92 ヤンマ◯系男子とガチバトル
エラーで水曜日にアップされませんでした。すみません。
『異界の魔導師』が俺達に会う、という。俺達ダークエルフ一行は東国連邦の犬人に囲まれる中マイネーク近郊の砦まで案内された。
砦には数人の地位のありそうな犬人に紛れ人間の若者が一番いい椅子に深々と座っていた。
ルックスは鉄工所辺りで働く車が趣味な感じの若者だ。同級生にいたら確実に絡んできたりいじめて来たりするタイプのヤン◯ガ系男子。
正直苦手なタイプかもだ。
俺を見るなりビックリする。そしていやらしい目つきに変わる。下から嬲るように人を見る目つき。この身体になって幾度と無く向けられた目つきだが未だに慣れないし気持ち悪い。そうだあれは性的対象を舐る態度。随分と上からの目線だ。傲慢とそれを裏付ける身体から滲み出る甚大な魔力。
「ようエルフのお嬢さん。オレはタカヤス。この国の筆頭魔導師だ」
どうやらこいつが『異界の魔導師』らしい。
「あんたがあのゴーレムを作ったのか。すげえな。どうだい俺の手下にならねえか?可愛がってやるぜ。ヒイヒイ言わせてやろう」
こいつバカだ。発想がザコい。
「随分とゲスな筆頭魔導師だな。呆れるほどゲスいな。てめえは一生犬とヤってろ」
あらやだ。思ってもいない口調で返してしまいましたわホホホ。
異界の魔導師は顔を真っ赤にしている。もしかして図星かもしれない。犬人の女をあてがわれていたんだろうなこの国の奴らに。それで俺に発情してんのか。ちょっと哀れかも。
「テメエ‼︎舐めんなエルフ風情が‼︎」
魔導師が立ち上がっていきなり手の平に魔力を集中させる。この部屋の中で魔法をぶっ放すつもりらしい。とんでもなく短気だ。お前らの兵の方が多いんだぞ、この部屋‼︎
「ファイアボール‼︎」
しかも火魔法かよ。最悪だ。俺は土魔法で魔導師と俺の間に土壁を作る。と同時にダークエルフ達をアイアンゴーレムの所に避難させ俺も外へ飛び出す。
ファイアボールの威力が凄まじく、会合の部屋をあっという間に火の海にした。何十人もの犬人が火に巻き込まれている。その火の海の中から笑いながら異界の魔導師が飛び出して来る。
魔導師は土魔法で鎖を撃ち放って来る。その鎖が四方八方から俺に向かって飛んで来る。
俺は【ボックス】からオリハルコンソードを取り出し鎖をことごとく斬り裂く。
「う、うそだろ⁉︎チタン合金だぜ⁉︎この世界の武器レベルで切れるはずがない」
相当魔導師は驚いているようだ。あー、あいつオリハルコンを知らないのか。まあ向こうにはない素材だからな。
「ストーンアロー‼︎」
凄まじい量の石の矢が飛んで来る。なるほど魔力量の高さが知れる。だがいちいち詠唱をしないと放てないのか?それとも昭和アニメ脳か?
