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59 対悪魔用作戦

 高位悪魔との戦い方、それは膨大な魔力を削り切る。数度のやり取りでそう確信した俺は無線でカナコに連絡する。


「カナコ‼︎構わない予定通りぶっ放せ‼︎」


 教会の外には山車にカムフラージュしていた軍用装甲車が待機していた。中のカナコがロケットランチャーの照準を合わせる。


「ふふ的がでかいんだよ‼︎バリアブルランチャー全弾発射‼︎」


 何となく攻撃技の名前を叫んでしまうのは日本育ちらしいカナコ。装甲車から発射されたロケット弾が四発悪魔に向けて発射される。

 このままでは部屋の中の俺達も吹き飛ぶので俺はタイミングを測り精霊召喚で身に降ろしている風の精霊の力を使いロケット弾を制御する。四発同時に悪魔にぶつかるように。着弾‼︎


「お、おお、おおおおおお‼︎」


 猛烈な爆風が部屋中に…広がらない。悪魔の周辺50cm辺りに俺の風のバリアーが張り巡らされミサイルの爆風を閉じ込めている。爆風が収まる。中には焼け焦げ腕や羽根が千切れかけたボロボロの悪魔が立っている。

 ジュクジュクと緩やかに再生していく悪魔の身体。

 そのスピードは明らかに前より落ちている。


「なんだと…この兵器は何だ…?この世界にこのような威力の兵器が…」


悪魔は戸惑っているようだ。魔法全盛のこの世界、黒色火薬など発明されていないからな。未知の兵器でしかない。


「カナコ‼︎効いてるぞ、もっとだ‼︎」

「バリアブルランチャー第二弾発射‼︎」


 再びミサイルが飛んで来る。が、今度はそれを目視で見据えた悪魔の眼から光線…迎撃ビームが発射されミサイルをなぎ倒す。全弾が届く前に爆破する。

 その合間を見てマーサさんとアベリアが残りの渾身の魔力を込めて勇者ストラッシュを放つ。ストラッシュが悪魔の身体を直撃しザックリと傷を増やしていく。再生速度は緩い。だがまだあと一押しが足らない。

 俺は魔力を全振りで風バリアーを悪魔に張って閉じ込める。悪魔は眼からビームを放ってくるがバリアーに阻まれこちらに届かない。俺はバリアーに手を突っ込みブツを投げ入れる。

 カナコから預かっていたパイナップル爆弾だ。

 十発投げ入れてバリアー強化に専念する。弾けろ‼︎


 ズガガガガガガガ‼︎‼︎‼︎

 バリアー内で爆弾が弾ける‼︎




 爆煙が収まり静寂が訪れる。悪魔の巨体は消滅していた。

 風バリアーの中をよく見ると蠢くモノが。

 司祭長の頭部だけが残っていた。笑っている。この期に及んでまだ笑っている。


「…何がおかしい?」


 憎らしげに司祭長に問いかけるマーサさん。


「…いやあ。楽しかった。楽しい人生だったよ。ここに至るまで実に大勢の生命いのちを刈り取り、蹂躙し絶望に追い込み希望を摘み取った。他人の人生を捻じ曲げる。実に楽しい充実した日々だった」


 純粋な悪意。悪意の塊だ。こんなモノが飛び込んで来るのか【転移門】から。親父と母ちゃんが人生をかけて潰している理由が今、本当に理解出来た気がする。


 コイツらは何処で生まれてどういう理由でこの世界に来るのかは誰も知らない。

 だがこの悪意を見過ごせはしない。

 俺の可愛い妹を泣かせたこの悪意は。


「言いたい事はそれだけか」

「くく。魔王の娘よ。中々の魔力だった。実に楽しめたぞ。くくくく…」


 「もう消えろ」


 俺はオリハルコン剣を突き刺し火の精霊を纏い超高温で司祭長の頭部を焼く。太陽コロナバースト。


「あはははばばばばばば…ばばあぁぁ…」


 白い光の中に溶けて消滅する悪意。



 この世から司祭長は消滅した。

 その場に膝をついて崩れるマーサさん。マーサさんの背中にすがりつくアベリア。二人は悪魔を倒した喜びもなく涙を流すのみだ。二人の勇者を赤子の頃から育て利用して来たのが司祭長なのだ。彼女らに思う所があるだろう。


 俺は火災跡で煤でくすんだ司祭長の自室を調べる。執務机のあった床にボタンを見つける。押すと地下に繋がる階段を見つける。暗闇を炎魔法で照らしながら階段を降りる。気が付いたマーサさんとアベリアも後を追いて来る。感が働いたので二人に注意する。


「ここから先は絶対に魔力を使わないでください。微力でも魔力に反応してしまう装置があるはずですから」


 肯く二人。やがて扉に行き着く。扉を開けるとあった。以前親父に連れて行かれた遺跡によく似たモノ。祭壇のような段差の上に魔法陣の機動式。司祭長が来る時に使った物か罠の為に仕掛けた物か。とにかくこのままにはして置けないので【ボックス】から転移門破壊専用武器…ただの鋼鉄製のハンマーを取り出す。


「せえのっ」


 ガコンガコンッガキィッ


 機動式を力任せに打ち砕く。バラバラに、再生不可能な程に魔法陣をぶち壊す。

 これで本当に仕事終了だ。


「兄さん、王国軍の兵士が集まって来たからあたしは退散するね。早く兄さん達も脱出して!」


 残りの始末は翌日王宮でだ。残り火が炎上を続け教会関係者が逃げ惑う中に紛れて俺達もその場を離れた。




 炎上した教会を王国軍が検証作業する。火元は司祭長室、司祭長の笑い声が教会中に響き渡っていたのを関係者が何人も聞いていたとの証言があり出荷原因は司祭長の乱心、という事で収まりそうだ。


 一方翌朝の王宮。王、王弟、第一王子、第三王子らが集まる中で前日ドローンで録画した映像を上映して見せる。

 司祭長がアベリアを前にバリバリ変身して行く所から炎を吐く所、退治に至るまで余すところ無く上映された。

 王国が謎の悪意ある生命体に牛耳られていた事実を王家はどうにも認められないようだ。俺達も敢えて何が真実なのかなど言わない。


 真っ青な顔をした王弟と第一王子。そこまで酷くはないがこの国に巣喰っていた者が埒外の異物と知って放心している王と第三王子。彼らが沈黙の後出した結論は『異次元の生命体【悪魔】に身体と精神を乗っ取られた司祭長が乱心し勇者を害しようと企てた』であった。


 司祭長が消えると同時にその教会での内部事情が陽の目を見る事になる。多くの親のない子供を教会の下僕として育て数々の重労働に使役させ搾取していた。そしてある時期が来るたび一定数の人間が消える。定期的に司祭長がその生命を弄んでいたと結論付けられた。街にいる数少ない獣人奴隷も司祭長に化けた悪魔が定期的に狩っていたとわかった。司祭長は自分がいつ何処で何人犠牲にしたかを事細かく記録して地下の【転移門】のあった部屋の書庫に残していたからだ。完全に快楽殺人犯のそれであった。


 教会が意図的に人間と獣人・亜人の対立を煽っていた、そう結論付けられた。

 実際は教会だけの責任ではなかったのだが王弟達は渡りに船だと全て司祭長の責任に押し付けた。


 聖グローザム王国は負の側面を払拭する為さらに勇者の成果を持ち上げ全面的に魔王国との交流を前提に改めて協定を結ぶ事にしたのだ。

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