58 上位悪魔討伐
司祭長を罠にかける為アベリアにワザと隙を作ったらあっと言う間に引っかかった。
お茶会のお茶に異物混入があったのをレンから託された探索魔術で発見。敢えて解毒をせずに乗っかって見た。
深夜、動き出したアベリア達には隠遁魔法をかけたミニドローンを付けた。俺達の部屋に催眠魔法?そんなものレンの解呪の御守りの前では役に立たない。本当さすが最優秀生徒だぜ。
俺とマーサさんが隠遁魔法で後を着いていく。
操られたアベリアと共にギリギリのタイミングで司祭長室に潜り込む。
訳の分からない事を呟いて悦に入ってる司祭長が見る見るうちに変身していく。まんま悪魔の姿だ。スタンダード、典型的、絵に描いたような理想通りの悪魔。笑ってしまう。しかし魔力だけは相当高い。ここまで魔力が高い敵を前にするのは初めてだ。決して笑っていられない。
相手は何百年もこの聖王国を牛耳って来たズル賢い【悪魔】なのだ。
さあ【悪魔】退治だ。
部屋を取り囲んだミニドローンはその司祭長の変身を余す所なく撮影していた。
司祭長だった悪魔は身体が膨れ上がりボト◯ズのスコー◯ドッグぐらいの大きさに。黒く硬そうな体毛に覆われ両腕が異常に長く地面に垂れ下がり鋭く紫色の液体を垂らす爪が光っている。頭は山羊のアレに似ていて巨大な巻角が二本。口角はひび割れ顎の付け根まで広がり笑い続けている。黒く巨大な蝙蝠のような羽根が生える。
俺は【ボックス】からミカさんから預かっていたマーサさん専用オリハルコン剣を取り出しマーサさんに渡す。アベリアの持つ聖剣とほぼ同じ物だ。アベリアも自分の【ボックス】から聖剣を取り出す。
俺は五大精霊を自分に降ろし、愛用のショートソードを構える。
さあ準備完了だ。
いきなり悪魔は口から業火を放って来た‼︎
床も壁も燃え上がる。勇者二人の前には光の壁が立ちはだかり全て溶け落ちそうな高温の炎を完全にシャットアウトしていた。俺は風の壁を纏う。我々を避けて炎は部屋を飲み込んでいった。
マジかよ。聖教会が焼け落ちるぞ。
俺は悪魔の喉元目掛けて横薙ぎに剣を振る。硬い。なんて硬さだ。黒い体毛にオリハルコンの刃が通らない。上位悪魔はここまで硬いのか。
「ユートくん‼︎オリハルコンは魔力を通して使うのよ‼︎」
振りかぶったマーサさんは聖剣に魔力を通すと鮮やかな七色を帯びたラインが剣に浮かぶ。そのまま振り下ろすと悪魔の右手にざっくりと傷をつける。傷口から紫色の血液が流れる。
さすがオリハルコン剣の使い方に慣れてる前勇者。
俺も負けずに自分の剣に魔力を通す。七色を帯びたラインが俺の剣にも浮かび上がる。悪魔の喉笛を薙ぐ。ザックリと切れ紫色の血しぶきが上がる。
なんとか対抗出来そうだ、と思った瞬間、悪魔の傷が見る見る回復していく。ニヤリと笑う悪魔。
「ふふ。ちょっと期待持ってしまったかな? もしかして倒せるかと思った?ざーんねんこんなの自動回復しちゃいますー。魔力もほとんど食いませんよ。ちなみに私だって全身に魔力を通せばほら」
紫色のオーラに包まれる悪魔。マーサさんと俺で数発剣技を打ち込むが今度は悪魔の皮膚に弾かれた。
俺達が魔力で出来る事は魔力操作に長けた悪魔も出来るという事か。
「ほらハイエルフよ、勇者どもよ。もっと絶望の表情を私に見せておくれ。それこそが私の糧なのだ!」
笑いながら異常に長い両腕を力任せに振り回す悪魔。巨大な羽根が羽ばたくと室内に火災流が巻き起こり周りにある火塗れの家財が巻き添えになってことごとく砕かれていく。
くっゴリラかよ⁉︎暴れ回って近づけない。
『兄さん、準備完了‼︎』
「カナコ‼︎やってくれ‼︎」
炎荒れ狂う部屋の四隅にドローンが位置に付く。天井の四辺にも同様にドローンが。
ドローンに仕掛けられたレンのデバフ魔法陣が起動する。強力な正方形二つの八芒星が三角形八つの八芒星に変化し悪魔の動きを止める。本当にレン様さまだ。
「う、うぐ?」
動きの止まった悪魔にダブル勇者がオリハルコン剣を逆手に握り必殺技・勇者ストラッシュを放つ。ザクッザクッ‼︎ 悪魔の両腕を吹き飛ばす‼︎
そして俺が渾身の魔力を込め悪魔の頭を一撃で断ち割る‼︎
これは決まっただろう、とみんなが動きを止めて様子を見る。
悪魔の切り裂かれた傷から膨大な魔力が噴き出しあっという間に新しい腕が生え断ち割られた頭におぞましい肉塊が埋まる。
「くく。何かやったか?」
魔力が膨大と言う事はこういう事か。いくら傷つけても魔力が補填してしまうのだ。こりゃあ厄介だ。
悪魔の両腕が再び伸びてアベリアを集中的に攻撃する。必死に聖剣で左右に捌くアベリア。が、三人の中で一番身体が小さいアベリアは徐々に力負けして押されていく。再びマーサさんが必殺技勇者ストラッシュで悪魔の腕を粉砕する。しかしまたもや再生する。勇者の必殺技はそう何発も放てる技ではないらしくマーサさんの息が上がり始めた。
ん、少し再生スピードが落ちた様な気がする。俺は確認する様に同じ腕に向けて精霊加護で肉体強化したショートソードの連撃を放つ。吹き飛ぶ悪魔の腕。そしてしばらくしてまた再生が始まる。うん、明らかに前回より再生速度が落ちている。
そうだ。奴の魔力は膨大かもしれないが無尽蔵ではないのだ。
なるほど、上位悪魔との戦い方が解って来た。
魔力を削る。それが最重要らしい。




