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68 太陽の魔王

 母ちゃんのビームソードがザクザククトゥル◯を傷付ける。だが致命傷にはならない。依然莫大な魔力を抱えている。まったく減ってる様子もない。

 クトゥル◯が右手に持ってるトライデントを振りかざして来た。猛烈な数の氷の槍が水流と共に渦巻きながらこちらを襲う。

 真正面で攻撃を仕掛ける母ちゃんは不利だ。近距離でトライデントによる広範囲攻撃。ギリギリ避けるが渦に巻き込まれて体制が崩れる。

 母ちゃん危ない‼︎



 今。今この瞬間、力が欲しい。光と闇の精霊の力が。エンシャントエルフの力が。親父との親子ゲンカじゃなくて今だろ‼︎こういう時にこそ力を貸しやがれ世界樹‼︎


(ほう。我がままを言うコねえ。何度かチャンスは与えたつもりなんだけど)


 強制的に精霊を降ろして貰っただけなので明確に光と闇の精霊の意思を確かめられなかったのだ。


 すると今。この瞬間、二柱の精霊の存在を感じた。何度か俺を助けてくれた顔馴染みの光と闇の精霊だ。


(おいおい、あたしはは知らないわよ?)


 世界樹の預かり知らぬところからやって来たらしい。

 俺は懇願する。貴女達の力が欲しい。お願いだ俺に力を貸して。


 彼女達はしばらく俺を見つめる。

 そしてゆっくりと俺に手を差し伸べてそのまま同化していく。

 俺の中で七つの精霊の意識が混ざり合い溶ける。


 今、俺は真のエルフ…エンシャントエルフになった。


 母ちゃんが俺を見て驚く。母ちゃんと同化している七大精霊が歓喜の様子を隠さないらしい。

 多分だけど俺に憑依している精霊と母ちゃんに力を貸している精霊は別の個体だ。そもそも精霊も個体数などとんでもなく少ない。

 今この場にエンシャントエルフが二人存在する事が奇跡なのだ。


「母ちゃん‼︎ アレを…倒す‼︎‼︎」

「おうよ‼︎」


 俺と母ちゃんは左右に分かれ両側から光の精霊の力を放つ。ビームソードではなく今度はビームの光弾だ。

 今ならわかる。闇の魔力による不安感も吹き飛んだ。闇の精霊の耐性のおかげだ。


 そして光の力ならアレの魔力を削れる。…しかし膨大過ぎて削るのに心が折れそうだ。

 だが今の俺は知っている。エンシャントなら…太陽の力が作れる事を。光…日輪の精霊に相談…みんなに覚悟を伝える。それだけ自分も危険に晒される力だ。闇の精霊が全力で守ると息巻いている。他の五柱も全力を尽くすという。


 覚悟を決めて目の前に光の球を作る。ビームではない。中では水素原子をコアとしてひたすらヘリウムにする核融合を繰り返させて育てている。高圧なガスが渦巻いて中身が成長していく。


 そうだ、これは太陽だ。


 超小型の太陽を育てているのだ。膨大な熱も放射線も周辺に溢れないように七大精霊が抑えてくれている。

 母ちゃんは恐らく太陽の原理は知らないだろう。だからこれは俺にしか作れない。


 これ以上は抑え切れない、そう七柱の精霊が言って来る。俺は水中を泳ぎ腕と槍を振り回すクトゥル◯の頭の上に出る。


「溶けて無くなれ‼︎」


 俺はギリギリまで育てた太陽をクトゥル◯のタコの頭頂部に押し付ける。ジュワジュワ音を立てて太陽は身体の奥へと沈んで行く。そしてクトゥル◯の膨大な魔力も見る見るうちに太陽に喰われて行く。

 やがてクトゥル◯の中心で太陽が膨大な光を放つ。

 その光は闇を影を食い尽くしクトゥル◯の身体を全て喰らい…真っ白な光だけがその海の底に残った。


 光は海底を貫く事なくやがて光量が落ち熱量も落ち…オレンジ色になり…消えて行った。


 後には何も残っていなかった。あのどうにもならない膨大な魔力も消え去っていた。


「ユート…お前何をやった…? いや、やった事はわかる。太陽だな。どうやってあんな…」

「いやほんと義務教育だけでも向こうの学校通ってて良かったよ…ありがと母ちゃん」

「…そうか…日本の知識か」


 とにかく疲れた…早くマリージュの元に帰ろう。妹を愛でたい。




 小型太陽のせいで海水が沸騰するとか大量の放射線が残る、という事は無さそうだった。よかった。海底王国が滅んだら元も子もないからな…



「…という訳で当初の作戦とは違いましたがあの正体不明の怪物は無事消滅しました」

「………」


 宮殿では微妙な顔の女王とシトリージュさんを尻目に官吏や兵士が大喜びで祝いの準備を始めていた。

 なぜ微妙な顔かと言うと報告はグリュエラ母ちゃんに任せ俺はマリージュの部屋に直行。盛大に持ち寄ったスイーツを拡げここの所連続した冒険を語りながらマリージュを愛でていたからだ。

 とても疲れていたからね。マリージュを眺めながらうとうとして少し寝てしまった。びっくりしたわ海の中でも寝れるんだなハイエルフって…



 微睡まどろみの中。

 広い広い花畑にポツンと一人俺が座っている。でも一人ぼっちじゃない。

 ほらいた。もうすっかり顔馴染みになった火水風金土の五柱の精霊達。みんなお疲れ様。いつもありがとう、俺に力を貸してくれて。

 そんな彼女らに連れられて少し見知った精霊が現れる。たびたび俺を助けてくれていた二柱だ。

 白く輝くストレートのロングヘアの白い女神服を纏う目映い光を纏う美女と彼女と対照的に落ち着いた深い群青色のストレートのロングヘアの静かな佇まいの魅力的な美女。

 光と闇の精霊だ。

 ありがとう。貴女達がいてくれなければどうなっていたかわからない。

 俺に向けて静かに微笑んでくれる二柱。

 これからも俺を手伝って下さいますか?

 こくり、と肯く。

 五柱も跳び上がって歓迎したり二柱に抱きついて喜んでいる。

 そのまま花畑で歓迎会みたいな雰囲気になりみんなで笑いながら…

 意識はまた薄れて行った。




「…兄様、兄様?」

「うーん…なぁに?マリー?」


 ゆさゆさ揺らして俺を起こしてくれたマリージュに目を擦りながら答える。


「お疲れの所悪いんだけど。きっちり報告してくれるかしら?当事者の口から」


 目の前に女王とシトリージュさん、グリュエラ母ちゃんが立っていた。

 

 逃げられない?そうですか…

 マリージュに別れを告げて城の執務室にドナドナされて行くのでした。

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