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78 魔神国の勇者

 クソ親父…魔王が魔人国で勇者をやっていた。何の冗談だ?


 ジュリアさんは負傷した防衛隊員の治療をしながら俺に感嘆と何かを納得したような眼差しを向けている。詳しい話を中央都庁でするというので俺も一緒に竜車に乗って帰投する事にした。


 俺は何故あんな危険な魔獣を呼び寄せるのかを聞いてみた。すると防衛隊の隊長が苦々しい顔でこちらを睨む。その隊長を制してジュリアさんが答えてくれた。


「私達の祖先が【転移門】を通ってこの土地に移住して来たというのは知ってる?」

「ええ」


 端の村の駐在さんがチラチラ説明してくれた。魔人が何故この土地に居着いたのか。この大陸のこの地方には瘴気が溜まっている場所があったという。恐らく昔から邪神クラスの魔獣が住んでいたのだろう。


 ジュリアさんは話を続ける。

 初めの転移者は偶然この土地を見つけたようだったが生きる為にある程度瘴気が必要な魔人にとって理想の新天地だったようだ。

 新天地を求めた魔人が魔人を呼び寄せいつしか国を形成するほど多くの魔人が溢れた。

 だがこの地に溜まっていた瘴気はこの星の大気に溶けて徐々に薄まっていく。


 既に国まで作り上げていた魔人の先達は焦ったようだ。このままでは新天地が住めない土地になる。

 そこで魔人のお偉いさんが一計を案じた。瘴気を纏う邪神クラスの巨大魔獣を定期的に呼び寄せる、という計画をだ。

 その計画は上手くいったとは言えなかった。


 鍵をかけた転移門はこちらから使用は出来なくても前に餌を撒く事は出来た。魔人は前にいた世界で邪神に憧憬が深く彼らが何を好むか良く知っていた。不浄な環境だ。呼び寄せたい門の前に屠殺場やゴミ捨て場、刑場などを置いたのだ。不浄が貯まるとアレ…邪神が現れるシステムが構築された。


 だが、呼び寄せるだけで彼らが暴れ回りやがて飽きて立ち去るまで魔人達は手が出せなかった。なすがままのシステムだったのだ。当然呼び寄せる度に甚大な被害が出た。

 そのうち諦めの感情と共に自然災害だと割り切る事にした。


 魔人国はそういう歴史の中に出来上がった国だった。

 平和に見えてなんて歪な国だ。


 ジュリアさんがそこまで話し終わった頃、竜車が中央都庁に到着した。自分達の報告が終わるまで自室で待機していてくれ、と言う。

 大人しくゆっくりシャワーを浴びて待つ事にした。


 魔人が生きていくには瘴気が必要なのだとわかったが人間や獣人・亜人には特に無くても平気なものだ。だが我等の魔大陸にも瘴気は存在する。魔獣を産み出す源だからだ。ジャングルの奥やサバンナ、魔獣の生息する地域に点在すると言われている。狩猟民族である魔王国も広い意味では瘴気の恩恵を受けている訳だ。


 そんな事を考えつつのんびりしていたら再びジュリアさんが迎えに来た。後ろに事務職の様な格好の細身の魔人が二人付き添っている。


「一緒にいらしてください。首相がお話があるとおっしゃっています」


 ふうん、この国は民主主義国なのか。やはり社会的にはかなり成熟しているんだなぁ。


 ジュリアさんの後について行くとそれなりの調度品に囲まれた部屋に通された。中央に重厚な木製の机。椅子には髭を蓄えた身体のでかい魔人が座っている。前に柔らかそうなソファ二脚とテーブル。ソファに座れと案内される。


「ようこそいらっしゃった勇者の娘よ。私はこの『カロッセリア魔人国』の宰相を務めるムラサメだ。貴女が勇者を追ってこの国に現れた事、また巨大魔獣を一人で殱滅せしめる魔力を有する事、しかと拝見させていただいた。この国の国民の命を救って戴いた事、誠に感謝する」


 ムラサメと名乗る巨漢の魔人は俺に握手を求めて来る。いやなんだこの膨大な魔力。相当強いぞこのおっさん。


「初めまして。ユート=モンマです。貴方方のおっしゃる勇者というのは私の父・マサオ=モンマで間違いないのでしょうか?」

「そうですね。マサオで間違いありません。何故彼が勇者と言われるのかお話させて頂けますかな?」

「そうですね、大変気になります。何せ彼は私の国では魔王と呼ばれる男ですから」

「ま、魔王⁉︎」


 うむ初耳だったか?ジュリアさん初め宰相殿も驚いてるようだ。


「いや、魔物を退治する冒険者達が住む国を纏め上げて王になった、それだけの事ですよ。我等の国は『魔王国』と呼ばれていますので」

「なるほど、冒険者であり王…魔王であったか彼奴め…」

「王の責務など一度も果たした事などないですけどね」

「なんと辛辣な事よの」


 ムラサメ氏はニヤリと笑いながら俺と握手を交わす。少なくとも親父の性分は理解しているようだなこの人。


「十年前かの、マサオがふらりとこの国に現れたのは。見ての通りこの国には魔人しかおらんでの、異種族の人間はまず転移難民だと思われた。しかしマサオは大変な危険人物だった」

「危険人物?」

「手当たり次第にこの国の【転移門】を破壊し始めたのだ」


 あー親父ならそうするよな。心から【転移門】を憎んでいるからな。


「破壊工作をやめさせる為我が国の防衛隊員が出撃したがことごとく撃退された。恐ろしい強さだった。そんな時に奴の前に巨大魔獣が現れた。その当時は魔獣は自然災害、暴れまくり飽きて去るまでわしらにはなす術がなかった。それをー

 マサオが立ち向かい一人で巨大魔獣を屠った」


 ヤバい。人間だよな親父。邪神クラスの魔獣倒せるのかよ…エンシェントエルフ並の戦闘力あんのか…。


「わしらは一般市民を魔獣から救ってくれたマサオに感謝し、和解を申し入れた。この国の成り立ち、システムの説明など情報を開示してな。なかなか納得はしてくれなかったがの。

 その内自分は人が苦しむのが嫌だ。だから魔獣を見つけ次第退治する、と言い張った。我々は瘴気補充の為に必要な我が国内の【転移門】を破壊しない事を条件に彼の自由行動を認めた。そして今に至る。

 一般市民からはいつしか彼の行動故に勇者と言われるようになったのだ。

 そして今も彼はこの大陸で巨大魔獣を狩っている。

この国を活動拠点にしてな」



 はい、バカ親父この大陸で好き勝手やってましたー!

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