81 カナコズ空中戦艦
魔人国の上空に異世界の空中戦艦が浮いている。朝から何の悪夢だ?
するとスマホに連絡が入る。
「兄ちゃん起きた⁉︎この屋敷の前に着陸していいの⁉︎あ、待ってリィカ‼︎飛び出しちゃダメ‼︎」
カナコか‼︎これにカナコが乗っているのか⁉︎ よく見ると異世界の空中戦艦より二回りは小さい。全長50mくらいか。警戒艇くらいの大きさかな。これを作ったのかカナコが⁉︎
見上げてると船の甲板から赤い何かが飛び出すのが見えた。レッドドラゴン。リィカだ。
「ぎゃあああ巨大魔獣よおお‼︎」
「こんな門もない所になぜ⁉︎」
「ぼ、防衛隊に知らせろー‼︎」
屋敷の使用人達どころか門の外の市民まで大騒ぎである。この大陸にはドラゴン種はいないのだろうか。
「待って‼︎皆慌てないで‼︎アレ妹です‼︎アレもマサオの娘ですよ‼︎」
俺は徐ろに叫ぶがカトレアさん始め魔人の使用人は信じられないという顔をして固まっていた。
レッドドラゴンが俺の目の前に降りて来た途端に赤い髪のちんまい女の子に姿を変える。
「兄ちゃん‼︎フルーツパフェ食いたい‼︎作って‼︎」
食い意地がそうさせるのか。ニコニコの笑顔でいつものスイーツを強請るリィカの頰をギュッとつねる。
「ひたたたたた」
「知らない土地でドラゴンになるんじゃありません‼︎皆怖がってるでしょ‼︎」
周りの人を指差すとやはりリィカを見て固まったまんまだ。リィカはテヘッと照れながら一同に挨拶をする。
「妾はリィカ=グランディール=モンマ。モンマ家の三女じゃ。龍族であるぞ。この国は初めましてじゃな。おお、兄ちゃんここの人は皆目が赤いぞ。知らない種族の人じゃな?」
魔人と言えどドラゴンに言われたくはないだろう。
ぐりぐりと頭を撫でているとカナコから通信が入る。
「いい加減着陸地点を指示して‼︎なんか街の中でサイレンが鳴り始めたわよ⁉︎」
ヤバい、直ぐにでも中央都庁から人が来るだろう。取り敢えず屋敷横の広い芝生を指定する。よく手入れされていてあんな鉄の塊を置くのは申し訳なく思うが仕方ない。反陽子エンジンでの重力制御が上手くいってると見えて着陸シークエンスはとても静かだった。
空中戦艦の中から二人出て来る。ちんまいドワーフと鬼の眼鏡っ娘。カナコとレンだ。なんだレンまで連れて来たのか?
取り敢えず色々説明せねばなるまい。
俺は三人にカトレアさん親娘を紹介する。
「ここは魔人国。魔人の作った国だ。そしてこの屋敷はこの国での親父の家。こちらのご婦人は…親父の奥さんのカトレアさんだ。そしてその横のお嬢さんはミーユちゃん。俺達の妹だ」
「「「はあああああああああああああ⁉︎⁉︎」」」
そこから先は反応は様々だった。
「父上また奥さん増やしたのー⁉︎」
「帰って来ないと思ったら海外で二重生活かあんのクソ親父‼︎」
(こらこらクソ親父はやめなさいカナコ)
「本当に欲望に忠実というか…お兄も気を付けなよ‼︎」
(え、レン俺をそんな目で見てたの⁉︎)
「お兄も欲望に忠実でしょ‼︎妹LOVEだからまた幼い妹が出来て嬉しいんでしょ‼︎このロリコン‼︎」
なんで親父の所業で俺が責められてるの⁉︎納得いかないままだけどカトレアさん達に妹達を紹介する。
「改めて紹介します。こちらのドワーフの少女がマサオの長女・カナコ。隣りの鬼娘が次女のレン。この赤いドラゴン娘が三女のリィカです。他にあと三人妹がいます。ミーユちゃんを入れると…八人兄妹ですね。それに…今妊娠中の母もいますのでまだまだ増えそうです」
メイドの中から疑問が飛び出す。
「そ、その子が長女?ユートさんが長女では?」
「あ、俺は長男です」
一同が超微妙な顔をする。もういいよ面倒臭い説明したくない。
ほら中央都庁から人がやって来た。庭に止まっている戦艦を見て騒ついている。中から一人やって来る。
ジュリアさんだ。
「あ、あのユートさん?あれは何ですか⁉︎それと魔獣の目撃情報がいくつかあるんですが説明願えますか⁉︎」
面倒臭いので対人交渉はレンに任せよう。レンに軽くジュリアさんの立場を説明して後を任す。いやそんな嫌そうな顔すんなよ。兄ちゃんは忙しいんだ。
「カナコ、俺のスマホのGPS辿ったように親父のいる所へ飛べないかな?」
「電源を入れていればだけどね。ここまであたしらの電話やメールを無視してて電源入れてるとはとても思えないわね」
お互い腕を組みながらズボラな親父に呆れているともう一つアイディアが浮かんだ。
「カナコ、お前のGPSかレーダーでこの大陸を移動する邪神クラスの巨大魔獣の居所は判らないか?親父は超巨大魔獣を追跡しているらしい。魔獣の位置が判ればきっとそこにいる!」
「邪神クラス⁉︎あんなのがこの大陸に出るの?」
カナコは頭を捻りながら答える。
「あの空中戦艦はだいぶ異世界のアレを参考にさせて貰って組んだの。だから製作が早かったんだけど。異世界に行った時に粗方設計図とデータをコピーさせて貰ってね。確か異世界のレーダーのデータも入ってると思う。異世界のマクロ◯クオー◯ーは邪神のデータを持っていたはず。…多分私の空中戦艦でも邪神を追えると思うよ」
ビンゴ!何とかなりそうだ。
「え?え?ユートさん何がどうなっているんですか?」
ジュリアさんが話を理解出来てないようなので説明をする。
「あの鉄の船は俺の妹が作った空飛ぶ船です。あれなら親父の追っている超巨大魔獣を追えそうなのでちょっと親父の所へ行ってみたいと思います」
「ええええええええ⁉︎」
カナコに出発の準備を頼むとリィカが気色張る。
「巨大魔獣と戦うのか⁉︎リィカもやる‼︎」
ジュリアさんに聞いてみる。
「親父の追っている超巨大魔獣は退治していい個体なんですか?」
「え? え、ええ。瘴気の恩恵より被害の方が大きいので…だけど勇者ですらこの5年倒すに至らなかった魔獣ですよ⁉︎」
親父が追いかけるたびにいい所で逃げられる、の繰り返しなんだそうだ。なんかソシャゲの大討伐クエストみたいな敵だな。ならば集団で立ち向かえば、という所か。
「あ、あたしも行きます。関係者としてこの目で確認したいんです。連れて行って下さい‼︎」
ジュリアさんが俺に激しく懇願して来る。冷静なジュリアさんがこういう面を見せるとは。カナコに聞いてみる。
「カナコ、あの船定員は何人だ?お前の事だから普通の船じゃないんだろ?」
「そうね。変形機構を積んでいるから見た目ほど人は乗せられないよ。10人くらいかな」
「じゃあ俺とジュリアさんくらいは大丈夫だな」
ジュリアさんを連れて俺達は親父を探しに出発する事となった。屋敷に残るカトレアさん達に親父を必ず連れて帰る、と約束して。




