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65 リィカのだいぼうけん

 俺とリィカはモンマ邸に戻る。俺にとっては一月振りの帰宅だ。

 レンは報告の為に学院に帰ると言う。心配していたアリエルを安心させてやりたいらしい。リィカは少し躊躇いつつお土産に100均で買ったお菓子の山の中から『うまい◯』を二本取り出しレンに渡す。


「異世界のお土産。一本はレン。もう一本はアリエルにあげて」


 おお。自分の食べ物を人にあげるなんてリィカ史上初めての事だぞ。成長してるな。見かけは全く変わらんが。

 レンは笑って受け取る。これどうやって開けるの?とか聞いてる。プラスチック包装なんてないからなこの世界。ここのギザギザになってるとこをピッと…

 あ、その包装は土に分解しないから高温で焼却処理だな。え?残す?異世界の未知の素材だから研究対象にする?お前らしいな。



 そういやリィカ、リィカ達があの世界に飛ばされてから俺が迎えに行くまで3日くらいあったがその間どうしてたんだ?3日全部空中戦艦に追っかけられてた…って事はないよな?


「…すっごい鬱陶しかったよあいつら…」


 お、リィカが遠い目をしている…



===============


 白い光に包まれた妾達『深紅の淑女』は次の瞬間、空をー落下中だった。


「「「「ぎゃあああああああ‼︎‼︎」」」」

「死ぬ‼︎死ぬ‼︎死んじゃう‼︎」

「おかあさーん‼︎‼︎」


 みんながヤバい。妾はすかさずドラゴンになって四人を背中に拾い上げる。


「大丈夫かえ?みんな真ん中に寄ってトゲに捕まれ!」


 妾のドラゴン形態は首の後ろ辺りから背中にかけておしゃれなトゲが生えている。うん、おしゃれなやつな。

 それにしても飛びにくいのう。この空、魔素がほとんど感じられないしなんか粉々しい。なんか混ざってる。

 地面を見ると見た事のない白くて四角い建築物ばかり立ち並ぶ。いつもの魔王都の眺めじゃない。


「ここ…どこ?」


 ミミカが何かに気付いたようだ。何度かパーティーメンバーを背負って魔王都の空を飛んだ事があるから街並みの違いでなんとなく違和感を覚えたのじゃろう。

 地面に降りたいところだったが建物と建物の間に地面…土が見えない。街の地面中に石みたいなのが敷き詰められている。何なんじゃろかここは?

 辛うじて多くの樹々が生い茂って土が見える空間を見つけたのでそこに降りる。

 バサァバサバサァ‼︎


 降りた場所がどうも良くなかった。樹々の元には人が大量にいた。なんじゃ?とにかく子供が大量におる。妾を見て泣き喚き逃げ惑う。なんか大パニックじゃのう。


「市民の憩いの公園かなんかじゃない⁉︎」

「見て‼︎人間種しかいないわ‼︎ あたし達聖王国に来たのかしら⁉︎」

「ヤバいよリィカ‼︎人間体に戻って‼︎」


 妾は身体を人間体に戻す。ミミカはみんなを引き連れその場を離れる。少し樹々が丘のように盛り上がった場所に逃げ込む。


「…みんな落ち着いて状況を整理しよう。あたしらは洞窟の中の変な魔法陣の光に巻き込まれてここに来た。ここは知らない街。人間種の街みたいだけどどこまで遠くを見ても白くてでっかい建物ばかり。凄い国力だわこの国。少なくとも聖グローザムではないわね」


 冷静に分析していくミミカ。頭の切れる委員長がいてくれて良かった。


「問題は人間種以外の人が見当たらない事ね。…獣人はいないのかしら」

「全く見当たらないわね…」


 みんなが状況を整理してる時、妾にはピンチが訪れておった。

 ぐきゅるるるるるるる


「…お腹空いた…」


 リィカのひみつその1。ドラゴンになるとその後お腹が急激に減るのだ‼︎


 「うーん。あたしら只の日替わり調査のつもりで出て来たからねえ…」

「保存食も実習で使い果たして補充前だったよ⁉︎」

「ここの山とかで魔物を狩れば?」

「「「「それだ‼︎」」」」


 山のある方向へ行けばきっと獲物がいるはず‼︎

 妾は再びドラゴンになってその森を飛び立った。


「方向は⁉︎」

「飛んでりゃ山にぶち当たるでしよ‼︎」

「OK‼︎」


 方向が判らないので太陽の方向に向けて飛んでみる。すると山どころか海が見えて来た。うーんこれはやらかしたか?


