。全員乗ってみたくなったんだな。俺の顔を見てすまなそうに顔を背けるジュリアさん。はいはい。わかりましたよ技術探査とか上の命令もあるんでしょう宮使いの辛い所っすねー。
そうして『アフロディア』が現場に出動して行った。
残されたのは俺とシトリージュさん、カトレアさん、マリージュ、ミーユ、世界樹ちゃんだ。
仕方がないので家でみんなで見てる事にした。何を見るって…タブレットだ。画面は小さいが。実はカナコが『アフロディア』の内部からwoo tubeで生配信してるのだ。こちらの衛星電波に乗って配信されている。直接地球には届かないようだが持って帰って流すつもりらしい。いつからあいつウーチューバーになったんだ?
リビングのテーブルにタブレットを置く。空を行く『アフロディア』からの中継だ。お、映ってる映ってる。バカ親父、ハナクソほじってんじゃないよ。みんな見てんぞ‼︎
画像が現場を捉えた。いたいた、やはり名状し難い混沌とした何かがぬるぬると地面を這う。何となくナメクジのような軟体生物だ。全長50m程ある。現物を見たカナコやジュリアさんが嫌な顔をしている。ナメクジ嫌いなんやな。
ゲートから出現して2時間程経っている。十分な瘴気を大気に含ませるためには後3時間は現場に留める予定だそうだ。その間近隣に被害が及ばないようにするのが魔防隊の仕事だ。
まずは殺さずギリギリまで弱らせる。『アフロディア』の甲板に上がったレンがデバフをかけ巨大魔獣の進む速度を落とさせる。まず『アフロディア』からミサイル攻撃。(おいおいカナコ、ミサイルなんてどこから調達して来たんだ⁉︎)ミサイルが巨大魔獣の足元を削るが奴の身体に当たったミサイルが炸裂しないでそのまま身体に飲まれて溶かされていく。
「手強いぞ」
親父がそう呟くとリィカも外に出てドラゴンになる。話は聞いていたがドラゴンになったリィカを初めて見たマリージュとミーユが大興奮だ。ドラゴンリィカが口から火球を飛ばすがナメクジの粘液が炎から身を守っているのかあまり効果がない。粘液が火に炙られ一面に蒸気が上がる。ナメクジの姿が蒸気で見えない。すると蒸気の中からナメクジが粘液を飛ばして来た。粘液が『アフロディア』の鼻面に当たると装甲がジュウジュウ溶け出した。
「わー‼︎」
慌てたカナコの叫び声が聞こえる。あんにゃろーぶっ殺す‼︎などの放送禁止用語が響き渡る。あかん‼︎あかんぞ‼︎幼い妹たちが見てます‼︎
俺は思わずタブレットの音声を小さくする。同時にシトリージュさんとカトレアさんが娘たちの耳を塞いでいた。
「ナメクジなら…塩に弱いはずだ」
ポツリと呟く親父。いやそれウルト◯マンの怪獣退治の発想だよね。
「塩…‼︎塩ってどこにある⁉︎海か岩塩しかないでしょ⁉︎レン、魔法で塩化ナトリウム精製出来る⁉︎」
「え?えんかなんとかって何?知らないよう‼︎」
魔大陸の住人に元素記号や化学式の知識はないわ。なので精製は難しい。
「手っ取り早いのは海に出て海水汲んでくる事だな」
それだ‼︎とみんなが頷く。だが『アフロディア』が海水を汲んで来るまでの足止めが必要だ。
「わかりました‼︎我々で足止めをします‼︎」
魔防隊が『アフロディア』から飛び出して拘束の為五芒星の魔法陣を組む。
「俺もあいつらのフォローに残ろう」
親父も魔防隊のいる場所に降りる。魔防隊の拘束陣が鮮やかに輝いてナメクジを捕らえる。
「キシュアアアアアアア‼︎」
暴れ回るナメクジをがっしり掴む拘束陣。魔力循環訓練の甲斐があったか魔防隊の魔力出力が上がって以前の何倍も強力な拘束陣になっている。
彼らを置いて『アフロディア』は海水を汲みに大陸を南下する。カメラは『アフロディア』に付いているのでのんびりとした空の風景しか映さない。
「これ、ずっとこのまま?」
「しばらくはこうですね」
1、2時間このままだと聞いてシトリージュさんたちが飽きて席を外し始めた。
「戦闘が再開したら呼んでね」
魔防隊は戦ってる真っ最中なんだけどなー頑張れ魔防隊‼︎




