71 カナコの大冒険
数日するとカナコも聖王国から魔王国に戻って来た。マーサさんとアベリアはもう少し聖王国が落ち着くまで残る事になっている。
カナコとは毎日連絡を取っているのでモンマ邸に戻るや否や
「兄ちゃん!ドローン‼︎ドローン見せて‼︎」
最近は妹達は大抵俺を『兄ちゃん』か『姉ちゃん』と呼ぶ様になった。前は『兄様』『お兄様』『兄上』『兄さん』とかだったのだがだいぶ馴染んだと言う事だろうか。嬉しい変化だ。
ドローンというのは異世界日本で拾って来た謎動力で飛ぶドローンの事だろう。まあこういう反応になるわな。【ボックス】から取り出してカナコに渡す。
「ほいよ」
「ありがとう‼︎」
会心の笑みで答えるカナコ。うん、可愛い。カナコはスイーツ類よりこういうお土産の方を喜ぶ。
早速自分の【ボックス】から工具を取り出してリビングで分解作業を始めてしまう。いつもは自室の工房に籠るパターンだがどうやら俺にも見せてくれてるようだね。
順調に分解が進んでいたが急に手が止まる。小さい箱を持って下から眺めたり横から眺めたりしている。
「どうした?」
「ネジ穴がない…このパーツだけ完全にブラックボックス。解体出来ない。これ用の特殊な工具とかありそう。やってくれるね異世界…」
どういう事がよくわからないがカナコが悔しがってる様子はわかる。
「反重力エンジン?未知の動力?あああ開けばわかるのに‼︎道具が欲しい‼︎兄ちゃんこれを拾った世界も一回行けないの⁉︎」
無理を言う。狙って開いた【転移門】じゃないし邪神が現れた【転移門】もぶっ潰したしなぁ…
ふと思い出す。そういやリィカ達が嵌められた元々の原因、南のジャングルの奥の【転移門】。…潰したっけ?少なくとも俺は使ったけど壊してはいない。
て事はあそこの門はまだ生きてる⁉︎
うーんどうしようカナコに言うとまた面倒な事になりそうなんだが…
カナコがじーっと俺を見つめる。何かに気が付いたようだ。まったく視線を逸らさない。じーっ。
「兄ちゃん?行けるの?行けるんだね⁉︎連れてって‼︎お願いー‼︎ねー連れてって‼︎ねー‼︎」
おねだりである。年齢はともかく見た目は姉妹一ちんまいドワーフっ娘のおねだりである。誰が耐えられようか。とうとう了解してしまう俺だった。
「【転移門】が塞がってなかったら、だぞ?」
「ありがとうー‼︎兄ちゃん‼︎」
早速自分の【ボックス】から荷物を取り出して準備を始めるカナコ。ぶつぶつ言いながら確認を始める。
「日本の紙幣・貨幣は使える、言葉は伝わるって言ったわよね? しかも空中戦艦に可変戦闘機…くふふふマクロ◯、バルキ◯ー…夢が広がりんぐ♡」
あ、そういえば
「カナコ、お前空飛べたっけ?【転移門】は確か空中に飛ばされるはずなんだ」
カナコは【ボックス】からずらっと取り出して見せる。ロケットバックパックのような装置や一人乗りホバードローン、ホ◯ダジェットまで引っ張り出した。マジかこいつ。
「でも異世界で燃料使う動力は避けた方がいいかなー?燃料はあまりストックがないの。風動力なら兄ちゃん任せで何とかなるでしょ?」
と言ってメー◯ェのような羽根だけのボードみたいな乗り物を選んだ。
取り敢えず今回はカナコ個人のおねだりなのでミカさんだけに報告をして他の家族には黙って行く事にした。…リィカ達に言うと付いて来ると言いかねないもんね。なんでミカさんだけか、と言うとグリュエラさんの収入を日本円に換金する手伝いをしていたのはミカさんだったからである。…こちらの世界で稼いだG貨幣を溶かしてインゴットにしてミカさんがマネーロンダリング(おっとっと…)して日本の通貨に換えていた。つまり俺とカナコの持つ日本円もミカさんのおかげで絶えていないのだ。ありがとうございますミカさん。
ちょっと出かけて来ます、とだけモンマ邸のメイド長に告げ二人で出かける。魔王都を出た所でカナコバギーに乗り込んで南のジャングルを目指す。入口の村に着いたらカナコはジェットパックを背負い俺は飛んで急いで陽のあるうちにジャングル最奥の崩落現場に向かう。
崩落現場は捜索が済んでそのままだった。魔力はまだ厳禁。懐中電灯で進み地下空洞からトンネルを潜り祭壇のある間に出る。
そのまま【転移門】はまだ健在だった。
「準備はいいかカナコ。光に包まれた後は即空中だからな。」
カナコはメー◯ェボードを片手にOKサインで答える。俺は【転移門】に魔力を通す。
光に包まれ次の瞬間浮遊感からの落下感。風魔法を纏い飛ぶ。カナコは?
メー◯ェボードに乗りながら奇声を上げている。
「きゃっほー‼︎にーちゃーん‼︎」
我が妹ながら怖いもの知らずだな。
「さて、まずは何処へ行く?」
俺としては空中戦艦が無事なのかどうかは確認しておきたいのだが。あの邪神にどう立ち向かったのか。
「まずは電気街‼︎アキハ◯ラへゴー‼︎」
ブレない妹だ。飛びながら方向修正。しかし上空の風景でアキハ◯ラ目指すのは至難の技だ。
適当な所に降りて電車で移動する事にする。
ガトトンゴトトン。
山の◯線に乗るエルフとドワーフ。シュールな光景だ。
アキハ◯ラで降りて驚いたのは駅前。俺らの日本にあったアレがなかった。ヨド◯シカメラマルチメディア館が。あの馬鹿でかい電気店がなかった。そこには何面かのバスケットコートが存在していた。
「…サ◯ー電気がデカい。潰れてないのねこの世界。ラオ◯クスも◯国資本じゃないのか。微妙に違うのね」
アキ◯に詳しいカナコはいちいち違いを見つけて感心してるが俺はそこまで覚えてないわ。
取り敢えずそこらの電気店に入って見ようや。
電気店に入ってドローン売り場に行きました。あったあった。俺らの世界はプロペラで飛ぶドローンだけどこの世界のドローンは…商品紹介のカタログを手にしてキャッチコピーを読む。『反陽子エンジン搭載汎用運搬機‼︎』
「反陽子エンジン…‼︎」
カナコの瞳の輝きが一層増した。




