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76 魔人国首都へ

 この国…魔人国は北半球の大陸の西部に位置している。魔大陸がオーストラリアくらいの位置だとすると魔人国はヨーロッパ辺りだろうか。まあ地球に当て嵌めてもあまり意味はないが。


 驚いたのは彼らは魔獣を牧畜しているという事だった。魔獣と言えば魔大陸では害獣でその肉は食用になるが大抵駆除や討伐で入手するものだ。この国では小型の魔鳥や魔豚、魔牛を飼育して食用に利用しているという。小型の竜は食用ではなく労働力だそうだ。

 日常に討伐がないというのであれば冒険者という職業が存在しないのでは?と思ってしまう。

 実際魔人さんに聞いてみたらこの国には冒険者という職は聞いた事がないと言う。同じ世界でも所違うと随分変わってくるもんだなぁ。


 お巡りさんの奥さんの家事をお手伝いしながらこの国の生活様式を聞いたりするうちに迎えが中央からやって来た。

 大きめの三頭立ての竜車からガタイの良い警吏官が二人と事務官らしき細身の眼鏡女性が降りて来た。この人達も凄まじい魔力量だ。

 

「こんにちは。私はこの『カロッセリア魔人国』の難民対策委員のジュリアと申します。【転移門】難民の保護官を務めております。貴女のお話をお聞かせ願いますか?」


 丁寧な対応痛み入ります。俺は名前とやって来た国、親父を捜しに来た事を告げる。マサオという男がこの国に来なかったか?と。

 ジュリアさんは親父の名前を聞いて微かにビクンと肩を揺らした。これは何か知ってそうだ。てか何かやらかしたのか親父?


 取り敢えず中央で保護をしたいと言うので大人しく着いていく事にする。

 ジュリアさん一行は一晩休んでとんぼ返りで俺を連れて中央に戻る事となった。勤勉だね。


 竜車に揺られて移動するのはこの国が初めてだがこの三頭立ての竜車は結構早かった。車体のサスペンションがいいのか魔王国の魔馬車や聖王国の魔犀バスより乗り心地が良い。

 驚いたのは街道の整備だ。流石にアスファルトとかではないが丁寧に土が固められているし道の中央が盛り上がって両端に溝を作り排水の事も考えられた近代的な道路だ。わだちも定期的に固められて整備されてるのだろう。

 ほぼ1日で辿り着ける距離ごとに何軒かの宿があり街道を通る人々が休める仕様になっている。害のある魔獣が出て来ないから出来るシステムだ。なので野営などする必要なく宿に泊まれた。女性(見た目は)だから優遇してくれたのかも知れないが毎晩風呂にも入れた。


 そうして三日後には『カロッセリア魔人国』の中央都に辿り着いたのだった。


 魔人国の中央都の建物は中世ヨーロッパ風の煉瓦造りの建物が多いようだ。煉瓦を焼く技術、石を正確に切り出す技術を持っているという事だ。魔王国の場合は技術というより魔法建築で何とかしてるって感じだしな…


「もちろん魔法建築ですよ。図面はきっちり引きますが」


 都市計画の図面を引く専門の技術者マイスターがいるのだという。その後有り余る魔力を使った労働者が正確に組み上げる。めっちゃ社会システムしっかりしてないか?この国。

 


 中央都の政府の建物で保護された俺。しばらくここで休んで、とワンルームの部屋に通される。ベッドにテーブル、小さい水回りにシャワー室とトイレが備え付けてある部屋だ。水回りもトイレも魔石がふんだんに使われている魔道具らしい。魔道具のレベルも魔王国の物とは段違いである。魔王国の下水環境は各家庭レベルで浄化槽でスライム処理だったりするがこの街は恐らく上下水道が街中張り巡らされている。

 ベッドもフカフカでテーブルの上には何かしらの摘めるお菓子がお茶と一緒に置いてある。


 中々の快適な部屋だが何となく軟禁されたのではないかと思わないではない。

 部屋の周りからビシビシと監視されてるのを感じるからだ。


 俺は実は魔人国に入った段階で身体に全精霊を降ろしていた。七柱の精霊の一人、月(闇)の精霊は魔力探知に特に敏感でこちらの魔力量も隠遁してくれる。恐らく俺の魔力量は魔人には極小にしか感じられていないだろう。逆にこの国の魔力の流れがよく見える訳だ。都市内の魔道具や魔人それぞれの魔力も感じている。

 さて監視だ。【転移難民】を保護しているというが多分過去の少なくない転移難民の中には魔人国に仇を成した犯罪者もいたのだと推測される。恐らくその警戒を兼ねてるのだと思う。いい人間ばかりじゃないからなぁこの世の中。

 親父がその犯罪者側にいない事を願うばかりだが…

 名前を出したから警戒された、とも思われるんだよなぁ。

 取り敢えず向こうからアプローチがあるまでこちらからは何も行動しないでおこう。



 食事は建物内の食堂で取らせてくれた。ジュリアさんが迎えに来る形で部屋から出られるようだ。どんな食材・メニューがあるのかまるでわからないので日替わり定食を頼んでみる。


 …驚いた事にチキン南蛮定食だった。甘酢やタルタルソースが存在するのかこの国は。しかもめっちゃ美味い。ご飯はないようなのだがコッペパンとバンズが選べてバンズで自分で挟んでバーガーで食べるとなお美味しい。

 食後にアイスクリームも出て来る。畜産に力を入れてると本当に食が充実するなぁ。その日は満足して眠りについた。



 翌日は朝からジュリアさんにテラスで尋問を受ける。何例かあった魔大陸からの転移難民のリストを照らし合わせながら説明をしていく。十年以上前は割と頻繁に難民が来ていたようだが十年前からめっきり居なくなったそうだ。

…親父が魔大陸内の【転移門】を潰して回った成果だな、それは。


 俺はこの国の魔人は他の国や他の次元世界に転移門事故を起こしたりしないのか聞いた。


「祖先の使った転移門には皆『鍵』をかけてあるから私達には使用出来ないのよ。だから事故は外からやって来る案件ってわけ」


 『鍵』。そんな技術があるのか。たが詳しく聞くとそれはすでに失われた技術であり再現は現在不可能なのだという。…本当かどうかは判らないけど。


 見せて貰ったリストには親父はもちろん知っている名前も無かった。そもそも十年以上前の魔大陸の住人なんて全く知らない。


 しかしどう見ても親父を知っているという事実を隠しているこの人達の目的は何だろう?


 ジュリアさんが訝しげに質問をする。


「ユートちゃんはパニックにならないのね?知らない国に飛ばされてもう二度と自分の家に帰れないとか絶望感と不安感に襲われないのかしら?」


 なるほど、側にいても監視してても俺が全く不安感を見せなかったから更に怪しく見えたのか。これは失敗したなぁ。そりゃ自分の好きな場所で好きな時に帰れるからなぁ。ただでさえ歳相応の女の子に見えないと言われまくっているのに不安の一つもないようではなぁ。最初から素直に難民とは思われてなかったって事かな。


 さてどう切り返すべきか悩んでいると…


 ビービービービー‼︎


 突然建物内に警報が鳴り響く。建物内の職員が全員立ち上がる。


「S4地区に巨大魔獣出現! 地区担当者は対処用意‼︎」


 巨大魔獣だって⁉︎

 

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