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70 いやいやいやいや

 「君、いっそ魔王の仕事の肩代わりをしない?って言ってるんだけど?」


 ちょ、ちょ待てよ。なんでそんな話が出ますか?

サークライは呆れた顔で俺を見る。


「君は本当に自覚がないね。自分を客観的に見た事ないのかな。そもそもまだ男の身体の意識なんだろ!」


 ん?何か説教が始まった?


「この世界の君は美しくしかも稀に見る恵体のお嬢様なんだよ。誰もが振り向き目を釘付けにされる。その上冒険者社会である我が魔王国に置いて数々の冒険者としての貢献、英雄的行為、隣国との紛争解決。国民が心惹かれない訳がないだろう」

「…え?」

「そして家庭崩壊寸前だった魔王家を一堂に集め家族の再生を果たした愛溢れる優しい王女。妹を聖王国から取り戻した勇気ある姉。ユート=モンマの人気、名声はもはや留まる事を知らない。街で売ってる新聞や雑誌では君が毎日のように特集されている。大人気なんだよ?『魔王様の美しきお嬢様』はね!」


 …知らなかった。誰それ?美しきお嬢様?王女?姫? ナンダソレ⁉︎

 魔王国は若く自由な国家だからそんな堅苦しい貴族社会みたいなこたぁないよね⁉︎ よね⁉︎


「若く自由な国家だからこそ偶像は必要なんですよ、判るでしょう?」


 あ、ピーンと来た。コイツやらかしたな。なんでいちいち新聞や雑誌に俺の情報が流れてんだと思ったがワザと流してんだろ‼︎やめろよ。住みにくくなるだろ‼︎

 そんな事より俺の収入状況の確認しないと安心出来ないよ。そこんとこどうなの?


「そこは心配しなくていいよ。君の行動はその都度金銀に換算して君の冒険者ギルド口座に振り込んでいるから。例えばクラーケン退治の時はSクラスクエストに換算して3万Gゴールド、勇者対戦の時は20万G払ってるよ」


 23万G?…確か1ゴールドはまんま純金1グラムだから日本円換算で1グラム5000円くらい……ひゃくじゅうごおくえん⁉︎

 はあああああああああああああああ⁉︎


「これに悪魔退治と異世界からの冒険者救出、邪神退治に海中スタンピードの殱滅…一体君に支払う報奨金は幾らになるんだろうね…国家予算レベルになっちゃうよこんなの。本当に頭が痛いよ君の仕事っぷりには。だからね、いっその事『魔王様の公務』にしてしまえば国としては大助かりなんだよ。頼むよそこんとこ」


 結構マジな話だった。俺の収入が魔王国の予算を圧迫するレベルだった。いやいやいやいやそこまで求めてないよ⁉︎生活出来るレベルで充分だよ⁉︎


「君は気楽に好きな時に好きなクエストやって生きればいいとか思ってるかもしれないけどね、そろそろ実力と知名度と収入に見合った『責任』も果たして欲しいんだけど。魔王国政府としては。君のせいではないんだけどほら判るでしょ?この国魔王も第一王妃も好き勝手に動いていて国民からの親愛度が今少し足りてないのよ。どちらも滅多に国民の前に顔出さないんだもん。だからどうしても愛される王室メンバーが欲しいんだよね。頼むよ」

「いやです」


 にべもない。偶像アイドルを求めるならアリエルだって見た目は天使だしリィカだってアホ可愛いし。マリージュは文句無く一押しで可愛い。レンだって清楚な可愛さだしカナコだってちんまいぞ。

とにかく俺は嫌だ‼︎


「女性化したジルベルトとデュエットで歌手デビューしてみないかという議案も議会に登っているんだけど」

「絶対に‼︎‼︎許さない‼︎‼︎」

 

 なんでそんな話がでるんだ⁉︎息を荒げながら全力でお断りする。


「…まあ表の仕事はともかく裏の魔王の仕事は立派に継いでくれているようだから強くは追い込まないよ…」


 裏の仕事とは【転移門】の破壊と【悪魔】の対処だろう。それはもう決めた事だ。やるよ。


 サークライは気を取り直してひとつひとつの事件の検証に入る。まず聖王国の司祭長退治だ。

 俺はそこで学んだ【高位の悪魔】の倒し方を説明する。


「膨大な魔力を削り切る、か。言えば一言だが誰にでも出来るものじゃない。ましてや【転移門】が側にあれば事故防止の為魔力を使った攻撃は厳禁だ。中々難しい」


 そうだな。カナコの実弾兵器があったから何とかなったものの俺とマーサさんアベリアの剣技や魔法だけでは怪しかったな。

 続いて飛ばされた異世界での話をする。


「…マサオの元いた世界と同じ日本なのに微妙に違う世界、か。パラレルワールドとでも言うのか?」

「見た範囲がそっくりだっただけであの世界全部がそうだとは限らないから…」


 そうだ、カナコに謎動力で浮いていたドローン、捕獲しといたやつ渡さなきゃな。ミカさんかカナコなら解析出来るかも。


「問題はその世界にいたはずのタコ頭の邪神?がこちらの海に来たという事だね。その邪神?はその『日本によく似た世界』で生まれた生物なのかな?」

「判らないが可能性はある。あちらの物語に出て来るような怪物だったし。だけど昔から【転移門】を潜って来たアイツらを見て物語に書いたのかも知れない。その根源は不明だね」


 仮説は仮説だ。今の所真実は知りようが無い。

その後サークライは俺が一番聞かれたくない事を聞いて来た。


「で?ユート君どうやってそのバカでかい邪神?を倒せたの?グリュエラでなくなぜ君だったの?同じハイエルフなら経験的にグリュエラの方が強いはずだよね?」


 サークライはエンシャントエルフの存在を知ってるのかな?グリュエラ母ちゃんに聞いてみなきゃな。

俺は取り敢えずぼかして答える。


「日本で得た知識があったおかげ、と言っておきましょう」

「うーんグリュエラには無かった知識か。マサオの話で聞いた事があるよ。君の育った向こうの世界にはギムキョウイクというのがあるって。将来は魔王国にも導入したいものだが…」


 まあ納得はしてくれたようだ。用事は済んだので帰ろうとすると釘を刺された。


「頼むから余り派手な活躍しないでね。国家予算飛んじゃうから」


 もちろんすよ。俺はしばらく妹を愛でながらゆっくり休むんだ。


 帰りは歩いて帰ろうと都庁を後にすると街中でやたら男に声をかけられた。屈強な冒険者が多いがみんなよこしまな視線を向ける。なるほどちゃんと王女然としていないとこういう扱いか。女というのも不便なものですな。てか鬱陶しい。

 面倒臭くなって飛んで帰った。


 後日またもや家までやって来たジルベルトに言われるのであった。


「街中で飛んでるとパンツ丸見えですよ」


ギャー‼︎‼︎

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