84 八人目のプロポーズ
更新1日間違えましたすみません。
「さて、親父よ。改めて説明して頂きましょうか。この国で何をやっていらしたのかな?」
ちょっと空気がピリッとなってみんなのプリンを食べる手が止まり視線が親父に集中する。一息深い溜息をすると親父が話を始めた。
「事の起こりは10年前だな。ユートには話したが父ちゃんは危険な【転移門】を潰す仕事をしてる。【転移門】知ってるか?」
カナコは当然としてリィカとレンはこないだ転移門の事故に巻き込まれたばかりだ。危険な事もよく承知している。二人は親父の言葉に頷いた。
「魔大陸の転移門はあらかた掃除して外の大陸に眼を向けたんだ。すると今いるこの地方に膨大な【転移門】の反応を見つけた。数千を超える反応にもう絶望感を覚えたね。正直生命を懸けてこの大陸に転移した」
俺も相当な覚悟をしてこの大陸に来たからな。当時の親父の気持ちも分かる。
「そして転移門を潰して回っていたら…この魔人国に指名手配されていた。生きる為に瘴気が必要な魔人にとっては【転移門】は大事な資源だったんだ。それを知るのには相当な時間と…友の犠牲があった」
カトレアさんが一瞬眼を伏せる。友とはカトレアさんの旦那さんの事だな。
「この土地には魔人が暮らし瘴気を得る為に危険な魔獣と共存していた。そのシステムは違う国から来た俺にはなかなか納得いくものてはなかったが…魔人の友のおかげで俺は魔獣を倒す事でこの国の中で信用を勝ち得た。だから俺は今もこの国の人々を脅かす魔獣を退治し続けるんだ」
「父上、魔大陸の家に帰って来ないの?」
リィカがストレートに聞いた。ミーユちゃんの前で!遠慮のない奴め。
「いや、そんな事はないよ?ただ俺には転移門作成銃があるからいつでも帰れるかなと思ってる」
「その結果が一年に一度しか戻らない結果か」
親父の息が一瞬止まる。痛い所を突いたようだ。判っているぞ。この男、とことんめんどくさい事が嫌いだしな。
そろそろ引導を渡そう。俺は更に親父を問い詰める。
「で? いつ八人目の奥さんを俺達に紹介してくれるのかな?」
ぐっと更に息が止まる親父。
「す、全て聞いたんじゃないのか⁉︎」
「親父の口から改めて聞きたいんでね。この屋敷の人達をどうしたいのか。魔王都の家族をどうしたいのか。その上で答えを聞きたい」
覚悟を決めたか親父が話し出す。
「カトレアさんは…友の愛した人だが…俺も…愛している。お前達の母さんと同じく大事な人だ。大事な家族だ」
親父はカトレアさんを見つめて話す。カトレアさんは親父を見つめ返して涙ぐんでいる。俺達に入る余地もないじゃないかよ。この男、子供達の目の前で再度プロポーズしやがった。
でも俺らの中では何も文句が出ない。やったね父ちゃん家族が増えるよ! だ。
「で、だ。俺の言ってるのは向こうではモンマ邸、こっちではこのモンマ屋敷、二つの家庭を別々にしてていいのか?って聞いてる訳」
俺がそう言うと親父は戸惑う。
「え? だって魔人は魔大陸には住めないんだぞ」
「だったら俺達一家全員『アフロディア』で会いに来ればいいよね。あ、グリュエラ母さんは妊娠中だから直ぐには無理かもしれないけど。それにその内サークライやカナコが魔人が魔大陸に住める方法を見つけるかも知れない。やってみなきゃわかんないよね。みんなどうにかしてこちらの家族にも逢いたいと思うんだけど。みんなに逢わせたい気はある訳?」
「う…あ、ある‼︎ しかし俺の仕事はまだまだ…」
この北半球の【転移門】の光は何もこの大陸西部だけではない。この地域に集中しているだけで中央部や東部にもまだまだ点在している。それを全部周りたいと言ってるのだこの親父は。
ああムカつく!
「いい加減休む時は休め‼︎ グリュエラ母さんの様子も心配しろ‼︎ あんたの仕事は俺が引き継いでやるよ‼︎」
あ、言っちゃった。とうとう言っちゃった。俺は俺で妹だけを愛でて生きて行きたかったんだけどなーこんちくしょう。
「…頼んだぞ」
親父がいつになく真面目に返す。カトレアさんは目でたい主人の帰還だと早速ディナーの準備に入る。ミーユちゃんはまた親父の側から離れない。反対側には競うようにリィカもくっ付いている。呆れる俺とレン。
カナコが何か思考に入ってる。
「…瘴気っていわゆる魔素の事よね。魔素は魔獣発生の原因だし魔石は魔素が固まって出来てる。つまり魔大陸にも存在する物よ。…何が違うんだろう?」
早速瘴気の解明を始めたようだ。このままカナコを信じよう。きっといい方向に持っていってくれると思う。
「あ、親父‼︎ 母さん達への報告は親父自身でしてくれよ‼︎俺達は手伝わないからな‼︎」
「ひでえ‼︎」
家長の責任でしょうがそれは。それくらいは自分で責任取れや。
翌日、俺と親父は魔人国宰相のムラサメ氏に呼び出され二人して中央都庁へ竜車に乗っていた。そういや親子二人でこういう乗り物に乗るのは初めてなんだよなぁ。
親父は親父でエルフのばいんばいんな美少女な俺とでは座りにくそうである。チラチラこちらを見ては視線のやり場に迷っている。いい加減慣れろ。
中央議会の会場に俺と親父が案内されると魔人国の議員達が拍手で迎える。親父は長年魔人国を蹂躙し続けた超巨大魔獣にとどめを刺した事、俺は魔人国防衛隊を助け巨大魔獣を倒した事を表彰された。とは言え瘴気のバランスを考えるとでかい瘴気の発生源を倒したわけだから全員が本当に喜んでいるのか判ったもんじゃない。ようく見ると野党と思われる一団は俺達を見る眼が割と厳しい。余所者に資源を狩られた、そんな風に感じているのかも知れない。勇者と持ち上げられてもやはり立場は微妙なのだな。
「表彰されるとどうにかなるの?俺この国の通貨で御礼が欲しいんだけど。なんか土産物買って行きたいし。後自由に往来出来る権利とか」
この国、狩れる野生の獲物はいないのでギルドもない。冒険者もいない。換金方法がわからない。
「ほんとお前我儘に育ったなぁ。少しは遠慮しろよ。俺達が魔人国民に顰蹙買うとカトレアさん達が困るんだぞ」
「何?もしかして褒めるだけ褒められて利用されてるだけなの俺達?」
「バカ‼︎やめとけ」
会議が終わって宰相室に通されている俺達の会話を生暖かく見守るムラサメ氏。
「もちろん報奨金もありますよ。我らの国は他国と交流がないので換金は難しいかも知れませんが。それと改めてユート嬢を勇者待遇でこの国にお招きしたい」
うん、これは利用する気満々だな。親父を見ると首を横に振っている。まあ乗っかるなという所だろう。
「勇者待遇も報奨金も入りません。ただこの国に家族がいるのがわかりましたので私達魔王国の家族が自由に逢いに来るのを了承していただきます。よろしくお願いします」
「う、ううむ。もちろんそれくらいの事は…いやしかし」
「ありがとうございます」
俺は俺の出来る会心の笑みで感謝の意を示した。
「何邪悪な笑み浮かべてんだよ」
次回の更新は水曜日です。