俺は新たにアイアンゴーレムを呼び出して盾にする。
「一体だけじゃないのか⁉︎」
そりゃあね。アイアンゴーレムは石の矢をことごとく跳ね返す。魔導師はアイアンゴーレムを見てニヤリと笑う。
「お前だけだと思うなよ‼︎」
魔導師は俺のアイアンゴーレムとそっくりなアイアンゴーレムを作り出したのだ。殴り合いを始めるアイアンゴーレム達。しかし魔導師の作ったゴーレムは吹き飛ばされてしまう。
「何でだ⁉︎丈夫なチタン合金で組み上げたゴーレムだぞ⁉︎」
いやいやチタン合金て軽いので有名でしょ。航空機の材料だよ。うちのは硬くてクソ重いで有名なアダマンタイトを混ぜてんだからそりゃ吹き飛ぶでしょう。色々抜けてんなこの人。
だけど危険だ。
この人異世界に飛ばされてこの世界に現実感を持ってない。何をやってもいいと思っている。周りに人間が居なかったせいもあるだろうが犬人始めこの世界の生き物の生命を何とも思っていないようだ。冗談じゃない。この世界もあの地球と地続きだ。この世界も獣人であろうと亜人であろうと人々はリアルに生きている。
取り敢えず弱らせて拘束して元の世界に送り返してしまおう。元の世界が俺達の日本と同じだったら殺人鬼を放つようなものだから問題ではあるが…まずはあの傲慢な心を折ろう。
「お前の魔法はそんなものか⁉︎」
異界の魔導師を煽ると彼はブチ切れだようだ。
「捉えて性奴隷にしてやろうと思ってたがやめだ‼︎殺す‼︎生意気なエルフ風情がよ‼︎」
魔導師は天を仰いでヤバそうなスペルを唱える。
「メテオフォール‼︎」
高空からこのマイネークに向かって何かが落ちて来る気配がビンビンする。ヤッバイ魔法使えるなあいつ。まあこの世界の魔法はイメージだからな。元の世界でゲームに触れた事のない人間も滅多にないだろうし。
しかしこいつ本当にこの国の国民の命はどうでもいいんだな。
やがてマイネーク上空を覆う流星群が見えて来た。一直線に俺と後ろのアイアンゴーレムに向かって降って来る。
「はっはっはっ‼︎ 星に焼かれて蒸発してしまえ‼︎クソエルフ‼︎」
空を見て逃げ惑うマイネーク市民。一体目のアイアンゴーレムに隠れていたカイリ嬢達も打つ手立てがなく愕然と空を見つめていた。
慌てない。メテオフォールは宇宙に漂う遊星群を大地まで導く魔法。だったはず。ちなみに土魔法のひとつだ。遊星の知識がある魔導師なら使える。ただこの世界の魔導師は滅多に宇宙の知識を持ってないだけだ。
俺は慌てず光と闇の精霊の力を使う。そう、ブラックホールを作るのだ。こないだ超巨大魔獣に使ったサイズじゃない。マイネーク上空を覆うような大きいブラックホールだ。
光の精霊の力で小型太陽を作りひたすら核融合を進め闇の精霊の力でタイムテーブルを進める。制御に注意が必要だ。この大きさは危険過ぎる。ひとつ間違えばこの街どころか星ごと吸い込まれて消滅する。
太陽核が崩壊を初め重力崩壊を繰り返しやがてアレになる。
マイネークの街を覆うほどの黒き深淵が空に浮かぶ。ブラックホールだ。
空から降り注ぐ流星雨が残らずブラックホールに吸い込まれていく。
愕然と空を見つめる異界の魔導師。これ程の大魔法だ切り札だったに違いない。膝をついてガックリきているようだ。
だが俺を見てニヤリと笑う。そう、俺は今無防備なのだ。ブラックホールの制御に全神経を使っている。ブラックホールはでかくなり過ぎて制御が難しい。すでに石造りのマイネークの建物を次々に破壊し吸い上げ始めた。人に被害が出ない事を祈るしかない。これから細心の注意を払いながらブラックホールを消滅させるのだ。
奴はその隙を見逃さなかった。
魔導師は隙だらけの俺に向かって雨あられとファイアーアローを撃ち込んできたのだ。今は躱せない。万事窮すか。と思った瞬間である。
目の前に土壁がせり上がって来てファイアーアローを防いだ。だが硬度はそれほど高くなく防ぐと同時にボロボロと砕け落ちる。
そう、俺の作った壁じゃない。後ろを見ると息も切れ切れなカイリ嬢が魔法を行使していた。この土壁は彼女の土魔法だ。同時にニンジャのダークエルフの集団が魔導師に向かって跳びかかる。クナイを投げつけると同時に全員がファイアーアローを魔導師に撃ち込む。
慌てて攻撃を避ける為に空中へと飛び上がる魔導師。だがそれは悪手だった。舞い上がるマイネークの街の瓦礫が魔導師にぶち当たる。
「え⁉︎」
身体の制御が出来なくなった魔導師は落下せずそのままどんどん空中を舞い上がる。ブラックホールの引力圏に囚われたのだ。
「おい、ちょっと待てよ‼︎おい‼︎」
猛烈な勢いでブラックホールに吸われていく魔導師。助けてやりたいが無理だ。手が離せない。闇の精霊の力でどんどんブラックホールのタイムテーブルを進める。
そしてホーキング輻射を放ちブラックホールが消滅した時には…
マイネークの街並みは跡形も無く辺り一面瓦礫が散乱するのみで『異界の魔導師』と呼ばれた日本人の若者はこの世界から消えていた。
次話は土曜日の予定です。




