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61 『深紅の淑女』のバイト

 レンからの依頼は今年度のギルド学院冒険者クラスの初の課外実習の教官を務めてくれないか、と言うものだった。

 大幅に人員もカリキュラムも改編したギルド学院、新学期の冒頭に実技キャンプを取り入れたらしい。採取・採掘、討伐を一通り一週間程ぶっ通しで野営をしながら行うらしい。頭から中々ハードなカリキュラムだ。


「授業の後半に出来るだけ自由にクエスト出来るスキルを積ませる為、だって。去年トップとそれ以外のランク差が開き過ぎたせいもあるみたいよ」


 自分達のせいだと思って微妙な顔になるレンだがリィカは素知らぬ顔だ。面の皮が厚い、と言うか気付いてないのだな。


 報酬が拠点の家賃三ヶ月分は固いと聞いた委員長…ミミカは喜んで飛び付いた。


「はい!はい!やります‼︎やらせて‼︎」


 


 一週間の準備期間の後、学院の新入生達とともに『深紅の淑女』は南の定番のサバンナ地帯にやって来た。


 どうにか学院にも馴染みクラスメイトの女子とパーティーが組めたらしいモンマ家五女・アリエルもその中にいる。

 アリエルはゴリゴリの殱滅天使、バトル脳筋娘なので上手くパーティーが組めるか兄的に心配だったのだが何とかやってるようだ。他の子はタンク、回復、魔術師と基本に沿ったパーティー構成だ。

 だからこそ余計にだろう、『深紅の淑女』の戦闘スタイルを見て口をあんぐりさせていた。


 『深紅の淑女』は前衛がリィカだ。龍族の身体を活かしてとにかく無敵の防御力を誇る。その特殊能力『結界』が強烈過ぎてとにかく何でも弾く。エルダーリカオンの集団もことごとく弾き返しその後ろから弓、魔法、剣でザクザク倒して行く。うん、凄いんだけど参考にならない。


「リィカ姉…凄いけど参考にならない」


 野営の仕方もそうだった。なんたってリィカには特殊装備『コテージ』がある。周りがテントや寝袋の中流石に空気読め、とミミカ達は諫めたが『社会は厳しい、持てる者も居れば持たざる者も居る事を自覚させるべきだ』とリィカがわかったような理屈で押し通して『コテージ』を取り出して平然と人前で使用した。もちろん学院の新入生達は呆然である。


 絶対自分がベッドで寝たかっただげだろリィカ。


「いいなぁこんちくしょう…」


 野営の寝袋に包まって隣りの『コテージ』を眺めながらアリエルは自分もアレを母上かお兄に強請ねだろうと強く思うのだった。


 討伐した獲物をその場で解体、残りを洗浄・処分、簡単な加工まで魔法を交えて作業で見せる。感心する新入生達。ミミカ達の面目躍如だ。リィカは何もしてないが。

 薬草類の採取はレンが一つ一つ見分け方と薬効、売値を上げながら丁寧に説明していく。収入の基本になる行為なので皆真剣に学ぶ。


「収入の確保は大事よ!」


 レンの金言である。新入生全員が肯く。


 採取を通じて自分の中の【ボックス】との折り合いの付け方も学ばせる。何が入って何が入れられないのか。個人によってその容量、限度が様々だからだ。狩った獲物の素材を全て持ち替えられないパーティーも多い。その取捨選択も学ぶ。容量がないパーティーは行って戻るクエストの回数を増やすしかない。その不公平も『社会の厳しさ』なのだ。


 概ね順調にキャンプ授業は進み、サバンナを分け入り一年前にスタンピードを起こしたジャングルの境目の集落までやって来た。予定ではこの辺りで折り返して戻る事になっている。


 実はあのスタンピードはジャングルの奥でアベリアが何かヤバい魔物を発見、退治した事で他の魔物がパニックを起こしてああなった、と言う事実が判明している。

 後になってグリュエラ母さんの調査でわかった事だが…そのヤバい魔物は【悪魔】であった可能性が高いという。知能もない下位の悪魔だったようだが。



 集落に着いてみんなが休憩している中、『深紅の淑女』のメンバーは昨年のスタンピードの検証を行なっていた。主に暴れていた4本腕の巨猿の移動ルートの検証だ。彼女らはレッドドラゴンの背に乗って移動しているので比較的安全だ。

 ジャングルの奥不自然に開けたエリアを見つけドラゴンはそこに降り立つ。

 するとドラゴンの重量のせいか地面が崩れ深い貴女の奥へと落ちてしまった。


ズゴゴゴゴゴゴ…


「みんな、大丈夫⁉︎」


 ミミカの声か響く。全員が返事をする。どうやら無事のようだ。

 魔法使いが光魔法で灯りを点す。でかい地下洞らしい。前方になにやら祭壇らしき段がある。宝箱でも置いてあるのか?と思わず近づいて見るミミカ達。国が経営している公営ダンジョンには国が設置した宝箱が置いてあるがここにそんなダンジョンがあるなんて聞いていない。もちろん宝箱などなかった。


 何もなかった…が。地面には訳の分からない文字や図形が描かれていた。



 その場に親父かグリュエラ母ちゃん、もしくは俺がいたら一発で気が付いただろう。だがその場にいた面子では気付かなかった。リィカも知らなかったのだ。【魔法陣】の脅威を。


 そして悪い事に灯りを点す魔法を使っていた。絶対にやってはいけない事ー【魔法陣】の近くで魔力を使用するーをやってしまっていた。

 【魔法陣】が光を帯び輝き起動する!


「な、何⁉︎この光⁉︎」

「きゃああ⁉︎」

「みんな固まって‼︎」


 ミミカがみんなと手を繋ぐ。眩しい光が『深紅の淑女』を包む。



 光が収まると…彼女達の姿はそこにはなかった。





 ジャングルを探索に行った『深紅の淑女』が消えた。その報告を受けたのは俺がマーサさんとアベリアを聖王国に置いて一足先に帰国を決め魔王都に連絡を入れた時だった。

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