83 プラックホールキャノン
両手に作り上げた超小型太陽を時間を巻いたようにさらにさらに核反応させていく。やがて太陽は年老いて赤色巨星、白色矮星、中性子星と変化、超新星爆発を起こし崩壊を始める。そして重力崩壊を繰り返しアレが誕生する。
ブラックホールだ。
俺の両手にはブラックホールが誕生していた。光と闇の精霊の力がないとなし得なかった作業だ。手のひらで億万年の核反応を作り上げるには核反応を弄れる光の精霊とタイムテーブルを弄る闇の精霊の力が必要なのだ。
俺は出来上がったブラックホールをそれぞれニ分割された巨大魔獣にぶつける。
物凄い勢いて螺旋状に回転しながら吸い込まれていく魔獣の肉体。周りに飛び散った肉片も残らず吸い尽くす。
「ユート‼︎ありゃブラックホールだろ⁉︎吸い尽くしたらどう処理するつもりなんだ⁉︎」
「見てなよ」
さらにブラックホールの時間を進める。やがて10の68乗年程経つと超高熱のホーキング輻射を放ちブラックホールは蒸発して無くなった。
その戦場跡には一欠片の肉片も残ってはいなかった。親父は戦場跡をサーチしまくり、魔獣の痕跡が残っていない事を確認する。そして振り返ってみんなの顔を見て一言。
「カナコ、レン、リィカ…お前達も…屋敷に行ったのか?」
何とも罰の悪そうな一言だ。
「諦めろ親父。全部知ってるぞ。取り敢えず屋敷に戻ってカトレアさんとミーユちゃんを安心させよう」
俺は親父の肩を叩いて諦めを促す。
カナコは『アフロディア』ロボを戦艦モードに戻す。すると中からフラフラとジュリアさんが出て来る。
「し、死ぬかと思った…た、倒したんですか⁉︎アレを⁉︎あの超巨大魔獣をとうとう⁉︎」
「ジュリアじゃねえか⁉︎ おいおいお前が中央を離れてどうするよ⁉︎魔人国防衛隊の要だろうが」
「ピンチの所をユートさんに救われましたよ‼︎私達が抑えるのが精一杯だった巨大魔獣を一撃ですよ‼︎」
俺の顔を見てやらかしたなと思ってるな親父め。取り敢えず中央都に帰ろう。全員で『アフロディア』に乗り込む。リィカが親父と腕を組んで離れない。だいぶ寂しかったようだ。久々の親父に会えてテンション上がってるな。ミーユちゃんに会ったら譲ってやるだぞ姉さんとして。レンはよく働いたな。魔術の腕も上がってる。もう立派な魔導師だ。
行きと違ってゆっくり目に魔人国を空から眺めながら戻る『アフロディア』。
瘴気の空を見ながら親父が呟く。
「邪神クラスの魔獣が産み出す瘴気は俺達には全く必要のない物質だが…この土地に転移して来た魔人族にとっては命綱だ。ままならねえな…」
「親父の事だ。一度は魔人族の魔大陸への移住も考えたんだろ?」
「…まあ無理だな。魔大陸は瘴気が薄過ぎるしその瘴気は魔獣が生まれる力に変換されて消費される。魔人はこの北半球の一部分でしか暮らせないんだ。」
まるで自分の事のように魔人の境遇を哀しむ親父。
「でさ。なんで魔王の親父がこの国では勇者って呼ばれてる訳?」
痛い所を突かれたらしく顔を赤くして黙り込んでしまった。
「何々、父上勇者になったのー⁉︎」
「魔王が勇者って…プークスクス」
「お父さんいい加減厨二病卒業してよねー‼︎」
追い討ちをかけるリィカ・レン・カナコ。あ、親父が膝を抱えて座ってしまった。自分の殻に閉じ籠ってしまったぞ。ここにはサークライがいないから助けてくれる人もいないし。
そんなこんなで再び中央都の親父の屋敷の上空に辿り着いた。屋敷の玄関付近にカトレアさん始め使用人全てが迎えに出ているようだ。『アフロディア』は静かに着地する。
俺達兄妹とジュリアさんが降りたあと、罰の悪そうな顔をして親父が降りて来る。安心した顔をする一同。
「旦那様…」
「パパー‼︎」
親父に飛びつくミーユちゃん。本当に嬉しそうだ。俺も見ていて泣けて来る。約束を守れて本当に良かった。カナコ達は微妙な顔してるが。あ、血が繋がってない事は言ってなかったっけ。うん、猛烈に親父に対するリスペクトが減ってるなありゃ。後でちゃんと説明しよう。
中央都の役人もまだ残っている。ん、よく見ると宰相もいるぞ⁉︎
「勇者マサオよ。報告を頼む。わしらには何が何だかさっぱりわからん」
「あー…長年の懸案であった超巨大魔獣の討伐を本日果たしました。犠牲になった者達もこれで浮かばれる事でしょう」
「…そうか。よくやってくれた。さすがは勇者マサオだ。…で、あれは何かな?」
宰相が『アフロディア』を指差して親父に詰問してるが親父も答えようがない。俺を見て助けを求める。
「うちの妹・ドワーフのカナコが作った空飛ぶ船です。あの船があれば【転移門】を利用せずに我々の住む魔大陸と行き来が出来ますよ」
「そ、空飛ぶ船…?」
「まあ、マサオ様のご家族ですからなあ…」
「そうじゃな…マサオの家族の事であるからな…」
なんか納得してくれてるみたいだからいいか。
「どうですかムラサメ氏、お茶でも飲まれていかれますか?」
親父が軽く誘って見るがムラサメ氏は断った。
「久々の一家団欒をしばらくは楽しんでくれたまえ。後日改めて話を聞かせて貰おう」
そう言って兵を連れて中央都庁に戻って行った。興味津々なカトレアさんを引きずって。
俺達はまとめてリビングに通される。親父の側にはミーユちゃんと残念三女リィカがくっついている。そこはカトレアさんに譲ってやれよと兄は思うぞ。レンが気を利かせてリィカを親父から引き剥がそうとするが聞かない。
俺は【ボックス】から作り置きしていたプリンアラモードを差し出す。途端に食い付くリィカ。不思議な表情でそれを見ていたミーユちゃんにもプリンアラモードを出してあげる。見た事のないスイーツにカトレアさんも反応する。マカロンの時といいカトレアさんも甘いものには目がないようだ。
仕方ない、俺は女性全員の分のプリンアラモードを取り出しテーブルに並べた。喜ぶ女性陣。メイドさんがニコニコとお茶の用意をする。親父が俺の服の袖を引っ張り、
「なあ、俺の分は…?」
「親父甘党だっけ…?」
「みんなが食べてたら俺だって食いたいじゃん」
【ボックス】の中を探るがプリンアラモードはもうないようだ。仕方がないので端っこで余っていたベルギーワッフルを出して渡す。しかしまた見た事のないスイーツに目を奪われたカトレアさんとミーユちゃんの視線が親父の手元に集中、親父は食わずに二人へ渡す。うん、悪かった。今度なんかご馳走するよ。
何となく朗らかな空気になった所でさあはじめよう
か。
「さて、親父よ。改めて説明して頂きましょうか。この国で何をやっていらしたのかな?」




