72 続・カナコの大冒険
「兄ちゃん、国会図書館‼︎国会図書館行こ‼︎」
突然訳の分からん事言い始めたカナコを電気店の外へと連れ出す。
「科学技術の基礎知識なら国会図書館で閲覧出来るはず。見たい‼︎」
そう言う事か。でも今日はもう日が暮れる。何処か休む所を探さないとな。俺やカナコはリィカみたいな【コテージ】は持ってないからな。
「どっかの漫喫でいいよ。この世界の検索使ってみたいし。あ、まずマ◯ク行こ‼︎wifi使いたいし」
カナコは俺をマ◯クに連れ込み【ボックス】からタブレットPCを出して検索を始める。俺はセット二つを注文しに行く。するとチャラい兄さん達が近寄ってくる。おお、ナンパだ。この世界では初めてかもね。今の俺のスタイルは男のユートの私服だ。腰がパツパツのジーパンに胸パツパツのネルシャツ。うーんパツパツが悪かったか?無視してカナコの所へ行くと兄さん達が一言言い放った。
「なんだよ子連れかよ」
がーん‼︎俺とカナコ、ダブルでショックだ。
「老けて見られた…」
「…幼児に見られた…」
言葉少なにバーガーをもさもさ食う兄妹。都会の夜が切ない。久しぶりなのに。
その夜はア◯ホテルに泊まった。
翌日。富◯そばで朝飯を食い永田町に向かう。
「昨日のグー◯ル検索で判ったけどやっぱり反陽子エンジンてのは軍需産業由来みたいね。最近簡易版が民生技術に降りて来たらしいよ。資料も調べてみるけど何処まで明らかになってるかわかんない」
そこんとこはカナコの気が済むまで調査するといい。今日は一日国会図書館だな。邪魔をしないように俺はロビーでテレビを見てる。この世界のニュースが流れる。テレビの中の映像は空中戦艦が変形した巨大ロボとクトゥル◯な邪神との肉弾戦だ。おお、やっぱりと言うか無茶すんなぁここの人類。
巨大ロボは両手にイージス艦を接続して邪神をぶん殴っている。イージス艦の艦首に磁場のフィールドを形成して邪神のボディに食い込ませ、殴る毎にミサイルをゼロ距離発射しているな。
見事な連携攻撃だ。この世界の軍人の練度、侮れないな。
だがタコ邪神も物凄い邪気を纏い巨大ロボをガシガシしばいている。左手側のイージス艦が邪神の身体に食い込む。が、バキバキと邪神の身体に捉われへし折れる。画面はへし折れた船体のアップに。『空中戦艦ミカサ一番艦』の文字が。
間違いない。あの邪神が俺達の世界に来た奴だ。
その直後、巨大ロボから特大のビーム兵器が邪神の腹を焼く。腹にどでかい穴を開けられた邪神は撤退を始める。そのあとを何十機もの可変戦闘機が追撃を繰り返す。そしてゴブゴブと海中へと消えて行ったー。
空中戦艦が邪神の撃退に成功した。
なるほどそれを祝って長々と映像を流していたのだな。あれから一週間以上経つだろうに。
気付くと隣にカナコが座っていた。もう用事は済んだのか?
「理屈は理解したわ。後は実物を見たい。そうね、あの空中戦艦とかこの目で見たいわ」
テレビの中の戦艦を指さすカナコ。うん、俺もあの戦艦の艦長に聞いてみたい。【転移門】や【悪魔】の存在を知っているのか?…危険だろうか?
俺達はあの戦艦が曳航・修理を受けている横須賀ドックへ行く事にした。カナコの飛行物体は向こうの日本の近代兵器だからこちらで使う時レーダーに捕捉されるだろう。なのでこちらも電車で向かう事にした。
ガトトンゴトトン。公共交通機関チョー便利。
横須賀に着いて夜まで待つ。夜の方が侵入し易いからだ。侵入自体は難しくない。
「じゃあ兄ちゃん、お願い」
「おうよ」
隠遁魔法だ。この世界魔力を知覚していないので魔法耐性は低い。引っかかるセンサーもないようだ。
隠遁魔法を使って俺とカナコは修理・係留中の空中戦艦に乗り込む。目指すは動力区。大破(俺が壊したやつね)した反陽子エンジンを夜通し修理しているようだ。何十人もの技術者が図面と睨めっこしながらブラックボックスを開けて作業している。
それを後ろからガン見。ひたすらガン見するカナコ。作業内容を一瞬も漏らさず、図面もスマホのカメラでパシャパシャと。謎の工具も手に取ってスキャン。やりたい放題であるこのドワ子。
その日は夜遅くまで反陽子エンジンを堪能させて頂きました。
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====空中戦艦艦橋乗員Aの視点====
昨夜無事反陽子エンジンの修理も終わり、艦長以下乗員の点呼も終わった。あと少しで自◯隊航空基地へ帰投出来る。ドラゴンとの遭遇、『謎の妖精』との邂逅に続き未曾有の大怪獣との戦闘という体験を乗り越えた我々にようやく安堵の時間がやって来るのだ。
艦橋に朝日が差し込む。その朝日を背に人がー空中にいた。あれはー我々が『謎の妖精』と呼称する未確認飛行物体だ。
艦橋に緊張が走る。機銃やレーザー砲が狙いをつける。
銀色のストレートロングヘア、美しい顔立ちに人類より尖った耳、グラマラスなボディをまるでファンタジー漫画に出て来る女戦士が着るようなエロコス…もとい衣装。…まるで物語に出て来る『エルフ』のようなルックスの美少女だ。美少女は美しい唇を開け話を始めた。
「あのさぁ、そっちにあのタコ邪神とかに詳しい人いる?ちょっと聴きたいんだけどさ。あ、艦長さんでもいいよ?」
ぶっきらぼうに話す美少女。あの少女に大事なエンジンを一基破壊されたのだ。我慢できなかった甲板にいる兵士が勝手に機銃を撃った。
やはり少女には当たらない。バリアーでもあるのか?どういう仕掛けだ?少女は指先から炎を飛ばして兵士を火ダルマにする。
「ぎゃあああ」
叫びながら海に飛び込む兵士。
「やめさせろ‼︎私が話に応じる‼︎」
艦長の命令が飛ぶ。艦橋横の扉を開け『エルフ』を艦内に招く。
未知の生命体との会談が始まった。




