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79 親父の別邸

「で、マサオは今どこに?」


 俺は当初の目的の為居場所を聞く。 


「1ヶ月前に現れた巨大魔獣の後を追って出かけたままだ。いつ戻るのかはわからんのだ。すまない」


 巨漢の頭をぺこりと下げるムラサメ氏。

 本当に勝手気ままな親父だ。俺は【ボックス】からスマホを取り出して親父に電話を掛ける。メールやLIN◯では絶対返事しないのだあの男は。しかしいつものように出なかった。


「な、なんだねそれは?」


 ムラサメ氏はスマホを見て驚いたようだ。そう言えばこの国は技術はある程度発展しているようだが通信機は存在するのだろうか。


「親父と連絡を取る魔道具です。呼び出しに出なければ通じませんがね」

「なんと連絡を取る方法があると言うのかね。ふうむ、しかし呼び出しに応じぬ訳か。ならばユート嬢にはしばらく首都内のマサオの邸宅にて滞在して連絡を付けていただけまいか。我々が幾ら介添人を付けても行方が判らなくなってしまうのだ。我々ではお手上げだ」


 横でジュリアさんがうんうん頷いている。こちらの国でもフリーダムなようだ。しかし気になる事を聞いたぞ?


「この国に家がある…のですかあの親父」

「うむ。我が国が恩賞として無理矢理押し付けた屋敷じゃが執事や使用人達が留守を預かり快適に住環境は維持されておるよ。ジュリア、後でご案内して差し上げろ。ではユート嬢。貴女自身への恩賞を考えたいのだが…」

「自由にさせて貰えれば何も頂かなくてもけっこうです。この国に危害を加える意思はありませんし魔人に瘴気が必要だという事も理解しました。その為に【転移門】もいくつか維持されているという事もね。ただ、うちの家族は少し常識から外れるかと思うので事前にそれはお伝えして置きます」


 ドラゴンとかエルフとかドワーフとかいるからな…どんだけ非常識か聞かれないと言わないけど。ムラサメ氏は非常識という説明に深く肯きながら俺の願いを聞いてくれたようだ。滞在費の幾ばくかを親父の屋敷宛に補助してくれるという。正直ありがたい。しばらくこの国の文化を楽しもう。


「ジュリアよ。ユート嬢も自覚しておられるようだがマサオの身内だ。恐らくマサオ同様非常識な所があるやも知れん。しっかりサポートを頼むぞ」


 あ、ジュリアさんに丸投げした。ジュリアさんの顔が心なしか曇っているぞ。まさかのパワハラ現場に立ち会うハメになるとは。

 



「ではユートさん、お父様のお宅にご案内いたしましょうか」


 諦めたように案内をしてくれるジュリアさん。しかし使用人のいる屋敷か。こじんまりとした家なら好き勝手出来て楽だったんだけど使用人が必要な規模の屋敷か…面倒臭いな…。

 すでに屋敷には先触れが行っているのでいつでも出かけられるとの事。


「ちょっと待って下さいね。国の家族に連絡を取ってみますから」


 隠しても仕方がないのでスマホで家のカナコに連絡を取る。


「あ、兄ちゃん?どうだったお父さんいた?」

「それがさあ…」


 一通り顛末を説明するとカナコが特に巨大魔獣との戦闘のとこに喰いついた。そして、


「うん決めた。あたしもそっちに行くわ。数日かかるけどスマホのGPS辿っていくから電源切らないでね」

「あ?どうやって来るんだよ⁉︎」

「飛んでいくんだよ」


あーマジか。アレで来る気か⁉︎特殊可変装甲車。嫌な予感しかしない。あ、電話切りやがった。


 仕方ない、親父の屋敷とやらで待つとするか。ジュリアさんと共に竜車で移動する。中央省庁から30分もかからない所にお屋敷街があった。その中でも特に広い場所に入っていく。

 え、いやいや何この敷地面積⁉︎周辺で一番広いじゃない⁉︎どういう事⁉︎…魔王都のモンマ邸より断然広いぞ⁉︎

 開いた口が塞がらないでいたらそのまま門を潜って竜車が進む。見ると屋敷の前に人がずらりと並んでいる。十人は下らない。なんかこういう光景見た事ある。イギリスの貴族のドラマかなんかだっけ?竜車が彼らの前で止まる。


「ようこそいらっしゃいましたユートお嬢様。使用人一同お嬢様のご来訪を歓迎致しております。マサオ様のご家族にお会い出来る日が来ようとは夢にも思いませんでした。私は使用人筆頭・執事をしておりますヨハンソンと申します」


 ヨハンソンと名乗る魔人の執事は細身の壮年の紳士に見える。続いてメイド長、家事メイド、料理人・庭師と紹介されるが覚え切れる訳がない。

 ジュリアさんが耳打ちして教えてくれる。貴族のいない魔人国では権力のある立場の人物を敬いそんな立場にいる人物に仕える事を夢見る層が一定の割合で存在しているのだという。その中でも勇者の屋敷の勤め人は市民の垂涎の的だそうだ。彼らは勇者の忠実なる僕であり熱狂的な勇者のファンでもあるそうだ。

 ヤバいじゃん。身内なんてめっちゃ興味持たれちゃうじゃん。

 ほら、メイドなんて俺に何か聞きたそうで仕方ないって顔してるし。


「じゃあたし帰りますね」

「え、行っちゃうんですか?(一人にしないで)」

「また明日来ます。(頑張ってくださいね)」


 ジュリアさんが竜車で戻って行ってしまった。仕方ないコミュニケーションを取るか。

 俺は執事のヨハンソンさんに親父のこの家での暮らしを聞く。どこまで親父が自分の事を知らせているかが気になるし伝えてはならない事があるのかどうか把握したい。

 俺の顔を見てにこやかに微笑むヨハンソンさん。


「なるほど。とても美しいお嬢様ですが目元などマサオ様に瓜二つですね。茶黒がかった瞳がマサオ様を思い出させる」


 屋敷は何処の宮殿かというくらい親父には不相応な建物でまるで生活感がない。絶対親父はこんな所に寝泊まりしてるとは思えない。


「そうですね…お察しの通りマサオ様はほとんどこの屋敷にはお帰りになる事はございません。この屋敷に勤める者達はただただ自分の好きで働いて屋敷を維持しているのです。お気になさらないように。ただよろしければ勇者様の…マサオ様のお話を私達にしていただけませんでしょうか?マサオ様は自分の身の上を一切お話しにならないお方なので」


 なるほど、皆勇者マサオの情報に飢えているのだなぁ。随分とストイックな生活をしているんだ。あれほどの女好きが。てっきりこっちにも家庭を隠し持っていて現地妻に隠し子でもいるのかと思った。


 屋敷内に入るとメインのスロープ階段の麓に華美ではないが清潔でセンスを感じるドレスに身を包んだ魔人の女性が立っていた。美しい女性だが薄幸そうだ。その隣には可愛く着飾った4歳くらいの幼女が一緒だ。…これは…もしかして。


「奥様、お嬢様。マサオ様のお嬢様でございます。ユート様こちらのお二人は…マサオ様の奥様とお嬢様でございます」


 現地妻と隠し子いたー。


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