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66 クトゥル◯っぽいのこちらにも来たー

 リィカが遠い目をしたまま黙り込んでしまった。もしかすると本当に3日貫徹で逃げ回ってたのかも知れない。そっとして置いてやろう。


 俺もこの1ヶ月戦い通しだったので少しは休みたかった。可愛い妹を愛でたい。リィカはあんなんだしレンも仕事で忙しいしカナコとアベリアはまだ聖グローザム王国だしアリエルは学院の女子寮だし。やっぱマリージュちゃんですよね。可愛い妹と言えば。

 久々に魚人の里に会いに行こうかな、などとのんびりお配り用のスイーツを作っては【ボックス】に押し込んでいた。


 トゥルルル。トゥルルル。トゥルルル。

 

 おや、スマホに連絡だ。誰だろう?

 …シトリージュさんからだ。ナイスタイミングじゃね?


「はいユートです。なんかいいタイミングすね。連絡しようと思ってたん…」

「ユートくん‼︎緊急事態なの‼︎こちらに来て‼︎お願い‼︎」


マジなトーンのシトリージュさん⁉︎何があった⁉︎


 取り敢えず港街クリイドに急行する。すると…なんだあの海の色⁉︎ 猛烈に嫌な色合いの雲が渦巻いている。一目で何かとんでもない事態が起きていると思わせる空気だ。クリイドの住民も皆不安を隠せないようだ。

 領事館に足を運ぶ。シトリージュさんは海に降りているようで陸にはいなかった。職員がそう告げる。その足で俺は浜の通路に向かう。以前のように風と水の精霊を纏い潜水準備を整えてだ。


 海底宮殿に辿り着いたがどうやら宮殿は大混乱で門番すら留守にしていた。仕方が無いのでそのまま女王の謁見室に赴く。

 いた。女王は兵士に指示を出している。シトリージュさんはテーブルに地図を拡げて大隊のコマらしいのを移動させて陣を引いてる。その地図の中心になんか怪獣のようなフィギュアが置いてある。…おいおい、まさか。


「ああ、ユートくん‼︎ よく来てくれたわ‼︎」

「おお、魔王の娘よ‼︎ 皆の者‼︎クラーケン退治の英雄が戻って来たぞ‼︎」

「おおおおおお‼︎‼︎」


 湧き上がる宮殿内の空気。いや、ちゃんと説明して?


「この海のはるか西の奥の方でね、海に異常が起きたの。突然膨大な光が噴き上がって」

「⁉︎」

「そしたらそこから巨大な化け物が現れたの‼︎頭がタコで身体が人間の黒い巨人‼︎そいつが一直線にこの海の王国に向かっているって‼︎」


 な、ん、だ、と…⁉︎


「…えーっと…それはもしかして…これですかな…?」


 俺はついちょっと前までいた異世界でスマホに撮影して来た画像をシトリージュさんに見せてみる。ワイドビジョンに映ってたアレである。

 『空中戦艦が変形したマクロ◯ぽい巨大ロボVSクトゥル◯神みたいな奴が戦ってる』映像だ。


「これ‼︎まさにこれよ‼︎」


 なんてこった。アレと同じ個体か或いは【転移門】を潜った別の個体か判らないが…


 この世界にクトゥル◯来ちゃった…。

 


 取り敢えず目視で確認したい。俺を現地まで連れて行ってくれ、と女王に頼むと女王はすぐに兵を用意しると言ってくれた。

 そうしてようやく女王の隣の玉座に座っていたマリージュに気付く。マリージュは健気にも兵の前で王女の責任を果たしていたのだ。うん可愛い。

 俺は緊張しているマリージュの前にこうべを垂れ優しく呟く。


「じゃ、兄ちゃんちょっと行ってくるわ。心配しなくても大丈夫だ。お前にお土産があるんだ。帰ったら渡そう」


 なんか変なフラグ立ててねーよな?俺?


「…お兄様…」

「では、出撃して参ります。姫‼︎」




 俺は数人の魚人兵に水中戦車に乗せられクトゥル◯の元に向かう。

 1km程手前に止まりこれ以上は危険で進めない、と言う。魔力感知を行うと想像以上の膨大な魔力が歩いて来る。

 遠目の魔法で対象を見つめる。タコの触手のような髭がウネウネ動いている。見ているだけで気持ち悪い。超不安になる。右手にはトライデントを掴んでいる。なんかダ◯ンていうクトゥル◯神話の邪神に似てる。…似てる普通の悪魔だよな…?ねえ、そうだと言って。


 俺はグリュエラ母さんに電話を入れる。カナコのスマホは耐水性抜群なので海中でも使用可能なのだ!凄いネ!


「あ、母ちゃん?親父今どこ?なんか海にすっげえヤバいの出て来たんだけど。全長100mくらいの邪神ぽいの。どうしたらいい?これ…」

「海⁉︎ 海かあ…マサオは対海用の攻撃手段持ってないんだよねぇ。空も飛べないし。うーん…」


 マジかぁ。そりゃ魔王、人間だもんな…

 あんなのどうやって倒せばいいんだ…。【転移門の悪魔】の倒し方は基本膨大な魔力を削り切るしかないんだが…

 あんなの倒せる気がしない。


「仕方ない、あたしが行くよ。シトリージュの城で待ってな」


 マジか母ちゃん。頼りにしてるぜ。反対に頼りになんねえなぁ親父。


 俺は海中戦車の兵士に戻る合図をして国境壁を護る軍に無理をしないよう指示を出して貰う。一応クラーケン退治の英雄なので言う事は聞いてもらえそうだ。


 海中宮殿に戻りグリュエラさんの到着するのを待つ。何処にいたのか聞いたらなんとエルフの里にいた。電話の向こうで爺様婆様(姿20代)が孫の声聴きたさに騒いでる様子が見れた。また里帰りしないとな。


 ほんの数十分でグリュエラさんが来た。女王に挨拶をしてシトリージュさんが作戦地図を構えるテーブルに向かう。同時に俺が録画したクトゥル◯の画像を見せる。

 グリュエラさんはため息混じりに天を仰ぎながら言った。


「こんなのSクラス冒険者が何人集まったって倒すの無理だろ‼︎」


 ですよねー‼︎

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