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87 砂漠の世界樹ちゃん

「頭領‼︎東国軍の強襲だ‼︎」


 このダークエルフの里が敵軍から強襲を受けたらしい。


「お前はここに入っていろ‼︎」


 俺は牢屋に戻されダークエルフ達は飛び出して行った。爆音は収まる気配が無い。女子供の悲鳴も聞こえる。もしかして女子供も皆殺しか?ちょっと我慢が出来ないぞ?

 風魔法で牢を斬り刻んで脱出する。外は建物が火の海になっていた。逃げ惑う住民。女子供も多いが女も子供も武器を持って襲い来る兵士に対抗している。住民全員が戦士なのかこの村は。だが敵の武器がエグい。火炎放射器である。建物を無差別に焼き払っている。銀色の鎧で全身を武装して焼き払いながら横一線になって進む。あれだ風の谷のナ◯シカで見た何とか兵の侵攻のようだ。逃げ出した女子供を構わず斬りつけている。庇う老人。阿鼻叫喚だ。

 どちらの味方をするというつもりもないが子供を斬ろうとする奴らは許しておけん。よく見れば可愛いエルフっ子がいっぱいおるではないか。半ば反射的に手が出る。

 銀色の鎧の兵士を風魔法でその場から吹き飛ばし上空高くまで吹き上げる。その後は自由落下で次々と地面に叩き付けられる兵士達。打ち所が悪かったのか動かない兵士もいる。

 火炎放射器を抱えた一団は土魔法の泥沼で底無し沼を作り全員を土に埋めた。

 敵に対魔法の手段がないのか罠によくハマるし攻撃魔法が飛んで来ないのが気になる。

 代わりにボウガンと思われる短い弓矢や鉛玉の銃弾が飛んで来た。風魔法のバリアで弾き飛ばす。

 向こうの兵士の顔色が変わる。化け物でも見たかのような慄き方だ。


「くそうサイラックのニンジャは大魔法使いか⁉︎」


 サイラックのニンジャではないが魔法使いですよ?それが何か?え?ニンジャは魔法使えないの?


 俺は火が付けられた建物が気になったので雨雲を呼び雨を降らせる。滝のような豪雨だ。砂漠地帯に積乱雲を呼び付けるのは結構な魔力を費やすが精霊を纏っているエンシェントエルフの力があれば造作もない。ついでに遠巻きに陣取る東国軍に稲妻を落としておく。これで全敵兵を捕縛出来るだろう。

 ぽかんと口を開いて有様を見ていたダークエルフの頭領を見つけて敵兵を無力化した事を告げる。

 ダークエルフ達は村人総出で兵士を拘束し、身ぐるみを剥いで兵士は放逐し指揮官は取引用に人質として牢に入れる。東国連邦の兵士は皆獣人だった。リカオン…というかハイエナというか山犬っぽい犬系の獣人だ。コボルトとでも言うのか。

 鉄格子がズタズタに斬り刻まれているのを見て唖然としてるダークエルフの若い衆。

 行使した魔法をやたら褒められるのであれくらいの魔法は皆さんも使えるでしょう、と返すと力一杯否定された。

 規模が違う、という。足元に沼を作る魔法はダークエルフニンジャでもよく使うそうだがあんな広域で使える術師はいないそうだ。しかも雷を魔法で扱える人間などいない、と断言された。まあ魔大陸でも雷の原理を知ってる人間しか使えない魔法だしな。


「村人を救ってくれてありがとう。あのような大魔法を駆使し、敵を倒すと同時に大量の水を降らせて火事を消し止めた。この砂漠の村にあれほどの水が降るのは初めて見たぞ。お主は本当に別の大陸から来た大魔導師なのか?」

 

 あちゃー、ここは雨なんか降った事がないのか。やり過ぎたかも。


 「この大陸には白いエルフはいないのかい?」

「少なくともこの砂漠にある国にはいないのう。外はわからんけどな」


 よく見ると村の後片付けをするダークエルフは女子供か老人しかいない。後一人前とは言えない若造くらいか。


「村人の労働者は出稼ぎに出てるのかい?もう片方…南国軍に雇われてるってとこかな?」

「むう…隠しても仕方が無いのう。その通りじゃ。わしらは戦争を喰いもんにして生活しておる。軽蔑するかね?」


 スキルを使って生きるのを悪いとは言わない。ただ俺は女子供を殺すような仕事をするのなら容赦はしない、と言っておく。

 頭領は複雑な表情で聞いていた。仕事次第ではそういう仕事でも請け負うという事なんだろう。それはそれで仕方ない、敵にならない事を祈るだけだ。


 砂漠のエルフは中々シビアだって事だ。


  しかし東国連邦の軍は砂漠の中をフル武装でやって来たな。なんか移動手段を持っていたという事か。あの重装歩兵を運べる移動手段は気になるな。っていやいや戦争に巻き込まれる訳にはいかんでしょ。さっさと砂漠を立ち去るのが吉ですわな。

 