「ほら!あっちを見て‼︎山よ‼︎」


 海の向こうに山が見えた。緑がいっぱいだ。獲物もいっぱいだといいな。



「いたー?魔物?」

「いーや、探索魔法に何も引っかからないよ。もしかして魔物いないんじゃないの?」


 探索魔法ってのは妾達レベルだと魔物の体内の魔石を探知するって代物なので魔石を持った生物がいないって事になるのう。

 ガサガサッと獣の存在を感じる。バッと魔鹿の一回り小さいやつが飛び出して来る。


「いた!仕留めてルナ‼︎」


 弓使いの猫獣人ルナが弓を連射する。見事に命中する。


「…手応えがない…」

「どう見ても魔鹿だよね…?」


 ミミカが早速解体を始める。魔道士のサンドラが水魔法で血を洗い流しながらミミカはサクサク腑分け肉分けをしていく。

 半分は保存食に回し半分は香辛料を塗して焼く。ひたすら焼く。お兄が居ればちゃんとした料理が出来るのに、といつもみんなで愚痴る。仕方ないけど。妾は出来上がるまで待つ。手を出すとみんな怒るのだ。


「出来たよー」

「「「「「頂きまーす‼︎」」」」」


 うん美味い。うまうま。


「…魔鹿と同じ味だよね?」

「うん」

「そういや解体しても魔石出なかったよね」

「えー何それ」


 妾達の世界の獣はみんな魔石を持ってる。だから魔物と呼ばれるのだけれど。



 一心不乱に食事している最中、山の麓からなんか人間達が大勢やって来た。妾達が起こした焚火を見て怒鳴ってる。


「わ、若い女子がそんなカッコでこんな夜更けに何で他人の山に無断で入って焚き火をしとるんじゃ‼︎山を荒らしおって‼︎警察も来とるぞ!大人しくしろ‼︎」


 長老のような爺さんがまくし立てると全員同じ紺色の服を着た門番みたいな連中が『銃』のようなものを手にしてこちらにやって来る。『銃』は見た事ある。カナコが使っておったからの。


「皆、気を付けろ!アレは『銃』という弾を撃ち出す武器じゃ‼︎」

「「「「武器⁉︎」」」」


 みんなの眼の色が変わる。魔道士は呪文を唱え始め弓士は弓を構え剣士は剣を抜いて構える。全員が若い女の子なのに即座に臨戦態勢に入ったその様子を門番みたいな連中が見ておののく。


「ぶ、武器を捨てなさい‼︎発砲するぞ‼︎」


 あいつら盾も持たずに弓や剣を相手にするのか?無知過ぎるじゃろ。このままだと異世界人を傷付けてしまうじゃろ。


「不味いわね。リィカ、飛んで逃げるわよ‼︎」

「そうじゃな、ミミカ‼︎」


妾はドラゴンになって翼を羽ばたかせる。異世界人は驚愕と恐怖の表情で吹き飛ばされる。

 全員を背中に乗せまた空に飛んで行く。取り敢えず海の方へ出よう、と明るい光溢れる方向に飛ぶ。


 すると地上から謎の飛行物体が飛び上がり妾を追いかけて来るではないか。なんじゃあれは。鉄の鳥?火を吹いて飛んでおる。

 わ、妾のスピードより速いぞ⁉︎

 てか今はみんなを背負ってるからスピードは出せん。わーどこまでもついて来る‼︎しつこい‼︎


 ヤバいかも知れん。お兄に連絡しなきゃ。ミミカ、スマホ‼︎妾の預けたスマホでお兄に連絡‼︎え⁉︎繋がんない⁉︎どおしてー⁉︎


 うええー助けてお兄ー‼︎


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