73 艦長さんとコンタクト
艦橋内は椅子とかないので作戦室らしき部屋に移動する事になった。
椅子とテーブルとホワイトボードのある部屋だ。紅茶を出されるが何が入ってるか分からないので【ボックス】からペットボトルのコーラを出して飲む。
俺を見て艦長始めクルーが騒ついてる。だから言ってやる。
「魔法見た事ないの?」
「「「ま、魔法…」」」
「散々見せたでしょ?炎とか雷とか」
「き、君は魔法の世界の住人なのかね…?」
髭を蓄えた艦長らしきおじさんが問う。
「魔法が使える世界、かな?ドラゴンもドワーフも獣人もいるよ。みんな仲良しだね」
「雷、と言ったね、我々のヴァルキュリアスを行動不能にした雷撃は君の魔法だった、と言う事だね⁉︎」
あの可変戦闘機か。バルキ◯ーじゃないのか名前。掠ってるけど。
「俺の世界から迷い込んだドラゴンを虐めていたからな。言っとくけど背中に仲間を乗せて無かったらあの戦闘機程度ならドラゴンに撃ち落とされてたぜ」
艦長がタブレットに撮影したドラゴンの画像を表示する。拡大すると背中に確かに四人の人影が見える。
「我々もドラゴンを追跡していただけだ。人影は確認していたからな」
「…そうかな? 【悪魔】の仲間だと判断して攻撃してなかったか?」
「悪魔⁉︎ あの化け物達を知ってるのか⁉︎」
「俺達の世界にも現れるからね」
「「「「…なんと」」」」
一同が騒つく。本題に入るか。艦長らしきおっさんを見据えて切り出す。
「あんたらがあの邪神を追い払ったのは知ってる。アレが何処から来て何処に消えたか知ってるか?」
まあ国家級機密なんだろう言わなきゃ言わないでいいしこれからも頑張って退治してくれ、と思うだけだ。【転移門】は危険な物だけど魔力を感知しない限り自分で開く事はない。この世界の住人なら自力では開けないだろう。
艦長はしばらく黙り込んだ後切り出す。
「…あの正体不明生物群はこの星での古い記述では数百年前、歴史の教科書に出て来る自然災害だ。気象変化として光の帯を観測すると高確率で何かしらの正体不明生物が現れる。我々は正体不明生物群から国土と人民を守る…地衛隊。地球防衛隊だ」
おおう…なんてこったこっちの世界の方が対処組織しっかりしてんじゃないか。あの邪神を俺達の世界に送り込んだ文句でも言ってやろうかと思っていたがそんな気は失せてしまった。しゃあない。
「実はあんたらが撃退したあのタコ邪神、俺達の世界にやって来て暴れた」
一斉に騒めく艦長以下クルー達。蒼ざめた表情の艦長。
「す、すまない事をした。我々が倒し切れなかったばかりに君達の世界に迷惑をかけたようだ」
「いや、むしろお礼を言うよ。この船がアイツにかなりのダメージを与えてくれたおかげで倒す事が出来たんだと理解した」
「あ、アレを倒した…のか?」
「ああ、倒した」
ワッとクルーが歓喜に沸く。撃退とはいえ取り逃したのがずっと気になっていたようだ。頭を下げお礼を言う人もいる。何だよいい人達じゃないか。
艦長さんが俺に頭を下げる。
「ありがとう。感謝する」
「こちらこそ感謝する。あ、この船のエンジン一基壊しちゃってごめんね。あのドラゴンは仲間だったからさ。不幸な出会いだったって事でよろしく」
しれっと謝ってみたが艦長以下クルーの表情は固まっている。いやごめんねマジで。
「用事は済んだので自分の世界に帰ります。恐らく二度と会う事はないでしょう」
帰ったらジャングルの【転移門】潰すからね。
「さようなら艦長」
「さようなら」
会心の笑顔で最後に艦長と握手をする。そして艦橋の横から飛んで空中戦艦を後にした。
…ように見せてカナコと桟橋で合流。カナコがもう一度電気街で買い漁りたいと言うのでまたアキ◯へ電車でゴー。
カナコの収集欲を充分満足させた後、元の世界に戻ったのであった。
帰りは魔王都庁の転移の間なんで速攻でサークライにバレたけど。
「【転移門】の私的流用は厳禁ですよ‼︎」
その後サークライの監視の下にジャングルの【転移門】を潰した。あばよ空中戦艦。達者でな艦長。
さて週末。学院寮から帰って来たアリエルがギルド学院での出来事を嬉しそうに話してる。半分はリィカのとんでもタンク役が常識外れで恥ずかしかったという訴えだったが。人それぞれ個性で戦うもんだ。アレはアレで生み出すの大変だったんだぞ、とアリエルに諭すが解って貰えたかどうか不明だ。
そんな屋敷でカナコ無双である。異世界の反陽子エンジンの仕組みを解明したカナコは手持ちのドローン、バギー、メー◯ェボードに続々取り付けていった。元々ドローンに搭載される程小型化されていたエンジンだ。物質の重量などほぼ無視出来るくらいあらゆる物体を浮遊させる事が出来るらしい。
屋敷の庭にはカナコ自慢の可変特殊車両…ヴァ◯アブル・マシンが置かれている。カナコがニマニマしながら乗り込んだ。
「ヴァ◯アブル・チェーンジ‼︎」
がっちょんがっちょん音を立てて人型ロボットに変形していく。ズズンと足が地面にめり込む。あの機械は相当な重さだ。だが直ぐに足が地面から離れる。
そいつが反陽子エンジンのおかげで地面から数cm浮いているのだ。
左右にヒュンヒュン動く。右手のマニュピレーターでパンチを放つ。高速ジャブだ。続いて華麗なフットワーク。凄いな、まるでマグネッ◯コーティングを受けたガン◯ムみたいな動きだ。
そのまま人型ロボットは空中を飛び回る。
ここまで一切魔法も魔力も使われていない。おっそろしい技術を手に入れたなカナコの奴…
「兄ちゃーん‼︎ありがとうー‼︎」
会心の笑みで魔王都の空を飛び回るカナコ。
…まあいいか。
俺は妹が笑って暮らせれば幸せなのだ、うん。