捕虜の交渉や後始末はダークエルフ達に任せて俺はやる事やってさっさと去ろう。ここいらに存在する【転移門】を潰して回るのだ。


 転移銃を取り出してサーチをかける。村のすぐそば、オアシスに生える樹々の中に反応があった。オアシスの中央部に砂漠に不似合いな一本の楠木が立っていた。よく見ると光っている。なんか見た事ある樹に似てるな。大きさは全然違うが…エルフの里の世界樹にそっくりだ。樹に触ると小さな祠が浮かんで来た。大人が潜るのは難しいサイズの扉だ。170cmの俺が潜るのは辛いがなんか呼ばれてるような気がするので潜って行く。

 

 すると祠の先に小さな小さな幼女が座っていた。間違いないこの子はこの樹の精霊。つまり世界樹の幼木の精霊だ。俺を見つけるやいなや抱きついて来た。


「ありがとうなのじゃー火事を消してくれて。焼かれたらわらわ死んじゃうとこだったのじゃ。この土地のエルフは戦争バカばっかりでわらわの声を聞けるハイエルフが一人もいないんで本当困ってたのじゃー」


 世界樹ちゃんはダークエルフの住民に腹を立ててるのか辛辣である。まあ、燃やされそうになればガーディアンとしては失格か。


「よく生き残ってたな世界樹ちゃん。なんでこんなところに世界樹ちゃんが生えてたんだい?」

「わかんないのじゃー。気が付いたら此処に扉が開いて水が豊かだったからそのまま居着いたのじゃー」


 転移門でここにやって来たのか?どういう事だ?


「俺の国のエルフの里にも世界樹のロリババアはいるけど知り合い?」

「知らないのじゃ…他の世界樹にはあった事ないのじゃ…」


 一度エルフの里の世界樹に話を聞きに行かなきゃならないだろうな…。


「お願いなのじゃ。この里に残ってわらわを守って欲しいのじゃ。このままだとまた襲われて死んじゃうのじゃー」


 恐怖に駆られた幼女の頼み。…いや幼女に見えても俺より遥かに歳上だろう世界樹なんだから。

 ここのダークエルフもニンジャで生計立ててるくらいなんだから弱くはないはずだ。ダークエルフはここに世界樹ちゃんがいる事を知っているのだろうか?取り敢えず彼女の声を伝えて見るべきだろう。


 樹の中から出ようとすると行かないでとすがりつく幼女。じゃ付いてくる?と聞くとここからは動けないという。また来るからちょっと待ってて、と言って外に出る。すると樹の周りに長老始め村の面々が何人かのダークエルフが立っていた。


「お、お主、どこに消えておった⁉︎」


 やはり世界樹を感じ取れないようだ。


「貴方方、この土地に世界樹様がいらっしゃるのにお気づきでないのですか?村に火が放たれて大変怯えてらっしゃいますよ?」


 俺の言葉を聞いた長老はショックを隠せない様子だ。

 詳しく話を聞いてみればダークエルフの伝説ではこの地に世界樹ちゃんが存在する事は伝えられていたらしい。だが長い間の戦乱や生活スタイルを傭兵に変えたりしたせいで世界樹ちゃんの声を聴けるハイエルフが産まれなくなった。それ以来世界樹ちゃんとの関係は断絶してしまった、との事だ。

 生活の為、生き方が変化していくのは仕方ない事だが戦乱に特化したせいで巫女になるハイエルフがいなくなったという訳だ。


 俺は世界樹ちゃんの力があれば結界が作用しこの一帯がさらに護られるはずだと説明する。その為には失った信用を取り戻すべきだと。


「どうすれば世界樹様のお力を借りられるようになりますかの?」

「世界樹様の御声を聴ける巫女…ハイエルフを育てる事ですね。水火風土の四大属性の精霊の加護を受けられればその資格が得られるはずです。頑張ってください」

「精霊様の御加護…」

「エルフが四大属性魔法を使っていると親和性が上がって精霊様が寄って来てくださりますよ。複数の魔法が得意なエルフを育てて見て下さい」


 ニンジャで傭兵なダークエルフの皆さんは四大属性魔法は余り頻繁には使わないらしい。使って火と土に限定だそうだ。なる程肉体言語に特化してたんだ。先は長いな。ハイエルフを育てるまで何年かかるかわからないがこの村が滅ばない事を祈ろう。


 俺は世界樹ちゃんの元に向かい、ダークエルフに話した内容を説明する。すぐではないが何年か後には世界樹ちゃんと話せるハイエルフがこの村にも誕生するだろう。

 その間不安だったら魔大陸にいるもう一人の世界樹様の所に一時的に避難してはどうか、と提案してみる。


「世界樹様?」

「世界樹ちゃんの先輩が魔大陸にいるんだ。身体ごとそこに避難してもいいよ」

「行きたいのじゃー‼︎ 行ってみるのじゃー‼︎」

「じゃあこの村にハイエルフが育つまで行ってみるか!」


 うん、はしゃぐ幼女は美しい。

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