77 魔人防衛隊
ストックが怪しくなって来ました…
巨大魔獣。中々のパワーワードを聞いた。
警報が鳴り響き建物内では人々が右往左往している。
「ちょっと‼︎予定より早過ぎる‼︎誘導班は何やってたの⁉︎」
「勇者はまだ戻って来ていないのか⁉︎」
「まだだ‼︎今回は防衛隊を当てる‼︎」
「瘴気の補充が完了するまでこちらからは手を出すなよ‼︎」
気になるパワーワードが続々と飛び出して来る。すっげー気になるよ⁉︎
「すいません警戒警報が発令されましたのでお部屋の方に戻って頂けますか?」
ジュリアさんは俺を部屋に押し戻すと慌てて何処かに行ってしまった。
うむ、見たいな。巨大魔獣。ここに閉じ籠っているだけだとこれ以上の親父の情報も手に入らないだろうし、好きに動くか。
実は七柱の精霊を降ろしているエンシェントエルフは身体を精霊化出来る。以前親父との模擬戦で知った能力だ。なので精霊化して壁をスルスル抜けて行く。
表に出ると巨大な竜車に武装した魔人の戦士が何人か乗り込む所だった。彼らが防衛隊か。
さて巨大魔獣は何処かと外の景色を眺めてみたら一目でわかった。空が紫色の怪しい空気に包まれている一画がある。ヤバイなあれ。邪神の時とおんなじ空気だぞ。
巨大な竜車が一直線に怪しい雲を目指して移動を始めるので俺も隠遁魔法を纏い竜車に着いて行く。それと同時に風魔法で車内の会話を拾う。
「勇者がいなくてアレを抑えられるだろうか?」
「勇者の指導で鍛えた我等だ。やり遂げねば国民の生命に関わる」
「戦える力のある者の責務だ。気合いを入れろ」
なんか悲壮な雰囲気だな防衛隊。それにしても本来はアレに対応出来る勇者がこの国には存在するらしい。魔人の勇者か。見てみたいものだね。
防衛隊が瘴気の雲の下に到着した。想像通りだ。全長100mを超える巨大なマンモス型の巨獣がのしのし歩いている。長い鼻の上部に巨大な単眼が瞬いている。いやアレももう邪神クラスだろう。
防衛隊の竜車の中から見覚えのある女性が出て来る。ピッチリとした戦闘スーツに身を包んだジュリアさんだ。何か機械の箱を抱えている。メーターが見える。
「瘴気濃度はクリアしているか?」
「まだ不足してます。3時間は倒さないで」
「難しい事を言う。全員戦闘用意‼︎3時間足止めするぞ‼︎」
「「「「「おう‼︎」」」」
各隊員がマンモスの足の関節を狙ってに魔力弾を放ち始める。結構な高威力の魔弾だ。やはり優れた戦士達なんだろう。しかしマンモスの膨大な魔力量は削れず進行スピードが少し緩むが足には傷も付いていない。隊員達も想像外だったのか動きが一瞬止まる。
そこを狙ったかのように巨大な鼻が振り下ろされる。隊員達が慌ててわらわらと逃げる。直撃は受けていないようだが吹き飛ばされた隊員もいて酷い事になってる。
「態勢を立て直せ‼︎ブルーはイエローをフォロー‼︎ピンクは回復を頼む‼︎」
ジュリアさんがイエローらしき甲冑の男に回復魔法を放つ。ジュリアさんがピンクなのか。
態勢を立て直し改めてマンモスを取り囲む位置に五人の防衛隊員が並ぶ。ピンク…ジュリアさんが魔術の呪文を唱え始めるとマンモスの足元に魔法陣が発生し光の鎖が伸びてマンモスの四肢と長い鼻に絡み付く。マンモスの動きを止めたようだ。さすがに五人の魔人の魔力の鎖は強力だ。
しかし3時間もこのまま押さえ付けられるとは思えないが…
周りにいる警察官のような服装の人に聞いてみよう。月の魔法で見た目を魔人らしく変装させる。と言っても瞳を赤く見せるだけだが。
「なんですぐにアレを倒さないの?」
防衛隊の竜車の影から現れた俺を見て関係者だと思ったらしく色々話し始めた。
「折角瘴気充填の為に呼び出したのにすぐに倒せる訳なかろう」
呼び出した⁉︎ 魔人国はアレをワザと呼び出したのか⁉︎あんな危険なモノを⁉︎
「魔人国の瘴気は補充しなければ薄まり続ける。薄くなったら我等魔人は生きて行けぬからのう」
この国に薄く漂う瘴気は自然のものではなく邪神で賄っていたのか。つまりこの国は邪神を定期的に呼び寄せては瘴気を補充し、キリのいいところで撃退を繰り返しているのか。
そんな切羽詰まった戦略で大丈夫かこの国?
さらに詳しく話を聞くと十年前に勇者が現れるまでは巨大魔獣は呼び寄せたら暴れまくり飽きて立ち去るまで誰にも手出しが出来ない自然災害だったと言う。
勇者がいてくれて初めて対処の方法が確立されて格段に被害が減ったそうだ。へえ、すげえな魔人の勇者。
そんな話をしていると2時間は経っただろうか。徐々にマンモスを拘束していた鎖が弱まる。むしろよく保ったものだ。あれだけの鎖を維持する魔力は尋常な量じゃない。しかし…
マンモスの鼻が拘束を破った!すかさず鼻を振り回す!
巻き込まれ吹き飛ぶ防衛隊の面々‼︎魔力も相当消費しているようでみんながみんな吹き飛ばされた位置から立てないようだ。
これはヤバい‼︎ 生命に関わる‼︎
そう思った時には彼らの前に飛び出していた。
「あ、貴女…ユートちゃん⁉︎なぜここに⁉︎それに何故瞳が赤く…」
あ、変装してたっけ。元に戻す。
「…アレ倒すけどいいよね?」
「む、無理よ‼︎巨大魔獣は勇者以外追い返すのが精一杯で…」
俺は七柱の精霊の力をフルに使う。両手に光の剣を発生させ振り回す。マンモスの鼻と牙が吹き飛ぶ。がゆっくりと鼻が断ち切れた根元から再生を始める。こんな所もクトゥル◯邪神と同じか。たまらん魔力量だなこのマンモス。構わず四肢も斬り刻む。大木の様に太い脚は一撃で吹き飛ぶ様なことはなかったが自重を支えきれずその場に倒れ伏した。
苦痛と憤怒の雄叫びを上げるマンモス。物凄い瘴気を放っている。
風のバリアで弾いてはいるが不快なのでそろそろトドメを刺そう。
俺は掌に光の玉を作り、水素原子をヘリウムに変換し続ける。そう、小型の太陽を作るのだ。ひたすら核融合を繰り返す太陽。それをマンモスの一つ目に押し当てる。
ジュルジュル溶けていくマンモス。やがてその巨体の中心まで届いた太陽はマンモスの全てを吸い尽くして虚空に消えた。
倒れ伏した防衛隊員が唖然として虚空を見つめていた。
俺を見つめてジュリアさんが呟く。
「…さすが勇者の娘さんね。勇者しか倒した事のない巨大魔獣を一瞬で消滅させるなんて…」
は⁉︎
誰が勇者だって⁉︎
何してくれてんだクソ親父⁉︎




