63 観光して帰ろう
「みんな怪我はないか?」
「ヘロヘロだけど…何とか生きてる」
「お腹空いた…」
「リィカに頼りっぱなしで…ほんとごめん」
「ねえ、ユートきゅん、ここ何⁉︎ あれは何だったの⁉︎それに四角い白い建物が一杯。何なの一体⁉︎」
「にいちゃあんっにいちゃあん」
取り敢えずみんなを休ませよう。山の辺りに『コテージ』を出せる程の空間を探す。そこに『コテージ』をリィカに出させる。
『コテージ』の中は俺達が使ってた時代とは違い、既に『深紅の淑女』仕様になっていて五つのベッドがひしめき合っている。湯を沸かし水を補給し俺の【ボックス】から食材を補給してやる。順々にシャワーを浴び作るそばからバクバク喰いまくり横になる面々。ようやく一息付けたようだ。
「兄ちゃんプリン作って!プリンー‼︎」
リィカもいつもの調子を取り戻したようだ。
委員長は未だに怪訝な顔をしている。この子は頭がいいのでちゃんと説明すれば解ってくれるだろう。
「今晩はゆっくり休めばいい。説明は明日ちゃんとしよう。俺が見張ってるから早く寝なさい」
「…必ずよ?ユートきゅん」
「兄ちゃん…来てくれてありがとう」
『コテージ』の周りに隠遁魔法を薄く張って一晩過ごす。どうやらこの世界には魔力探知という認識がないようだ。あれから数機ヘリコプターが飛んで来たが龍の行方は掴めず戻って行ったようだ。
翌朝。みんな疲れて起きるのは遅かった。ブランチを取りながらみんなに話す。
「…【転移門】が起動して異世界に飛ばされた…⁉︎」
「そうだ。魔王国の国家機密だからな他言無用だぞ。俺達の住んでる世界には異世界から来た奴らが繋げた【転移門】が山の様に眠っているんだ。ソイツは魔力を感知すると勝手に起動する」
「何よそれ‼︎災害級の存在じゃない‼︎」
「だから魔王が率先して処理しているんだ。【転移門】の所在を察知出来るのは魔王だけだからな」
自分達の住む世界が結構危険なんだと知らされて無口になる『深紅の淑女』。日夜魔物退治してるのに今更なんだとは思うが言わない。
「心配すんな。帰る方法は親父…魔王様から借り受けて来た」
ホッとする一堂。聖グローザムの悪魔を退治に行く前に親父から託されていたのだ。【簡易転移門射出銃】を。魔王都の転移門の座標が事前に記録されている優れ物だ。
「あのさ…無事に帰れるならさ、この世界探検して行かない?」
おっと委員長が調子に乗り始めたぞ。S F兵器に散々追い回されたくせに。
「危険だぞ。言葉も通じないだろうしここの通貨も分からない。そもそも住人に獣人が居ない世界だぞ。すぐに見つかる。昨日のような軍隊が出て来たらどうする?」
俺は自分のいた世界にとても似ているが違うこの世界に特に興味は湧かなかった。あの空中戦艦の謎動力くらいか。でもそれ以外で空を飛ぶ方法なんて幾らでもあるしな。
しかし自分達の世界以外知らない委員長達にとってはとても興味ある世界らしい。機械文明やコンクリートジャングルの照明の海を空から眺めた時の興奮は忘れられないという。うーん、気持ちは分かる。なんたって俺達は基本冒険者だからな。
委員長始めみんなは獣人だが帽子を被れば特に問題はないだろう。問題はリィカの尻尾だな。
「リィカ、尻尾隠せるか?」
やれば出来ると思うんだがな。ドレスティアさんは人化する時尻尾ないしな。リィカは普段意識しないから全然出来ないらしい。仕方ない隠遁魔法で誤魔化すか。ただ見えないだけでそこにあるから扱いには注意な。
俺達は山を降りてドラゴンリィカの背中に乗って都心に出る。軍のレーダーに引っかからないように隠遁魔法で慎重に飛んでる。
ビル群は俺の記憶にある現代日本の建物と全く同じだ。違う世界とはとても思えない。ただドローンらしき空飛ぶ物体が飛び交っている。それもプロペラ推進じゃない謎動力で箱が飛んでるのだ。凄く気になったので一機拉致って【ボックス】に収納した。犯罪ですねごめんなさい。持って帰ってカナコに渡してみよう。
新宿御苑にあたる広い公園にドラゴンリィカを降ろし街を歩いてみる。俺の知ってる日本人と同じ顔の人達が大勢生きてる。
はっと思い出して財布から小銭を出す。自販機に入れて飲み物を買ってみる。ガチャン、飲み物が出る。お釣りが出たので貨幣をよく見る。…俺のいた世界と同じ貨幣だ。もしかして紙幣も使える?
「に、兄ちゃんこれ何⁉︎」
「この世界の飲み物だよ。機械にお金を入れると出て来る仕掛けだ」
「な、なんでユートきゅんこの世界のお金持ってるの⁉︎」
相変わらず委員長は鋭い。たから少し本当の事を交えて言い訳をする。
「実は俺、魔王様に付き合って異世界に行った事があるんだ。ここと実にそっくりな異世界だったんだけど少し違う別の世界だ。そこで手に入れた貨幣を使って見た。偶然使えたみたいだな」
「に、兄ちゃんこれどうやって開けるの?」
リィカが缶ジュースの缶をぐるぐる回して調べるが判らないらしい。こうやるんだ、とプルトップを開けてやるとみんなが驚愕している。そりゃアルミのような素材の入れ物もプルトップの仕組みも初体験だろう。
「う、うまー‼︎シュワシュワして甘くてうまー‼︎」
あ、そうか向こうじゃ大抵果実水だが炭酸水は無かったな。炭酸初体験か。
「ユートきゅんあたしにも‼︎あたしにも‼︎」
「わ、私達もお願いします‼︎」
そうだな、これくらいいいだろ。と、今度は1000円紙幣を入れて見る。普通に吸い込んだ。使えるようだ。
「欲しい飲み物の下のボタンを押してごらん」
「し、シュワシュワの!シュワシュワのが飲んでみたいです‼︎」
「これとこれとこれがシュワシュワだね」
それぞれ『深紅の淑女』のみんなが好きなボタンを押す。ああ、振っちゃ駄目だ、弓の猫獣人っ子が振ってプルトップを開けてプシャーとジュースを噴き上げて驚いている。炭酸飲料の洗礼だね。
みんなが飲んで驚いている。
「ねえ、兄ちゃんこのシュワシュワしたの戻ったら作れる⁉︎」
風魔法で二酸化炭素を充填出来る…かな?カナコに頼んでソーダ製造機手に入れるんでもいいな。まあ何とかなるだろう。
そう言うとみんなが跳び上がって喜んでる。お前らもかよ。
俺の持つ紙幣も使えるみたいだ。それじゃアレだこの子らにお土産でも持たせてやろうか。
「この街だと100均あったかな…ドン◯の方が近いかな」
近場に100均ショップがあったので連れて行く。
「1人五品まで好きな物選んでいいぞ」
「「「「「わああああああ‼︎」」」」」
100均は女の子のパラダイスだからな。もう少し歳上だとドラッグストアをお勧めするのだが彼女らにはここがいいだろう。リボンや髪飾りも豊富、布製品も装飾品もある、刃物も陶器もプラスチック製品もある。
委員長…ミミカは手入れ用のブラシと清潔でパイルが立っている上質なタオルを手に取っている。魔道士のアルパカっ子は髪飾りとスカーフを。弓の猫っ子はキラキラ光アクセサリーとプラスチックの空容器を見てポーション瓶が全部これになったら持ち運び楽なのに、と言ってる。剣士の犬子は化粧品に夢中だ。うーん化粧品はドラッグストアの方が安全かな?健康に関わる物だからな安物はヤバそうだ。という注意を犬子にして見る。後でドラッグストアにも寄ろう。
で、リィカは五品全部お菓子のコーナーで選んでいた。全くブレない妹だ。




